手をつなぎ踊るような2つの天体。“へび座”の相互作用銀河「Arp 91」
【▲ 相互作用銀河「Arp 91」(Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton; Acknowledgement: J. Schmidt)】
こちらは「へび座」の方向およそ1億光年先にある相互作用銀河「Arp 91」です。相互作用銀河とは、互いに重力の影響を及ぼし合っている複数の銀河のこと。相互作用銀河のなかには銀河の重力がもたらす潮汐力によって長い尾を伸ばしたような姿をしているものや、笑顔や鳥のようにも見える不思議な姿をしたものもあります。
Arp 91は相互作用する2つ銀河それぞれにも名前が付けられています。画像に向かって上の銀河は「NGC 5954」、下の銀河は「NGC 5953」と呼ばれていて、どちらも渦巻銀河に分類されています。渦巻銀河は渦巻腕を持つことが特徴ですが、上にあるNGC 5954が持つ渦巻腕の1本は、下にあるNGC 5953の方向に引っ張られているように見えます。
欧州宇宙機関(ESA)によると、Arp 91は銀河の相互作用を示す良い例だといいます。NGC 5954の渦巻腕が引き伸ばされているのは、2つの銀河が強い重力を介して相互作用しているから。この宇宙では銀河どうしの相互作用は決してめずらしいことではなく、重力相互作用は銀河の進化における重要な要素とされています。
Arp 91で起きているような渦巻銀河どうしの衝突・合体は数億年に渡るタイムスケールで進行し、やがて別のタイプの銀河である楕円銀河の形成につながると考えられています。私たちが住む天の川銀河もアンドロメダ銀河と合体して、数十億年後には1つの楕円銀河になると予想されています。
冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(DECam)」、地上の望遠鏡による掃天観測プロジェクト「スローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)」による観測データ作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚「A Dangerous Dance」として2021年10月4日付で公開されています。
関連:活動的な銀河核はブラックホールが原動力。棒渦巻銀河「NGC 5728」
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, J. Dalcanton; Acknowledgement: J. Schmidt
Source: ESA/Hubble
文/松村武宏