柿が一気に「洋風デザート」に大変身 山梨の老舗和菓子店に教わった「必殺技」レシピ、試してみた!
山梨県北杜市の白州町に「金精軒」という老舗の和菓子店がある。「水信玄餅」の店と聞けば、ピンとくる人も多いかもしれない。
その金精軒の公式ツイッターアカウント(@kinseiken_jp)から、2021年10月21日、次のようなツイートが投稿され、いま話題となっている。
柿農家さんから「家族が柿嫌いで悲しい」というお話を伺ったので、金精軒48の必殺技のうちのひとつ「柿のカラメルシロップ漬け」を伝授しました。
薄く切った柿を苦いカラメルシロップとラム酒に30分浸して出来上がるちょっとしたデザートです。 pic.twitter.com/IlO0ljmew2— 金精軒 (@kinseiken_jp) October 21, 2021
柿嫌いの家族を持つ柿農家に、柿を使ったデザートのレシピを伝授したらしい。それが「柿のカラメルシロップ漬け」だ。
「薄く切った柿を苦いカラメルシロップとラム酒に30分浸して出来上がる」そうだ。このツイートには、1万2000件を超える「いいね」が付けられ、今も拡散中だ(10月25日現在)。
根が食いしん坊のJタウンネット記者は、このデザートがどんなものか気になって仕方ない。
そこで、金精軒公式アカウントの中の人(担当者)に取材を申し込んだ。
お酒を使ったお菓子は経験あり
Jタウンネット記者の取材に応じたのは、金精軒製菓の担当者だった。
「柿のカラメルシロップ漬け」は、担当者自身が5年ほど前に考案したものだという。
「自分が家族を喜ばせるために考えたレシピになります。
思い付きで試したものですが、山梨県は日本酒やワインの生産が盛んなため、それらのお酒を使ったお菓子を職場でよく作ります。その経験や知識のお陰だと考えています」(金精軒製菓担当者)
お酒を使ったお菓子は、金精軒でも研究・試作しており、その成果の一端が発揮されたようだ。
そのレシピをツイッターに投稿したのは、呟きにも登場する顔見知りの柿生産者との会話がきっかけ。
「(柿農家さんに)『毎年美味しい柿をありがとうございます』と私がお礼を伝えたところ、『家族は柿が好きではないのでそう言ってもらえると嬉しい』と返ってきました。
農家さんは冗談半分で笑っておっしゃっていましたが、こんなに美味しい柿を作っているお父さん(柿農家さん)の凄さをご家族に伝えたくなり、あの呟きにまで行きついた次第です」(金精軒製菓担当者)
「柿のカラメルシロップ漬け」は金精軒の数ある「必殺技」のうちの一つだそうだが、必殺技とはどんなものだろう?
「好き嫌いの激しい食べ物を美味しくする技です!
例えば、餡子(あんこ)は好き嫌いの別れるお菓子の筆頭なので、これまでSNSで『カフェオレに餡子を入れる』などの知識を発信してきました。
今回の柿も、好き嫌いの別れる柿の美味しさを伝え『柿を育てた方を喜ばせたい』意図がございます」(金精軒製菓担当者)
柿が苦手という人にもおすすめできる技ということだ。
詳しいレシピを教えて欲しいのだが......と頼むと、そのレシピを使って「自分で作ってみたら」と勧められた。
ということで、ふだん料理などしたことがないJタウンネット記者だが、「柿のカラメルシロップ漬け」に挑戦してみることになった。
――はたして、うまくいくだろうか?
