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殺人の罪に問われた講談社元社員の事件で、最高裁は11月21日、懲役11年とした高裁判決を破棄し、高裁に差し戻した。朴鐘顕被告人は「妻は自殺だった」と一貫して無罪を主張しており、最高裁が自ら無罪判決を出す「自判」を望んでいたが、かなわなかった。

被告人の大学時代の友人らでつくる支援する会の佐野大輔さんと、山本衛弁護士が都内で会見した。

「今度こそ、きちんと事実認定からやり直していただいて公正な判決が出ることを期待している」(佐野さん)「原審は証拠で確定できないことを想像で補って一方的に決めつけた。『疑わしきは被告人の利益に』の大原則に従って審理してほしい」(山本弁護士)とそれぞれ見解を述べた。

朴被告人には4人の子どもがおり、祖母(朴被告人の母)が育てている。佐野さんは「長女は高校受験を控えていて、父親に頼りたいこともある。家族は彼が帰ってくることを切に願っています」と訴え、一刻も早く保釈してほしいと強調した。

山本弁護士も「証拠は保全されており、証拠隠滅や逃亡の恐れもない。今年の夏に保釈請求が蹴られたこと自体が不当だ」と述べ、必ず保釈請求するとした。

●差し戻し審に向けて詳細は語らず

検察側は、妻の血液の混じった唾液と失禁の跡から朴被告人が首をヘッドロックして殺害したと主張。一方、弁護側は一時的な失神でも同じ状態になるとし、朴被告人が子どもを避難させている間に、妻が自ら階段の手すりにジャケットを巻いて首を吊って自殺したと反論している。

高裁判決では、自宅内での出来事で目撃証言などの直接的な証拠がない中で、状況証拠をもとにした攻防が続いた。妻には額の傷があり、これが死亡前後についたかが争点となった。現場には洗面所などから28カ所の血痕が見つかったが、高裁判決では妻の両手に血液の付着がなかったことなどから、傷を負ったのは意識を失ってからだと推認。自殺とする弁護側の主張を退けていた。

これについて最高裁判決は、妻の顔前面の血痕の有無について審理が尽くされていないと指摘。「額の傷からの出血量や出血態様が明らかでない上、自殺前の行動には多様な想定が可能」だとし、(額の傷を負ったのは意識がある時だという)自殺が前提だとしても額の傷から出血した場合、顔にどのような痕跡を残すのかも証明されていないとした。

山本弁護士は、今回の差し戻し判決に対して「破棄という結果にほっとしている」としたものの、詳細については「一筋縄ではいかない」と述べ、詳細な評価は避けた。差し戻し審に向けて「これまでの証拠でも十分無罪判決に足りていると思っていたが、検察官の出方によって専門家を出すなり必ず対応する形を考えていく」と意気込んだ。

●朴被告人の母は「無罪を信じている」

この日、38席の傍聴席を求めて並んだ人数は124人で、関心の高さがうかがえた。最前列で判決を見守った朴被告人の母親について、佐野さんが心境を代弁した。

「無罪判決を願っていたが、可能性として懲役11年が確定してしまう場合もあった。終わったあとは、ほっとした顔だった。『無罪を引き続き信じています』と話していました」