新潟県民のソウルフード! 『みかづき』の「イタリアン」ってどんな料理?
食楽web
全国各地に「ご当地グルメ」があり、中には他県の人間からすると驚くようなメニューもあります。新潟全域のソウルフードとして知られる「イタリアン」は、四角い中太麺の焼きそばの上に、旨みたっぷりトマトソースがデン! と乗ったもので、その見た目にまず驚くとともに味の想像が全くつかないものでもあります。
新潟の「イタリアン」には2大潮流があり、一つが新潟市内で発祥した『みかづき』、そして長岡市内で発祥した『フレンド』。この2つのチェーンが「イタリアン」を販売したことで地域に根づき、文化祭の模擬店などでも学生による「イタリアン」が展開されるなど、まさに新潟のソウルフードと呼ぶにふさわしいメニューになったのだそうです。新潟県民の中には、他県に行き「『イタリアン』がない」ことに驚く人もいるとか、いないとか。
というわけで今回は、新潟市内にある万代シティバスセンターの『みかづき』に出向き、そのイタリアンをいただいてみることにしました。
新潟・万代シティバスセンターの施設内にある『みかづき』に行ってみた!
『みかづき 万代店』
JR新潟駅から数百メートルの万代シティエリア。ファッションビルやショッピングモールなどが立ち並び、正直「新潟らしさ」を感じない地域でもありますが、この中心地にある万代シティバスセンターは、複数のバスが乗り入れるターミナルで、地域に根付いた空気があり、なんだかホッとする雰囲気です。
この万代シティバスセンターには、やはり新潟県民に大人気の『名物 万代そば』という立ち食いそば店などがあり、ここのカレーは「バスセンターのカレー」として有名です。この万代シティバスセンターの2階に、『みかづき』があると聞きエスカレーターで上がってみると、確かにありました!
「みかづき」のメニュー
お店はファーストフードの佇まいで、目当ての「イタリアン」のほかに、フライドポテトや唐揚げ、ソフトクリームやドリンク類もメニューにラインナップされています。
新潟県民の方なら「なんでそんな!」と思うかもしれませんが、筆者は慣れないこの店構えにやや緊張しながらお店に入り、店頭のお姉さんに「イタリアン」(350円)と「ホワイトイタリアン」(450円)をオーダー。
『みかづき 万代店』の店内。やはりファーストフード的です
さらに「店頭で食べていきたいのですが、食べきれない可能性もあるので、そういった場合は持ち帰れるのでしょうか」と、面倒臭いことをお姉さんに言うと、「大丈夫です。それでは持ち帰り用の用意もしますね」と丁寧に応じてくれました。
県外の人間でも何故かホロリとくる味。慣れ親しんだ新潟県民なら相当な特別感があるはず!
『みかづき』の「イタリアン」350円
お姉さんから番号札をもらい、待つこと数分。ついに出来上がりました、「イタリアン」および「ホワイトイタリアン」。
早速「イタリアン」から食べてみることに。今さっき炒めたであろうモヤシやキャベツを含む太麺に、コーンや肉などを使ったトマトソースがかけられており、和えていただくと、これがうまい。初めて食べる味なのに、どこか懐かしい、ここでしか食べることができない優しい味に思いました。
『みかづき』の「ホワイトイタリアン」450円
また、「ホワイトイタリアン」のほうは、コーンを含んだホワイトソースが、例の太麺やきそばの上に乗っており、これもまた美味。通常の「イタリアン」に比べ、どことなく洗練されたような味ではありますが、厳しい冬を迎える新潟で、きっとこの味が多くの人たちを癒してきたのだろうと想像しました。
ロゴがかわいい「イタリアン」の包材。前述の通り、持ち帰る際の準備もしてくれたお姉さん(感謝)
この優しい味と、前述のお姉さんの丁寧な対応。こういった「全国どこの街にでもあるものではない、そこでしか食べられない味」が今の時代は特に貴重です。そして、店員さんとのフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションも、また人の心を癒してくれるものだと、なんだか妙にホロっとする筆者でした。
県外の筆者でもそう思うほどでしたので、「イタリアン」で慣れ親しんだ新潟県民の方なら、さらに強く感じられるのではないかと思いました。
「イタリアン」考案のきっかけは、甘味処の「食事メニュー」の充実だった!
『みかづき』の前身『三日月』が「(焼きそば)イタリアン」を始めた際のかわいい広告
『みかづき』の「イタリアン」に感動した筆者は、後日本社に直談判。「イタリアン」のゆえんを詳しく聞いてみることにしました。
「『みかづき』は、今回ご試食された万代店を含み、新潟市とその近郊で22店舗をチェーン展開しています。もともとの成り立ちは現社長の曾祖母にあたる、三日月ヤトさんが明治42年に始めた小さな甘味処でした。このお店は、社長の祖母が引継ぎましたが、その後戦争で一度閉店。そして昭和29年に社長の父にあたる、三日月晴三がこのお店をモダンな甘味喫茶として再開させました。このお店で『食事メニューを充実させよう』という目的で考案されたものが『スパゲティ風焼きそば』の『イタリアン』でした」(担当者)
しかし、ここで疑問も浮かびます。冒頭でも触れた通り、新潟の「イタリアン」には『みかづき』のほかに、もう一つ長岡の『フレンド』というお店でも多く扱っており、2大潮流とも言うべき構図となっていること。この疑問をぶつけてみると……。
「もともと三日月晴三が、『フレンド』さんの創業者・木村政雄さんと親友で、一緒にアメリカに視察に行くほどの仲でした。こういったことで両社で『イタリアン』を販売するようになりましたが、味や内容は違うものです。
あくまでも『みかづき』の話で言いますと、『ごちそう』ではない『イタリアン』に対し、『グルメ』とは呼ばず『ソウルフード』と呼んでいただける新潟県民の皆さまには感謝しかございません。今後もよりリーズナブルで、よりコンビニエンスで、よりスペシャリティのある『みかづき』だけの味を目指してがんばっていきたいと思います」(担当者)
この「イタリアン」、筆者はとても感動したため、『みかづき』が展開している「冷凍イタリアン」の通信販売などもしたいと思ったところ……。
「『冷凍イタリアン』は様々なご都合で、新潟県外にお住いの『元新潟県民』の皆さまに向けた『便利なイタリアン』として販売し始めました。大量生産できるような生産ラインがあるわけでもなく、1個1個が手作りです。たくさんを販売することが難しい『中途半端』な商品でもあります。ですが、『元新潟県民』の方が思い出してくださった際にご注文いただけるくらいであれば、なんとか品切れさせることなくご提供できると思います。ですので、今のところ、『冷凍イタリアン』は『元新潟県民』の方向けとして考えております」(担当者)
「イタリアン」はやはり新潟県民にとっての特別なものであるとともに、『みかづき』担当者の方の話からは、「イタリアン」を全国に広めるよりも、長きに渡って食べ続けてくれた新潟県民の方を大切にし続けたいといった思いがヒシヒシと伝わってきました。新潟のソウルフード「イタリアン」。ぜひ新潟に行かれる際は必須で食べてみてください。県外の人間でもホロリとくる味を感じられると思います。
(撮影・文◎松田義人)
●SHOP INFO
店名:みかづき 万代店
住:新潟県新潟市中央区万代1-6-1 バスセンタービル 2F
TEL:025-241-5928
営:10:00~20:00
休:1/1