相場展望10月10日号 米労働需給が逼迫&賃金上昇でインフレ止まらず⇒まだまだ金利上昇⇒株価下落リスク高まる

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・企業業績悪化は、米国株は織込み始め・日本株は  損失補填で売られる可能性

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/6、NYダウ▲346ドル安、29,926ドル(日経新聞より抜粋)  ・週前半に大幅高となり、長期金利の上昇で株価が相対的な割高感が出たところに、10/7に9月米雇用統計の発表を控え、売り優勢につながった。  ・10/6の債券市場で長期金利が前日終値3.76%を上回り、一時3.8%台を付けた。欧州の主要中央銀行による積極的な値上げが続くとの観測から独国債が売られ、米国債の売りに波及した。  ・NYダウは小幅に上がる場面があったが、雇用統計の発表を前に積極的な売買を控える投資家が多く、買いは続かなかった。その後、持ち高調整の売りが膨らみ、急落した。  ・雇用統計を巡っては、市場予想より強い内容なら大幅利上げ観測が再燃し、株は売り圧力が強まるとの見方がある。  ・IBM・スリーエム・コカコーラが下落し、長期金利上昇を嫌いハイテクが売られた。原油高を受け、石油のシェブロンが上昇した。

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 2)10/7、NYダウ▲630ドル安、29,296ドル(日経新聞より抜粋)  ・9月米雇用統計が10/7発表され、労働需給がなお引締まっていることを示し、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引締めを続けるとの見方が強まった。米雇用統計では景気動向を映す非農業部門の雇用者数が前月比26.3万人増と、市場予想27.5万人増ほど増えなかった。一方、失業率は3.5%となり、市場予想や8月実績(いずれも3.7%)を下回った。平均時給の伸び率は前年同月比5.0%と市場予想5.1%を下回ったが、引続き高い水準。  ・市場では「依然として労働市場の過熱感は強い」との声が目立った。  ・米長期金利が一時3.9%台(前日終値3.82%)に上昇し、株式の割高感につながった。  ・FRBが9月に続いて11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で通常の3倍の+0.75%の利上げを決め、12月以降も大幅利上げを続けるとの見方が強まった。  ・半導体の米AMDの7〜9月決算が予想を下回り、韓国サムスン電子の営業利益が▲32%減となり予想も下回った。半導体の弱含みが鮮明となり、米企業業績の下振れ懸念につながったのも相場の重荷となった。  ・AMDが▲14%下落、インテル・マイクロソフト・アップル・ナイキ・エヌビディア・テスラも大幅安だった。

●2.米国株:9月雇用統計は「利上げ継続示唆」、株価は企業業績悪化を織込み始めた

 1)雇用統計は利上げ継続を示唆  ・雇用も逼迫感から抜け出せない状況が依然として続くと見る。  ・求人件数は若干下がったとはいえ、依然として約1,000万件と高水準にある。求職者数は概ね600万人と、雇用者にとっては厳しい環境が継続し、9/7発表の雇用統計は、FRBの政策金利引上げが続くことを示唆している。

 2)10/7の米国株式市場  ・NYダウ▲2.11%安だったが、ハイテク企業の多いナスダック総合は▲3.8%大幅安。特に半導体関連銘柄が大幅下落となった。米株価10/7の主要株価下落は、AMD▲13.9%、エヌビディア▲8.0%、テスラ▲6.3%、インテル▲5.4%、 マイクロソフト▲5.1%、アップル▲3.7%

 3)米国株を牽引した半導体関連株価は最高値から約半値押し  ・半導体関連は、半年前当たりからメモリー系のNANDなど消費者に近い半導体の価格低下が世界的に目立っている。世界の半導体市場は上昇から負のサイクルに転じたと判断した方が良さそうだ。  ・半導体消費は世界景気の「カナリア」と見られ、世界経済の低下⇒企業業績悪化のサイクル途上にあり、半導体関連銘柄の株価下落はそれを映していると思われる。

 4)米FRBの政策金利引上げは続くと予想  ・米国のインフレは伸び率が鈍化しても、高水準のインフレが長期にわたり続くため、米FRBは政策金利を現在3.25%⇒5.0%超に引上げざるを得ないとの見込みからすると、まだまだ上昇途上にあると予想する。