泡立つたびに、ドキドキ
金精軒製菓担当者の懇切丁寧な指導のもとに、「柿のカラメルシロップ漬け」を作り始める。
まず用意するものは次のとおりだ。
・柿2個
・グラニュー糖40グラム(かなり甘くなるので、甘さ控えめがお好きなら30グラム)
・ラム酒10cc(お好みで増減させても良く正確な分量である必要はありません)
・お砂糖を溶かす水20cc
・最後に使用する熱湯20cc (金精軒製菓担当者)
グラニュー糖は自宅にあったが、柿とラム酒はスーパーで購入してきた。柿は1個100円ほど、ラム酒は700円くらいだった。
まずは、カラメルにとりかかる。もちろん初めての経験だ。
<1>お鍋にグラニュー糖と水を入れて火にかけます。
<2>お鍋を時々揺すりながら中火で砂糖を溶かします。
<3>過熱を続けていると沸騰した砂糖水がネバネバになり、沸騰の泡が大きくなります。
(金精軒製菓担当者)
砂糖水が泡立つたびに、なぜかドキドキしながら、鍋をゆすり、スプーンでかきまぜる。
<4>砂糖水に茶色く色づき始めた部分が出てきたら弱火にします。
※弱火にするのが遅かったり、鍋の壁面に付いた砂糖が焦げ始めると煙がでます。
(ちょっと煙が出たくらいでは失敗にはなりませんが、火災報知器に気を付けてください)
<5>ゆっくりと熱を加え、砂糖水全体にカラメルの色が付いたら火を止めます。
<6>用意しておいた熱々の熱湯を2回に分けて入れ、鍋を揺すってある程度混ぜます。
※直ぐに1回目の熱湯を入れないと砂糖がカチカチに固まって「べっこう飴」になってしまいます。
(このとき、鍋の中が激しく沸騰して灼熱のシロップが暴れるので火傷に注意してください)
<7>弱火にかけながら1分程温めればカラメルソースが出来上がります。
※プリンにかけるソースがこれになります。
(金精軒製菓担当者)
実は、このカラメルソースをつくるのがなかなか難しかった。火加減しだいで、色が濃くなりすぎたり、焦げ付きそうになるのだ。
金精軒製菓担当者によると、「カラメルは苦味が強めの大人用にしたほうが柿とよく合います」。長めに過熱すれば色が濃くて苦味も強めになるが、初心者が作ろうとすると苦すぎたり焦げたりするので、「まずは普通のカラメルをお勧めします」とのこと。
柿がすっかり洋風のデザートに変身!
ようやくカラメルソースらしきものができると、ラム酒の出番である。
<8>熱いうちにカラメルソースにラム酒を混ぜ、室温になるまで冷ましてください。
※アルコールが好きならソースが冷めたあとラム酒を入れてください。
(金精軒製菓担当者)
なお、ラム酒は透明で澄んだお上品なものよりも、茶色くて香りが強いパンチの効いた種類がお勧めとのこと。
そしてここで、主役の柿が登場だ。
<9>5ミリ程にスライスした柿(適当な切り方でも構いません)と完成したシロップを混ぜて冷蔵庫で30分程冷やせば完成です。
※一晩冷やせば柿の中までシロップが染み込んでこれも美味しいです。
(金精軒製菓担当者)
完成したシロップに柿を漬け込んで、30分ほど寝かせた後、アイスクリームの周りに並べてみた。ラム酒の香りがプーンと漂って、食欲をそそる。
一口食べてみると、「これが、あの柿?」というほど変身していた。すっかり洋風のデザートである。ラム酒が効いているせいか、甘みもそれほど感じない。アイスクリームの甘さをほどよく抑えてくれている。
コーヒーを飲みながら楽しめる、大人の味だ。柿が苦手な人も試してみてはいかがだろう。
記者がさらにアレンジしてみた
以上が、金精軒製菓担当者のレシピで、Jタウンネット記者が「柿のカラメルシロップ漬け」にチャレンジした報告なのだが、せっかく作ったラム酒入りカラメルソースを使って、こんなものも試してみた。
まずは、完熟した柿のスライスの上から、ソースをかけただけのもの。
ラム酒の量がやや多めで、香りも強いし、アルコールも強かった。柿はほとんど生っぽいのだが、ラム酒のせいか、スイスイと入っていき、一皿完食してしまった。
そもそも生の柿が好きで、アルコール好きな人にはおすすめかもしれない。
お次は、完熟した柿の芯をくり抜き、そこにカラメルソースをそそぎ、1日ほど冷蔵庫に入れておいてみたもの。
柿の中までカラメルシロップがじっくり染み込んでいて、なんともいえず美味しい逸品に大変身していた。
これが、柿......? ラム酒入りカラメルソースの必殺技には、ただただ恐れ入るしかない。