※この記事は2011年09月27日にBLOGOSで公開されたものです

大学生による国家予算を切り口とした国家グラウンドデザインコンテスト「未来国会2011」が去る9月24日、東京・駒場で開催された。これは、大学生が未来の国家ビジョンを「国家予算」という形で競い合うコンテストで、大学生にとってはこれから50年以上も生きていくこの国をどうするのか、どうして行くのかを考える絶好の機会となった。【取材・構成・写真　田野幸伸（BLOGOS編集部）】


・・・とはいえ、著者自身が学生時代に国家予算の事を考えたことがあったかというと、「1秒もない」と断言できる。そのコンテストに多くの学生が参加し、当日は200人を越える観客が集まり、その大半が大学生。今回このイベントを主催したスタッフもほとんどが学生だ。正直驚いた。

コンテストの課題は、
２０年後の日本の国家ビジョンを考え、そのための具体策として５年後の国家予算を示しなさい。
というもの。

決勝に残った4チームは、様々な予算案を示した。

東日本大震災で大きな被害を受けた、宮城県から参加のチームは「未来へ向けた地域づくり」と題し、人と人のつながりを大切にする社会、地域コミュニティの構築を提案。

「Japan as No1」を再び。少子高齢化を世界に先駆けて克服し、そのモデルを手本にしてもらおうというチーム。

高校生の留学を必須にし、国際感覚を身に着けてもらおう、リニアモーターカーを全国に走らせようというチーム。

そして、新入社員が様々な業種を経験する制度を作り、社会保障の拡充をもって、チャレンジしやすい国にしようという提案がそれぞれから出された。

当日のコメントゲストは、前・文部科学副大臣の鈴木寛参議院議員、毎日新聞社論説副委員長の与良正男氏、メディアジャーナリストの津田大介氏の3名。

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参加者の国家予算プレゼンに、次々と厳しい突っ込みを入れてゆくゲスト陣。

「財源はどうするの？」「それを国家がやる意味は？」

プレゼンの用意は出来ていた学生たちも、想定問答までは用意していなかったらしく、かなり追い込まれていた。

プレゼン・ゲストとの質疑応答を総合的に判断し、会場に集まった観客が投票。「チャレンジャーズ国家ニッポン」を掲げ、若者のチャレンジを応援し、労働の自由化推進を提案した「チーム東大・早大」が見事優勝した。さらに、予定にはなかったが、プレゼン内容に感心したゲスト3名から、宮城県から参加のチームへ特別賞が贈られた。

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優勝したチーム東大・早大


ゲストからの総評



・予算規模が今の国家予算と大差ないのが残念。60兆にするチームや150兆で作るチームがあってもよかった。

・特例公債に頼り、赤字予算のまま。歳入より歳出が多い現状をどうしていくのか、あまり示されなかった

プライマリーバランスを重視した予算編成などが評価され、優勝したチーム東大・早大は、チーム3名中、なんと2人が大学１年生。いわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる年齢の彼らだが、とんでもなかった。メンバーの１人は堂々と、「将来の夢は政治家です」と胸を張って語っていた。頼れる若者である。

イベント終了後、ゲストに感想を伺った。

津田：すごく面白かったですね。Twitterの実況もすごく盛り上がっていて、学生にはいい経験になったのではないでしょうか。このやり方は20代のやり方。30代の大会があってもいい。グランドデザインを語り合う場所はなかなかないから。

与良：去年もゲストとして参加したが、レベルが上がってきている。Twitterの威力を知った。この方式を本物の国会にも導入できないものか。双方向を国会の中でやれる世の中が意外に早く来る気がした。今の若い世代のほうが利他的で、他人の事を考える世の中になっていると思う。震災以降その傾向は強まってきていて、僕らの世代のほうが、競争が当たり前だと言う社会に育った。個人主義はいいことだみたいな社会で育ってきちゃった。むしろ10代、20代のほうが、他者、公共の事を考えている気がします。みんなで支えあっていく国にするのか、アメリカ式の勝つ人間がリードする国にしたいのか、そこは聞きたかったかな。日本がこれから1番になるのは難しいと個人的には思っている。支えあっていく国にしたいけれど、「いや、そうじゃない」というのも聞きたかった。

鈴木：非常に今日は面白かった。このレベルの議論が20代のコミュニティで出来ていることは素晴らしい、彼らが5年、10年、切磋琢磨してくれれば、日本社会を支える人材に育っていくと思うし、志を持った人たちがつながって行って、さまざまな地域に仲間がいることが確認できるいい機会だった。

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誰かに任せておいて右肩上がりで日本が成長していく時代は終わった。アメリカ型の格差社会がいいのか、北欧型の高福祉、高負担がいいのか、それとも緩やかに下っていくのか、もう一度這い上がるのか。世界の人口は増え続け、地球は食糧危機を抱える。一方、日本の人口は減り続け、経済規模は縮小していく。この先10年、20年と、日本が生き残っていくために何をするべきなのか、若い世代と共に考えて行きたい。