エリダヌス座で輝く衝突銀河のリング ハッブル宇宙望遠鏡&ダークエネルギーカメラで撮影
【▲ 相互作用銀河「Arp-Madore 417-391」とその周辺(Credit: ESA/Hubble & NASA, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, J. Dalcanton)】
こちらは「エリダヌス座」の方向約6億7000万光年先にある相互作用銀河「Arp-Madore 417-391」(AM 0417-391、画像右)とその周辺の様子です。若い星々の青い輝きに彩られたリング状の構造と、並んで輝く2つの明るい銀河中心核が印象的なArp-Madore 417-391は、まるで2つの宝石をあしらった指輪のようです。
相互作用銀河とは、すれ違ったり衝突したりすることで、互いに重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河を指す言葉です。相互作用銀河のなかには潮汐力によって形が大きくゆがんだり、渦巻腕(渦状腕)が長い尾のように伸びていたりするものもあります。
欧州宇宙機関(ESA)によると、Arp-Madore 417-391は衝突した2つの銀河で構成されていて、重力相互作用によってゆがんでねじれたリング状の姿をしています。ちなみに名前の「Arp-Madore」は、天文学者のHalton ArpとBarry Madoreがまとめた「A catalogue of southern peculiar galaxies and associations(南天の特異銀河および関連天体カタログ)」に記載されていることを示しています。
この画像は、「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って取得された画像(可視光線のフィルター1種類)と、チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」を使って取得された画像(可視光線と近赤外線のフィルター合計3種類)をもとに作成されています。DECamはその名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された画素数約520メガピクセルの観測装置で、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できます。DECamによるダークエネルギー研究のための観測は、2013年から2019年にかけて実施されました。
ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡のACSによるArp-Madore 417-391の観測は、地上の望遠鏡や「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡、それにハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る、興味深い天体のリストを作成する取り組みの一環として実施されました。冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2022年11月21日付で公開されています。
関連:長〜い潮汐尾で結ばれた2つの銀河 ハッブルが撮影した特異銀河「Arp 248」
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, J. DalcantonESA/Hubble - Hubble Hunts an Unusual Galaxy
文/松村武宏