高1「LINEいじめ」自殺訴訟、都の責任認めず 遺族側「非常に狭い判断だ」
2015年に都立小山台高校1年の男子生徒が自殺したのは、学校や教員がいじめの対策を怠ったからだとして、遺族が約9300万円の賠償を求めていた訴訟の判決が7月8日、東京地裁であった。清野正彦裁判長は「不法行為としてのいじめと認定できない」として、原告の請求を棄却した。
白神優理子弁護士ら原告弁護団は同日、会見で「多くの子どもが利用するLINE上でのいじめについて問題提起したにもかかわらず、非常に狭い判断だ」と批判した。
●LINEのやりとり、遺族がデータ復元
原告側によると、男子生徒は、LINE上で嫌がる呼び名で連呼されたり、言動をまねされてからかわれたりしたという。遺族がSNSを復元して分かったこともあった。
また、学校のアンケートに悩みを記載し、スクールカウンセラーの相談を希望していたことなどが分かっている。亡くなった2015年9月には保健室を4回も利用していた。
東京地裁はこうした事実について、「いじめに発展する関係や人格否定とまではいえない」「言葉遊びの中で苦痛を受けていたと断定できない」とした。
●担任や養護教諭の責任も認めず
東京地裁は、学校側の対応についても、LINEのやりとりを認識していたという証拠はなく、自殺の危険を予見できなかったと判断した。
保健室にしばしば来ていたことについては、「全校で行事が重なっていた時期で、男子生徒が深刻な身体・精神的不調を来していたと養護教諭が認識するのは困難だった」とした。
●「破棄」とされた資料 裁判の中で開示
男子生徒が亡くなってから6年10カ月がたった。弁護団は、裁判を通じて、都側が破棄したとしていた資料のコピーが開示された点を挙げ、「多くの資料を出させた意味はあった」と話した。しかし、LINEいじめという現代の中高生が抱える問題について深く検討はされなかった。「この判決を社会的議論のきっかけにしてほしい」と訴えた。
●母「息子は生きていたかった 学校は過ちを認めて」
原告の生徒の母親は弁護団を通じてコメントを出した(一部抜粋)。
息子と遺族の思いを汲んでもらえずとても残念です。
いつも家族を守りたい、家族に楽をさせてあげたい、人の役に立ちたいと話していた。そんな息子は、決して死にたくはなかったはずだ、息子は訳もなく死ぬはずがない、と思いました。息子はもっと生きていたかったのです。息子は決して死にたくはなかったのです。 学校は子どもの命を守るべきなのに、担任も養護教諭も怠りました。息子が生きているときに、学校が息子の異変を伝えてくれていたら、息子は決して死ななかったのです。 学校に責任があるのは明らかです。学校は自分たちの過ちを認めて息子が死んだことについて、心から悔やみ、悲しみ、息子に謝ってほしいです。
今まで長い間、息子と遺族を応援してくださった、たくさんの皆さんに心から感謝いたします。 ここまで来られたのも、みなさんのおかげです。ほんとうにありがとうございました。
(これまでの経過)
2015年9月 男子生徒が自殺
2016年1月 東京都教委が調査委員会を設置
2017年9月 調査委「いじめは確認できない」との報告書
2018年7月 遺族の要望を受けて再調査を決定
(委員の選任などを巡り、2022年7月現在も開始のめど立たず)
2018年9月 遺族が都を提訴
2022年1月 東京地裁が和解勧告。都側は受け入れず
2022年7月 地裁判決