日本の小型探査機「エクレウス」初期運用フェーズ終了 月の裏側で撮影した画像も公開
【▲ SLS初号機で打ち上げられた小型探査機「EQUULEUS(エクレウス)」(Credit: JAXA)】
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月26日(日本時間・以下同様)、小型探査機「EQUULEUS(エクレウス※)」の初期運用フェーズが終了したと発表しました。
EQUULEUSは東京大学を中心にJAXAや日本大学などが協働して開発した探査機です。大きさは靴箱くらい(約10×20×30cm、CubeSat規格の6Uサイズ)、重量は10.5kgという小型・軽量の探査機ながらも、気化させた水を噴射することで推力を得る水レジストジェット「AQUARIUS(アクエリアス)」を推進システムとして搭載しており、地球-月系のラグランジュ点L2(EML2、地球からの距離約45万km)まで飛行する計画です。
2022年11月16日、EQUULEUSは新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」や9機の小型探査機とともに、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「アルテミス1」ミッションで新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機に相乗りして打ち上げられ、月へ向かう軌道に投入されました。
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JAXAによると、11月18日に行われた第1回軌道遷移(DV1)で地球-月系に留まる軌道へ入ったEQUULEUSは、11月25日に月フライバイを実施。一連の軌道制御と月フライバイの結果、EML2に向かう所定の軌道に投入されたことが確認されました。水を推進剤に利用する推進システムで軌道制御に成功したのは、地球低軌道よりも遠い領域ではEQUULEUSが世界初とされています。
【▲ 月フライバイ中に小型探査機EQUULEUSのカメラで撮影された月の裏側表面(Credit: EQUULEUS Project Team)】
また、月フライバイ中には月の裏側表面の撮影が行われており、EQUULEUSの運用チームからは高度5550kmで撮影された昼夜の境界線(明暗境界線)などの画像が公開されています。
今後のEQUULEUSは初期運用フェーズから定常運用フェーズに移行し、約1年半かけてEML2に向かう予定とのことです。
※…EQUULEUSは「EQUilibriUm Lunar-Earth point 6U Spacecraft」の略で、「こうま座(Equuleus)」にちなんでいる。
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Image Credit: JAXA, EQUULEUS Project TeamJAXA - JAXA超小型探査機EQUULEUSの初期運用期間終了についてEQUULEUSプロジェクトチーム(Twitter)
文/松村武宏