シャオミが日本で本格攻勢、ストア展開や日本独自スマホの可能性も(佐野正弘)
中国のシャオミが2019年末に日本のスマートフォン市場への参入を表明してから、2年と少しが経ちました。
かなり後発での日本市場参入に疑問の声が少なからず挙がったシャオミですが、世界シェア3位のスケールメリットを生かしたコストパフォーマンスの高さを武器として、2020年にはKDDIにスマートフォン供給を実現。2021年にはソフトバンク向けにスマートフォンを供給し、さらに日本でニーズの高いFeliCaやIP68の防水性能を搭載した機種を相次いで投入するなどして大きな注目を集めました。
そうした取り組みが功を奏し、2021年には日本国内でのスマートフォン出荷台数が100万台を突破。2020年から比べ500%の成長を遂げたほか、スマートフォンだけでなくウェアラブルデバイスでも国内でのシェアを急拡大。日本市場での存在感を高めつつある様子がうかがえます。
そのシャオミは2022年3月4日に新機種「Redmi Note 11」を日本向けに投入することを発表したのですが、それに合わせる形でシャオミは記者向けの説明会を実施。今後の日本市場に向けた戦略についても明らかにしているのですが、シャオミの東アジア担当ゼネラルマネージャーであるスティーブン・ワン氏がによると、その長期的戦略に向けて掲げたスローガンは「100%グローバル、100%ローカル」だといいます。
先にも触れた通り、シャオミは世界市場で高いシェアを持つというスケールメリットを生かし、高性能なスマートフォンを低価格で提供するなど非常に高いコストパフォーマンスを実現しており、グローバルでの規模が消費者に恩恵をもたしていることは確かでしょう。ですがそれだけでは日本のローカル市場で勝ち抜けないというのは、シャオミもよく知っている所ではないでしょうか。
そこでスティーブン氏は、2022年以降「100%ローカル」にもフォーカスしていきたいとの考えを示しています。既に防水やFeliCaなどに対応させたスマートフォンを投入しているだけに、一体何をローカル化するのか? というのは多くの人が疑問を抱くかと思いますが、スティーブン氏の説明によるとそれはシャオミの日本における事業全体を、よりローカルに根差したものにしていくことのようです。
1つはマーケティング活動の強化であり、ブランド認知を拡大するため広告や宣伝などに積極投資していくとのこと。シャオミは2021年にモデルのKōkiさんを起用したプロモーションを実施してきましたが、今後はそうした活動をマスメディアなどに広げていくのではないかと推測されます。
2つ目は販売チャネルの拡大であり、今後全国に4000以上の拠点を展開して販売拡大を図っていきたいとしています。ですがスティーブン氏はさらにシャオミ独自の店舗展開にも言及、日本でスマートフォン以外のデバイスを本格展開していくに当たり、2022年には自社ショップ展開に向けた具体的な取り組みを始めると話していました。
シャオミは中国をはじめ多くの国で独自の店舗を展開しています。シャオミが提供するスマートフォンのほか、家電やIoTデバイスなど多数の商品を販売してそれが知名度とセールスの向上に結びついていることは知られていますが、スティーブン氏の発言からすると、今後同様の取り組みを日本で始めると見ていいでしょう。ただ日本で店舗を構えるには場所や製品の選択、そしてスタッフの教育などさまざまな要素が求められることから、いきなり店舗展開を始めるのではなく、まずはストアインストアやポップアップストアの形で試験的に展開していく考えのようです。
そしてもう1つ、より大きいのが日本法人であるシャオミジャパンの強化です。スティーブン氏は今後日本法人での人員を現在の1.5倍に拡大し、事業そのもののローカライズを図り運営の効率化を進めると共に、日本事業は日本法人を主体にオペレーションし、より国内に根差した事業展開を進めていきたいとしています。
実際今回の説明会においては、スティーブン氏に加え新たに、シャオミジャパンのプロダクトプランニング部 本部長である安達晃彦氏も同席、Redmi Note 11に関するプレゼンテーションをしていました。安達氏はこれまで他のスマートフォンメーカーで開発実績を持つ人物だけに、こうした動きからも日本市場に詳しい人材を積極的に取り込み、日本での事業を強化したいシャオミの様子を見て取ることができるでしょう。
さらにスティーブン氏は、製品についても「ローカル化の余地はまだある。製品にローカルの機能を追加するだけでなく、ソフトもハードも製品丸ごと完全に日本市場向けに開発できないか」とも話していました。世界展開する企業がローカル市場に向けた対応をするため一部機能を追加・変更するというだけでもかなり苦労を伴うことなのですが、ローカル市場から製品を企画提案し、開発するとなれば、シャオミにとってもかなりのチャレンジとなることは確かでしょう。
スティーブン氏は製品を企画してから市場に出るのに1年かかるとしており、安達氏らが参入した現在の体制で取り組みを始めたとしても、その成果が出るにはまだ時間がかかることは確かです。とはいえ一連の説明からは、シャオミが日本市場開拓に向け一層本腰を入れてきたことは確かだと感じますし、それが競合他社や市場全体に、どのような影響をもたらすのかは大いに関心を呼ぶ所ではないでしょうか。