幻想的なリング構造をもつ棒渦巻銀河「NGC 1398」 ダークエネルギーカメラが撮影
【▲ 棒渦巻銀河「NGC 1398」(Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA)】
こちらは南天の「ろ座」(炉座)の方向およそ6500万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 1398」です。棒渦巻銀河とは、中心部分に棒状の構造が存在する渦巻銀河のこと。渦巻銀河全体のうち約3分の2には棒状構造があるとされていて、私たちが住む天の川銀河も棒渦巻銀河に分類されています。画像にはNGC 1398の中心から横方向に伸びる明るい棒状構造と、「渦」というよりは「リング」を描いているように見える繊細な渦巻腕が見事に捉えられています。
NGC 1398の近くに別の銀河は見当たらず、まるで広大な宇宙を孤独にさまよっているように思えますが、その周りにはNGC 1398よりも遠くに存在するたくさんの銀河が見えています。なかには渦巻銀河であることがわかるものも幾つか含まれていますが、そのほとんどは視野全体に散らばる無数の光点として写り込んでいます。この小さな光の点それぞれが、何百億、何千億もの星々が集まってできた銀河なのです。
この画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データから作成されたもので、米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)から2021年10月6日付で公開されています。
ダークエネルギーカメラは満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影できる巨大なデジタルカメラ(画素数約520メガピクセル)のような観測装置で、その名の通りダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発されました。ダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されましたが、その後も運用が続けられています。
関連:不規則銀河を待ち受ける運命。ダークエネルギーカメラが撮影した「ろ座銀河団」
Image Credit: Dark Energy Survey/DOE/FNAL/DECam/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA
Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
Source: NOIRLab
文/松村武宏