XPI

「Xperia PRO-I」が発表されました。筆者の居住する香港でも発売予定であり、実機を触ることができたので個人的なファーストインプレッションをお届けします。

なお本記事で使っている写真はXperia PRO-Iの香港販売予定のモデルです。日本版とは一部異なる部分があるかもしれません。

Xperia PRO-Iの1インチカメラセンサーはコンパクトデジタルカメラのRX100VIIと同等のものを搭載。1インチセンサーを搭載したスマートフォンはこれまで他社から何機種か発売されましたが、Xperia PRO-Iはソニーの実力あるカメラと同じものをスマートフォンに搭載しているわけです。これを聞いただけで「いい絵が撮れる」と誰もが思うのではないでしょうか?

スマートフォンのカメラはAI処理によるコンピュテーショナルフォトグラフィーの進化がここ数年の進化でした。日常的に被写体にスマートフォンを向けてカメラで写真撮影すれば、どんなシーンでも美しくしかも映える写真を撮ることができるのが今や当たり前です。とはいえ高速に動く被写体がブレてしまったり、人物を撮影したのに周囲にピントがあってしまった……なんてこともよくあります。そのあたりを改善するためには写真の加工技術だけではなく、被写体を瞬時に認識する技術も重要になります。

Xperia PRO-IはXperiaシリーズでもおなじみの「瞳AFポートレート撮影」がさらに強化されました。人物を狙えば確実に顔にピントが合うわけです。またリアルタイムトラッキングにより動く被写体のみならず、食事の撮影時もぴたりとピントが合います。写真が綺麗かどうか以前に、撮りたいものを失敗せず写せるわけです。そしてこれらの機能はXperia PRO-Iの1インチの大型センサーとソニー独自の画像処理エンジンがあってこそ実現してくれるわけです。

このようなカメラの進化は最近のAI処理とはまた違う方向であり、「きれいに撮れる」から「確実に撮れる」という、次世代のスマートフォンカメラをソニーは開発したな、と感じられるところです。極論を言えば、Xperia PRO-Iは「スマートフォンの形をしたデジタルカメラ」かもしれません。

一方で、動画にフォーカスしたVlog撮影用のアクセサリも発売されます。それが「Vlog Monitor」。3インチの外付けモニターですが、これにシューティンググリップを取り付ければ高性能なメインカメラを使って自分の顔をプレビューしながらビデオ撮影もできます。スマートフォンのカメラが進化しているにもかかわらず多くのVloggerがデジタルカメラを使うのは、スマートフォンのフロントカメラ性能がメインカメラよりも低いというところもあるでしょう。Xperia PRO-IにVlog Monitorとシューティンググリップをつければ、もはやVlogデジカメも不要と思えるほどです。

Xperia PRO-I実機を使ってみたのは1時間程度でしたが、強く感じたのは「デジカメと同じ感覚で使えるカメラを載したスマートフォン」でした。Xperia PRO-Iはスマートフォンとして、また歴代Xperiaの中でも最高のカメラを実現した製品になったと思います。

しかしソニーはこの製品を「Xperia」「スマートフォン」という枠を超えた製品にしようと考えているのではないでしょうか。

Xperia PRO-IとVlog Monitorとシューティンググリップを取り付けた姿、そして使い勝手は、自社のVlogカメラ「ZV-1」などと重なります。もちろんデジタルカメラは望遠機能やボケなどの点でスマートフォンよりも高性能でしょう。しかしスリムサイズでポケットに入り、普段はSNSや検索、動画視聴など日常的に使えるスマートフォンが、アクサセリをつけるだけで本格的なVlogカメラになるとなれば、「撮影だけ」にしか使えないデジタルカメラを選ばないユーザーも出てくるでしょう。

もしかするとXperia PRO-Iの登場で自社のVlogカメラの売れ行きに影響を与えるかもしれません。しかしソニーにとって一番重要なのは「iPhoneやキヤノンではなく、ソニー製品を選んでもらう」ことです。Xperia PRO-Iのカメラを静止画だけに使うなんてもったいないことであり、動画やVlog用途にも積極的に使ってほしいもの。そしてXperia PRO-Iユーザーが増えればそれがソニー製品全体の魅力をさらに高めてくれます。

つまりXperia PRO-IはXperiaシリーズの販売増、人気増を狙うだけではなく、「映像に強いソニー」というメッセージを全世界に発信する製品になろうとしているのではないかと感じられました。

現実的にはすでにiPhoneやGalaxyを持っている人はたくさんいます。そんな人たちにも2台めのスマートフォンではなく「スマートフォンの形をしたデジタルカメラ」としてXperia PRO-Iを使ってもらう、という方向もありでしょうね。スマートフォン+デジタルカメラの2台持ちよりも、「スマートフォン+スマートフォン」のほうが圧倒的に楽ですから。

さてハードウェアだけではなくソフトも使いやすさが増しました。Xperia I IIIではUIがプロ向けで機能がありすぎたために使うのをためらっていたCinema Proによる動画撮影も、新たに加えられたVideo ProではシンプルかつVlog系を撮影しやすいUIで、これを使ってXperia PRO-Iで動画を日々撮影したいな、と思わせてくれます。

最後に製品そのものについての感想です。Xperia PRO-Iを触って個人的に気に入ったのは本体の質感とデザイン、シャッターボタンです。質感は最近主流の艶を抑えた仕上げでケース不要で使いたくなります。またカメラ配置は各社が右に倣えとばかり、背面左上に大きいレンズをまとめるデザインではなく、中央にまっすぐに並ぶラインは対称性の美しさが感じられます。さらに大型レンズは一目でこれが高画質なカメラであることがわかり、手に持っているだけで「どんな写真が撮れるんだろう」という気持ちの高揚感を与えてくれます。シャッターボタンは大きくなり押しやすくなっています。

とういことでこれがXperia PRO-Iの実機を触って感じた筆者のファーストインプレッションです。これまではファーウェイやサムスンのカメラをじっくり使ってきましたが、Xperia PRO-Iのカメラはそれらとは全く別の方向を目指したものであり、しかも頭ひとつ抜けた性能を有しています。F値が切り替えできるあたりも個人的にはうれしいところ(Photo Proに絞り優先モードが欲しくなります)。製品版が出てきたら、ぜひ入手して様々な撮影を楽しんでみたいなと思います。