 5)米雇用状況は逼迫感が続く  ・雇用も逼迫感から抜け出せない状況が依然として続くと見ている。求人件数は若干下がったとはいえ、依然として1,000万件と高水準にある。求職者数は600万人と、雇用者にとっては厳しい環境にあり、賃金上昇は高水準で推移すると思われる。

 6)実質賃金は、高い賃上げ率であっても、インフレ率を下回り、年収は目減りしている  ・賃金上昇率は+5%以上の高い伸び率が続き、サービス価格の上昇の要因となって、インフレ率を押し上げている。しかし、インフレ要因の1つとされる賃金上昇率5%は、物価上昇率8%より低く、実質賃金はマイナスが続いている。

 7)企業業績は悪化へ  ・つまり、労働者にとって、購買力が減少している。  ・このような状況で、インフレ退治は総需要を押し下げるしか手立てはない。  ・痛みを伴う総需要抑制には、さらなる金利上昇は避けられない。  ・そうすると(1)金利上昇(2)エネルギー価格上昇(3)労務費上昇(4)売上減収で、企業業績悪化は「待ったなし」となる。  ・フェデックス:燃料費高騰と取扱い荷物減少で、業績下方修正。  ・ナイキ   :在庫増と売上総利益率低下で、業績下方修正。中国も不振  ・カーニバル :需要回復も燃料費・食材費上昇で、業績悪化。  ・米経済・世界経済を牽引してきた半導体関連は、世界経済の後退と米政府の中国向け輸出規制強化もあって、需給が崩れて価格低下を招き、さらなる業績悪化となる。  ・半導体関連のSP500業種別株価は、史上最高値から半値以下。

 8)NYダウの最近(9/20〜10/7)の推移:乱高下しながら下落基調  ・9/20〜27 6営業日 ▲1,885ドル安    9/28   1営業日 + 548ドル高   9/29〜30 2営業日 ▲ 958ドル安   10/3〜4  2営業日 +1,591ドル高   10/5〜7  2営業日 ▲1,020ドル安  ・9/20〜10/7通算で、NYダウは▲1,723ドル下落・▲5.6%下落。乱高下が激しい。要因は、金利引上げ継続の影響から企業業績の悪化不安と思われる。  9)米国株価は下落途上にある  ・米国株は、今までの需給相場で上昇⇒金利引上げからの先行き不安⇒10/中旬から始まる7〜9月期の企業業績と年間利益見通しの下方修正を織込む展開を予想する。  ・フェデックス、ナイキ、エヌビディア、フォード、AMDなどの決算発表が先導。  ・米国株価の牽引役をした主要業種が、株式上昇相場から離脱することを意味する。したがって、現在の株価は、7〜9月決算発表でまだまだ下落途上にあると思われる。  ・株価の値動きも、企業業績悪化⇒PER(株価収益率)上昇⇒割高感の上昇⇒株価下落のサイクルに入っていくと予測する。

●3.NY連銀総裁、政策金利はインフレでいずれ4.5%付近に上昇へ (ブルームバーグ)

●4.ミネアポリス連銀総裁、利上げ休止は「かなり遠い先」で、まだ仕事がある(ブルームバーグ)

●5.デーリーSF連銀総裁、利上げ+0.75%ペースの減速には高いハードル(ブルームバーグ)

●6.米IBM、NY州で半導体など研究開発や製造へ約2.9兆円を投資(NHK)

●7.米国政府、軍事転用可能な半導体関連製品の中国向け輸出規制を強化(NHK)

●8.亜鉛・銅が上昇、LMEがロシアUMMCから新規納入を制限(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/6〜7、祝日「国慶節」のため休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/6、日経平均+190円高、27,311円(日経新聞より抜粋)  ・米株価指数先物が堅調に推移し、日経平均先物などへの買いにつながった。半面、直近で相場水準を大きく切り上げていたため、目先の利益を確定する売りが上値を抑えた。  ・10/5の米株式市場では主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が3日続伸し、東エレク・アドテストなど日本の半導体関連株にも買いが波及し、日経平均を押し上げた。  ・商品投資顧問(CTA)と見られる、株価指数先物への買いが継続した。  ・日経平均は市場想定よりも強い金融引締めを長く続けるタカ派姿勢が示された9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受け、大きく下落する前の水準である9/21の終値27,313円を上回った。FOMC後に相場の一段安を想定して株価指数先物の売りの持ち高を形成した投資家の買戻しが活発化したとの見方もあった。  ・日経平均の上値が重くなる場面もあった。前日までの3日間で+1,180円ほど上昇し、約2週間ぶりに27,700円台を回復した。TOPIXは9/20以来の半月ぶりの高値。急ピッチな上昇だっただけに利益確定売りが出た。  ・ファストリ・SBG・エーザイ・第一三共・楽天が買われ、KDDI・テルモは下落した。

