住宅ローンを借りる際には、印紙税や不動産取得税、火災保険料など諸費用が必要となります。今回はその中でも、保証料について説明します。誰にいくら払うのか? なぜ払う必要があるのか? など基礎的なことから、支払い方法や保証料が返金されるケースまで詳しく迫ってみました。

住宅ローンの保証料とは

住宅ローンの保証料とは、住宅ローンの契約者が返済不能となった場合に、契約者に代わって保証会社が返済を行う契約を結ぶための手数料のことです。住宅ローンを借りるためには、原則的に保証会社による保証が必要になります。
契約者と保証会社が契約した後に、万が一契約者が住宅ローンの返済が困難となった場合、まず、保証会社が債権者(金融機関など)に残額を一括返済します(代位弁済といいます)。そして、保証会社が債権者に住宅ローンを一括返済した後は、契約者にその債務がなくなるというわけではありません。

契約者は保証会社に対し、継続して返済義務を負う仕組みとなっています。住宅ローンの債権者が保証会社に移った場合、約束した返済日までに金銭を返済すれば良いという権利、つまり、期限の利益を喪失するため、残債の一括返済を求められます。
もし、契約者が一括返済できない場合、保証会社は契約者の財産である自宅を売却し、債権の回収を図ろうとします。住宅ローンを契約する際には、自宅を担保とする抵当権を設定します。この抵当権があるため、保証会社は担保で自宅を差し押さえ、強制的に売却することができるのです。

なお、保証会社が抵当権を設定していても、勝手に他人の自宅を売却することはできず、裁判所に申し立てを行ってからの手続きとなります。

保証会社とは?

住宅ローンにおける保証会社は、住宅ローン契約時に契約者の連帯保証人を代行し、契約者が返済できなくなった場合に、契約者に代わって債権者(金融機関など)に残債を支払います (代位弁済) 。
保証会社には、銀行が子会社として設立している保証会社、地方銀行が地域別に設立している保証会社、信用金庫協会が設立している独立系の保証会社などがあります。

実際に返済不能になるとどうなる?

毎月の返済のうち1回遅れただけでは、すぐに保証会社が出てくるということはありません。まず金融機関から、引き落とし口座から返済が行えなかった事実の通知と督促が、契約者の手元に届きます。督促に応じない、電話に出ない、返済が行われない月が続くと、「金融機関から督促の電話が増える」「担当が直接訪問に来る」など、対応が変わってきます。

再三の督促に応じない場合は、保証会社からも連絡が来るようになり、約束した返済日までに金銭を返済すれば良いという権利である期限の利益を喪失する催告書が届きます。保証会社は、金融機関に住宅ローンの残債に加え、遅延利息を代位弁済します。
最終的に、保証会社は代位弁済をすることで、住宅ローン契約者に特定のものを返還請求できる求償権を得ます。そして、裁判所に申し立てを行い、任意売却や競売の手続きに入ります。物件の売却だけで回収できない分は、契約者に請求されます。

期限の利益の喪失とは?

期限の利益とは、約束した返済日までに金銭を返済すれば良いという権利です。住宅ローンを利用している人は、この期限の利益があるので、金融機関から大きな金額を借りて、分割で返済をすることが許されています。したがって、何らかの事情で期限の利益を喪失すると、分割での返済は認められず、直ちに弁済が必要ということになるのです。

住宅ローンを含め、お金を借りるときは、金銭消費貸借契約を結びますが、そのなかには、期限の利益を喪失する事項についての定めがあります。期限の利益を喪失する事項についての主な内容は、以下の通りです。

・期日までに返済をしなかった
・契約違反があった
・契約をしたときに虚偽の申告をした
・再生手続きをした

1回引き落としにならないというだけでは、すぐに期限の利益の喪失を金融機関が主張することはありません。しかし、再三の催促にも応じない、複数月返済が行われない場合には、期限の利益喪失の催告書を送り、保証会社は一括返済を求めるようになります。保証会社が一括返済を求めるのは、この期限の利益を喪失しているためです。

保証会社が設立した経緯

現在、住宅ローンは保証会社を利用することが当たり前となりましたが、かつては住宅ローンも連帯保証人が必要とされていました。仮に本人が返済不能となった場合、また本人が病気やけがで返済不能になったときも、連帯保証人が返済することになっていました。
しかし、住宅ローンの借り入れは高額であるため、万が一契約者が返済できない場合、連帯保証人は膨大な住宅ローンの負債を抱えてしまうことになります。そのため、連帯保証人のなり手が見つからず、住宅ローンの普及が進まない要因になっていました。

そこで、金融機関は、自社の子会社として保証会社を設立し、連帯保証人に債務を保証させるのではなく、契約者が保証会社に保証料を払うことで、債務を保証するという仕組みが生まれました。保証会社ができたことで、連帯保証人が不要となり、住宅ローンの普及につながりました。

連帯保証人が必要となるケース

基本的に住宅ローンは連帯保証人が不要ですが、以下のような場合には連帯保証人を立てることが必要となります。なお【フラット35】の場合も、保証人は原則不要です。

・収入合算して住宅ローンを利用する場合
・ペアローンを利用する場合
・金融機関から求められた場合

1人の収入だと希望借入額に満たない場合、夫婦の収入を合算して住宅ローンに申し込みをすると、借入額を増やすことができます。収入合算で住宅ローンを申し込んだ場合、夫が住宅ローンを申し込むと、妻は連帯保証人となります。なお、離婚しても、連帯保証人の解除は、基本的にはできません。

