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銃撃事件をきっかけに、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が報道されて5カ月がたとうとしている。政府が開設したダイヤルには、旧統一教会だけでなく、他の団体への霊感商法被害も寄せられているという。

弁護士ドットコムニュースのLINEには、20年来信じてきたある仏教系の宗教団体から、今まさに抜けだそうとしている50代の女性が声を寄せた。

数年前から「家族が不幸になる」などと言われては月25万円を寄付してきたが、支部長の命令に従って、家を買わされたり、実親と縁を切らされたり…ついには教義に疑問を持つ息子は離れていき、決して幸せとはいえなかった。

「3年くらい前からおかしいと思い始めました。でも、娘や息子が死ぬといった恐怖を植え付けられて、それが防げるならと寄付を続けていたんです」

脱会への背中を押したのは、やはり7月の銃撃事件後の旧統一教会報道だった。

「因縁が…などと言われることや、カードローンで借金をしてでも寄付を募る。統一教会と同じじゃないかと。死ぬ死ぬと言われてきたから怖いけど『命を投げ出す覚悟で、事実を訴えよう』と夫と腹をくくりました」

●変わってしまった娘、立ち上がった夫婦

女性は夫と娘、息子の4人家族で20年以上、信仰していた。この会では、子どもたちも関連の就職先に入れるなどして囲い込むという。息子は一度入ったものの「自分の力で働きたい」と生まれ育った地を離れて、別の仕事を始めた。

支部長は「親の責任だ。ヤクザの会社に勤めている」などと女性の不安をあおり、死にたくないなら寄付が必要だと思い込ませていた。

本部への告発を決意したのは、結婚して離れて住んでいた娘のことがきっかけだった。娘は支部長に言われるがままに車を売る。月数万円の寄付を強いられて1カ月3000円で暮らせといわれ貧しくなる。料理が好きだったのに、ごはんも作らなくなるほどに変わっていた。

一方で、支部長らが現金で集めている寄付を本部に上げずに私腹をこやしている疑念がわいていた。住民税非課税世帯にもかかわらず、外食ばかりしていて、ブランドバッグも持っているのが不思議だった。

娘は支部長たちに連れていかれる形で、一時行方不明に。本部に通報すると居場所が分かり、2カ月後に戻ってきた。「娘は友達とも縁を切らされ、恐怖で周りが見えなくなっていたようです。いまは目が覚めて安心していますが、離婚はやむを得ないかもしれません」

●本部の関与は不明…でも、これからはハッピーに生きたい

支部長らの振る舞いを伝えると、本部は「なんでこれまで黙っていたんだ」と処分する方向を示している。しかし、女性は半信半疑だ。過度な寄付を求めていたことに組織的な背景があるかもしれない。

いまは周囲の同じ状況にいる人たちが、少しでも目を覚ましてくれればとの思いで、本部との交渉、弁護士への相談に当たっている。同じように疑問を感じていた人たちの話も聞いていて、今までのことから解放され「嬉しさと悔しさで眠れなかった」という人もいた。

「以前は因縁があるなどといわれて、旅行にも行けませんでした。すべては恐怖によって支配されていました。まるで今は脱北したような気分でハッピーですが、かつては死のうと思ったことが何度もありました。

宗教にだまされたからバカと切り捨てないでほしい。恥ずかしいことじゃないと伝えたい。同じような被害に遭う人を少しでも減らすため、だました人を懲らしめるのではなくて、だまされた人の手助けに力を注ぎたい。

死ぬ死ぬと言われてきたけど、私は死んでいないし、元気でいるんです」