旧統一教会の政府救済案「正常な判断失った信者の実態見えていない」弁護団がバッサリ
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題をめぐり、政府の救済案がまとまりつつある。閣議決定した消費者契約法と国民生活センター法改正案、新法の概要について、全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下、全国弁連)が11月21日、「不十分で実態に即しておらず、救済の役に立たない」として会見を開いた。
救済新法案では、寄付の勧誘への禁止事項を「個人を困惑させてはならない」と定めている。これに対し全国弁連は「良いと思い込まされている場合は、困惑しているとは言えない。『正常な判断ができない状態にあることに乗じた』も規制すべきだ」とし、いわゆるマインドコントロールに代表される状態での勧誘も対象とするよう強調した。
また、2018年の改正消費者契約法に盛り込まれた「健康不安商法」も抜け落ちていると指摘。紀藤正樹弁護士は、消費者庁の検討会でも訴えたにもかかわらず脱落したのは「官僚は分かっているはず。他に異論を持つ人がいるのではないか」と疑問を呈した。
山口広弁護士は「せっかく法をつくるのに、実態を踏まえないのは放置できない。ぜひ実現してほしい」と訴えた。
●家族による取り消し権の不完全さ
新法案では特例として盛り込まれた子や配偶者の被害を家族が取り消す権利についても、射程が狭すぎると批判した。信者本人の無資力が要件となることや、扶養義務等にかかる債権に限ることは特に2世信者の救済にならないという。
高齢の信者が、本来は公的年金や社会保険などに支払うべき金銭を献金に使ってしまうことの歯止めにならず、困窮した結果、2世が親の面倒を見ることになったり、生活保護受給世帯として国の税金を費消することにつながりかねないと指摘した。
紀藤弁護士は「政府は、こうしたライフサイクルになってしまうという被害実態をもっと聞くべきだったのではないか。今からでも遅くない。国会に特別委員会をつくって被害者の声を聞いて、よりいい法案をつくってほしい」と訴えた。