ちなみに【フラット35】で収入合算を利用して住宅ローンを組む場合、「連帯債務型」の借り入れとなります。これは夫婦や親子など2人のうちどちらかが主債務者となり、さらにもう一人も「連帯債務者」として同等の返済義務を負うことになります。

また、希望借入額を増やす方法として、夫婦や親子でペアローンを組むことがあります。収入合算が1物件に1契約なのに対し、ペアローンは、1物件に対し2人がそれぞれ住宅ローン契約を結ぶという違いがあり、お互いが契約の連帯保証人となる必要があります。なお、ペアローンについても、離婚しても連帯保証人の解除は、基本的にはできません。
個人事業主やフリーランスの人などが住宅ローンを申し込んだ場合、「開業して間もない」など、収入が安定していないと判断されるケースでは、連帯保証人を求められることがあります。

保証料の支払い方

住宅ローンの保証料の支払い方法には、一括払いで支払う「外枠方式」と、金利に上乗せされて分割で支払う「内枠方式」という方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。

外枠方式:一括前払い型

保証料を、住宅ローン借入時に一括で支払う方法のことです。下記のメリットとデメリットがあります。

メリット

内枠方式よりも保証料の総額が少ないケースが多い

デメリット

住宅ローン契約時に一時的に大きな金額を用意する必要がある

内枠方式:金利上乗せ型

保証料を住宅ローンの金利に上乗せして、支払う方法です。

メリット

住宅ローン契約時の諸費用を抑えることができる

デメリット

外枠方式より保証料の総額が大きくなるケースが多い

なお、外枠方式と内枠方式のメリットとデメリットについては、一般的な事例を紹介しています。借入金額と借入期間が同じ場合、内枠方式のほうが保証料の総額は大きくなる傾向がありますが、金融機関によっても異なります。

外枠方式と内枠方式どちらがいい?

一般的には、外枠方式のほうが、保証料の総額は安くなる傾向があります。住宅購入を検討していて、十分な資金を用意している場合は、外枠方式で保証料を先に払ってしまう方法もあります。
しかし、家庭における支出は住宅ローンだけではありません。並行して、生活費、子どもの教育費、老後の生活資金準備なども必要になります。

特に、子どもの教育費がピークを迎えている世帯の場合、保証料を外枠方式で払ったほうが、保証料の総額で安くても、大きな支出をし、一時的な貯蓄不足で不安を感じてしまうかもしれません。そのようなケースでは、仮に保証料総額では内枠方式のほうが高かったとしても、保証料を分割で支払う内枠方式を選んだほうがいい場合もあります。

保証料も含め、住宅関連の支出はライフプランを作成したうえ、並行して発生するそのほかの支出と照らし合わせて検討をすることが大切です。

保証料が返金されるケース

保証料は、支払い方式を「外枠方式」にしていて、全額繰り上げ返済を行った場合や、期間短縮、借り換えを行った場合に返金されるという場合があります。

保証料の外枠方式は、保証料を前倒しで一括払いする方法なので、繰り上げ返済や期間短縮をすれば、短縮したぶんの保証料が返ってくることになります。
保証料は全額繰り上げ返済や借り換えをし、金融機関に対して一括返済が終わった後に返金される場合と、繰り上げ返済、または、借り換えを申し出た時点で、返ってくる保証料額が計算される場合があります。

保証料が不要な住宅ローン

住宅ローンを契約するときに保証会社を利用するためには、通常は保証料を支払う必要がありますが、一部、保証料を不要としている金融機関があります。これを、融資手数料型住宅ローンといいます。

融資手数料とは、保証料が不要となる代わりに発生する融資に伴う事務手続きなどの手数料のことです。
融資手数料は、「借入額×2.0%(消費税別)」など定率で発生する場合と、または、借入金額に限らず定額で発生する場合があり、金融機関によって金額が異なります。

保証料が不要の融資手数型住宅ローンの代表的な商品としては、全国300以上の金融機関が住宅金融支援機構と提携して扱う、全期間固定金利型住宅ローン 【フラット35】 があります。
【フラット35】の場合、扱っている金融機関によって異なりますが、融資手数料の目安は定額型で3万~5万円、定率型で借入額の1~2%程度。借入額によって定額型と定率型とでは手数料が変わってくるので、どちらのタイプなのか金融機関に確認しましょう。

まとめ

住宅ローンの保証料とは、契約者がローンの返済不能となったとき、保証会社が契約者の代わりにローンの返済を行う契約を結ぶための手数料のことです。保証会社が債務を保証するため、一部の例外を除いては住宅ローン契約時に連帯保証人を立てる必要はありません。なお、一部の金融機関では、保証料が不要な融資手数料型住宅ローンを取り扱っています。

保証料の支払い方式には、住宅ローン利用時に一括で支払う外枠方式と、住宅ローン金利に上乗せをする内枠方式があり、メリットとデメリットを考えて自分に合った方法を選ぶ必要があります。
保証料は、住宅ローンの諸費用の中でも大きな割合を占める支出です。各商品の保証料の特徴を理解し、自分の返済スタイルに合った住宅ローンを選びましょう。