『FACTFASHON』発表イベントでのゆりやんレトリィバァ('20年11月)

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 女芸人のゆりやんレトリィバァ(30)が話題だ。ただし、お笑いではなく、ダイエットの話題。ぽっちゃりキャラからのイメチェンで、メディアのとりあげ方も変わった。

【写真】キラキラフィルターで“女子力”アップするゆりやんレトリィバァ

ゆりやんのキャラ変に既視感?

 たとえば、

「39キロ減・ゆりやんレトリィバァ、スポブラでランニング姿を公開『たまらなく可愛い』」(スポーツ報知)

「37キロ痩せたゆりやんレトリィバァが『お尻』を鍛える理由」(J-WAVE NEWS)

 という具合だ。

 体重以外の部分については「ゆりやん」を「田中みな実」に変えても通用しそうなタイトルだが、実際、こんな記事も見かけた。

「田中みな実に変身した、ゆりやんレトリィバァを激写! 動画では大胆ポーズも披露!?」(sweet)

 ファッション誌に登場して、田中の大ヒット写真集の表紙を再現。インタビューでは、

「実際にご本人にお会いしてみたら、テレビで拝見するよりも、 もっともっと透明感があったんです……! もう、透き通っていて見えませんでした。自分もそうなりたい! と思い、今回この企画で田中みな実さんにならせていただきました。私、見えてますか……!?」

 と、大ハシャギだ。

 ただ、この姿、どこか既視感(デジャヴ)っぽいものがある。女芸人がダイエットをすることは珍しくなく、ここ数年でも、やしろ優や尼神インター・誠子、ガンバレルーヤ・よしこ、おかずクラブ・ゆいPといった面々が話題になった。しかし、痩せたことでキレイになったとは言われても、芸人としての評価上昇にはいまひとつつながっていない。

 また、ダイエットではないが、ハリセンボン・はるかが変色していた歯を白くしたり、アジアン・隅田が婚活で休んだりして、女子力アップをアピールしたことについても同じことがいえる。

 どうやら、女芸人の「キャラ変」は裏目に出やすいというか、面白いほうの変化じゃないので、武器を失うはめになりがちなのだ。ゆりやんもそうならないという保証はない。

女芸人の難しさとビジュアルの武器

 そもそも、女性のお笑いは難しいと思われがちだ。しゃべりだけならまだしも、身体を張った芸だと体力差を否めないし、恥ずかしさを脱ぎ捨てるのも男性ほどは得意でないからだ。

 これには幼少期からの経験も影響しているのだろう。男の子の場合、面白いことで人気者になれたり「モテ」につながったりするが、女の子の場合はなかなかそうはいかない。それゆえ、面白さで勝負し続けることに、男芸人は慣れているが、女芸人は慣れていないのである。

 そこで、途中からキャラ変して、人気やモテに直結しそうな「キレイ」に向かいやすいという傾向がある。実際、痩せれば話題になったりもするわけだが、女優やモデルではないため、一時的な話題で終わりやすい。

 ちなみに、男芸人にもダイエットする人はいる。古くは片岡鶴太郎や恵俊彰が痩せてキャラ変をした。ただ、鶴太郎はもともと役者志望だったし、恵は相方・石塚英彦とのビジュアル的なメリハリをつける意味でプラスに働いた。

 こうしたケースのほうが少数で、今も昔も、ぽっちゃり体型はお笑いにおける大きな武器なのだ。

 いや、お笑いだけとは限らない。日本テレビの安村直樹アナは30キロ以上痩せたが、すっきりしてイケメンになったという声とともに、心配する声もあがった。また、親しみやすさがうすれたと残念がる人もいる。デブキャラの芸人が多いのも、ぽっちゃり体型が安心して笑えることにつながるからだろう。

 女芸人たちでいま最も勢いのある3時のヒロインとぼる塾を見ても、そのあたりは一目瞭然だ。前者は3人組、後者はひとりが育休のため3人で活動中。あわせて7人中4人がぽっちゃり体型ということで、どちらの笑いも「デブキャラ」がいないと成立しない。それだけ、太っていることで笑わせられることは貴重な才能でもあるわけだ。

「VOGUE GIRL」のインタビューで「新たな目標」を聞かれたゆりやんは、

「『いつでも脱げる身体になる』ということですね。(略)『あ、ちょっと私は…』って尻込みするんやなくて『いいですよ〜』って言って、さっと脱いでさっと何でもできるような」

 と返答。体型変化についての反応については、こんな話をしている。

「ただネットとかで『これ以上痩せたら、ネタどうすんの?』って言われることはあって。もちろん太っているからこそできるネタはあるけど、別に意識して作っているわけではないし、そういう意見は気にしなくていいかと思ってます」

 たしかに、本業も順調なようで、今年の『R-1グランプリ』(フジテレビ系)では通算5回目の決勝進出が決定。3月7日に行なわれる決勝の模様は、生中継される。

 過去最高成績が準優勝ということから「今年こそ絶対に優勝します」と宣言したゆりやん。はたして、どんな笑いを見せてくれるだろうか。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。