 2)10/7、日経平均▲195円安、27,116円(日経新聞より抜粋)  ・前日の米市場で米長期金利の上昇をきっかけにハイテク株安となった流れを受け、東京市場では運用リスクを回避する売りが広がり、反落した。  ・日本株は前日まで上昇が続いていたため、利益確定売りも出やすかった。朝方に日経平均の下げ幅は▲400円に迫る場面があった。  ・売り一巡後は、主力株を中心に下値で買いが入り、下げ渋った  ・鉄道・空運などリオープン(経済再開)銘柄に物色が向かい、相場を下支えした。  ・米9月雇用の発表を控え、市場では様子見姿勢が強まり、日経平均は小動きに留まる。  ・東エレク・アドテストなど主力半導体関連が下げ、三菱UFJ・郵船など景気敏感株などの一角も安い。鉄道・空運・ソフトバンクGが上昇した。

●2.日本株:米国株の乱高下の影響を受けながらも底堅く推移、そこが損失補填リスクに

 1)外国人先物買越しは10/4から継続中  ・但し、買越し枚数は大きくない。  ・外国人の買いに対して、国内勢は売り向かってきた。しかし、野村は10/5〜7にかけて3日間買越したことで、日経平均の底堅く推移。

 2)日経平均の最近の値動き:米国株の影響を受けながらも、底堅い値動き  ・9/20      1営業日  + 120円高   9/21〜26    3営業日  ▲1,257円安   9/27      1営業日  + 140円高   9/28      1営業日  ▲ 397円安   9/29      1営業日  +  248円高   9/30      1営業日  ▲ 484円安   10/3〜4     2営業日  + 1,374円高   10/7      1営業日  ▲ 195円安  ・日替わりで、めまぐるしく高安を繰返す日経平均が特徴。  ・9/20〜10/7間で、日経平均は▲451円安・▲1.6%安。NYダウの同期間の下落率▲5.6%下落と比べて、日経平均は底堅い動きとなった。

 3)ストキャスティクスは「買われ過ぎ」のサインが点灯、日経平均の下落のおそれに注意。  ・10/7のFAST 90、SLOW 79。

 4)日経平均が底堅い要因  ・米国株は、金利上昇継続と企業業績悪化を織込み始めたが、日本株は、(1)日銀による大規模金融緩和の継続 (2)円安効果 (3)企業業績の変更なし (4)コロナ対策緩和期待の影響を受けて、底堅い展開になっていると思われる。

 5)世界主要中央銀行の政策金利        1月  ⇒   最近  ・米国   +0.25%   + 3.25%   日本   ▲0.10    ▲0.10   欧州    0.00     1.25英国    0.25     2.25   中国    4.35     4.35  6)10/中旬から始まる7〜9月期と通年見通しがある決算発表に注目  ・企業の多くが値上げを実施しているが、コスト上昇分を100%織込めない企業が結構あり、決算発表に注目したい。当然、悪材料は株価に反映されていないケースがあると思われる。

 7)米国株式の損失補填として、売られる可能性のある日本株  ・米国・欧州企業の株価がこれ以上売られると、米国・欧州市場での損失が膨らむことになる。その損失補填として、底堅く推移する日本株が売られるケースに留意したい。  ・東証の取扱高の3分の2を、外国証券が占めている脆弱性を忘れないようにしたい。

●3.日銀の黒田総裁、道半ばで来年4月退任へ、金融緩和の出口見えず(共同通信)

●4.企業動向

 1)任天堂  31年ぶり株式分割(1株⇒10株)、10/1付け(京都新聞) 2)Google  データーセンターを1,000億円かけて千葉県印西市に開設(TBS)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・2685 アダストリア    業績好調。 ・3394 コスモス薬品    業績堅調。 ・7202 いすゞ       業績堅調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou