中国独自の宇宙ステーション建設開始 コアモジュールの打ち上げ成功 近く有人宇宙飛行も
日本時間4月29日午後12時23分、中国・海南省にある文昌衛星発射センターから中国独自の宇宙ステーション「天宮」のコアモジュール「天和」が打ち上げられました。打ち上げから約8分後、コアモジュールはロケットから分離。約1時間後には天和に取り付けられている太陽光パネルの展開も確認し、ミッションは成功しました。
中国の宇宙ステーション建設が幕を開けました。これに続いて5月に宇宙ステーションへ物資補給を行うミッション、6月には有人宇宙飛行ミッションが行われる見通しとなっています。
【▲ 文昌衛星発射センターから打ち上げられるコアモジュール「天和」を搭載した長征5Bロケット(Credit: CNSA)】
宇宙ステーション「天宮」はコアモジュール「天和」と2つの実験モジュールから構成され、T字型となります。合計すると質量70t以上の宇宙ステーションになるということです。また、運用は10年から15年を想定しています。宇宙ステーションは広く国際社会に開放し、実験などを行います。中国有人宇宙機関(CMSA)は国際連合宇宙局(UNOOSA)と共同で宇宙ステーションにおいて実施される研究機関を複数選びました。日本からは東京大学が中国の清華大学と共同で燃焼に関する実験をすることが発表されています。
関連記事:中国宇宙ステーションで国際機関による実験が選定 東京大学も参加
コアモジュールは全長16.6m、直径4.2m、重さ22.5t。これまでに中国が開発した宇宙船の中でも最大です。宇宙飛行士の長期滞在だけでなく、船外活動や宇宙科学実験ができる機能を持ち合わせます。さらに作業や睡眠、衛生、食事、医療、運動などの「エリア」を揃えており、同時に3〜6人が滞在できます。
【▲ 中国が建設を開始した宇宙ステーション「天宮」のイメージ図(Credit: CMSA)】
天宮の建設は今年から2022年にかけて実施されます。今回の打ち上げを含んだ11のミッションが予定されており、4つの輸送船ミッションと4つの有人飛行が行われる見通しです。並行して2つの実験モジュールも打ち上げられます。
天和モジュールを打ち上げたのは、「長征5B」ロケットです。全長54m、重さ849t、25tのものを運ぶ能力があります。2つの実験モジュールも長征5Bロケットで打ち上げられる見込みです。なお、長征シリーズ367回目の打ち上げとなりました。
中国の宇宙開発を行う「中国航天科技集団有限公司」(CASC)の発表によると、宇宙ステーションへ物資供給を行う補給船「天舟2号」と有人宇宙船「神舟12号」の発射準備と最終確認が行われているということです。
文昌衛星発射センターに到着した天舟2号は、5月中旬に発射予定です。長征7号ロケットで打ち上げられ宇宙ステーションへ、ランデブー・ドッキングを行います。(※1)
酒泉衛星発射センターでは、有人宇宙船「神舟12号」の発射準備と長征2Fロケットの最終組み立てが行われています。搭乗する宇宙飛行士のトレーニングも進んでいるようです。(※2)今回有人宇宙ミッションがスタートすれば、2016年10月に打ち上げられた「神舟11号」のミッション以来、5年ぶりの有人飛行となります。
Image Credit: CNSA, CMSA
Source: 国家航天局(中国語版/英語版)、中国航天科技集団公司(中国語版/英語版)、SpaceNews、Spaceflightnow
※1のSource ※2のSource
文/出口隼詩