これぞ戦跡の有効活用だ... 温泉への通路に「防空壕」を使っている旅館が、静岡にあるらしい
静岡県のとある旅館には、非常に珍しい温泉があるらしい。一体、どう珍しいのか。
その温泉が、こちらだ。
防空壕......?(以下、画像は葉葉波@hahaha3さん提供)
看板に書かれているのは、
「防空壕五右衛門風呂」
という文字。「防空壕」と「五右衛門風呂」という、何やら聞きなれない組み合わせの名前をしたこちらの温泉が、ツイッターで注目を集めている。
この旅館すごいな......大戦時に作られた陸軍の防空壕が温泉までの通路に使われてる...次伊東来たときここに泊まろう pic.twitter.com/DXhuhiA99R
— 葉葉波 新刊メロン委託中 (@hahaha3) November 7, 2020
話題になっているのは、2020年11月7日、ツイッターユーザーの葉葉波(@hahaha3)さんの投稿だ。
なんと、温泉までの通路に、第二次世界大戦時に実際に日本の陸軍が使用していたという防空壕を使っているというのだ。温泉があるのは、静岡県伊東市の旅館「大東館」。写真は、7日に葉葉波さんが同旅館に立ち寄った時に撮影したものだという。
この投稿にツイッター上では、
「これぞ軍事施設の平和利用だな」
「防空壕が温泉への通路になっているなんてある意味戦跡の有効活用だからいいなぁ」
「旅館に泊まりながら戦跡探訪もできるなんて凄い。ぜひ泊りに行かなければ」
といった声が寄せられている。
また、同じ旅館に宿泊したと思われるユーザーからは、
「夜中に行くとちょっとホラー感あって良かった」
という感想もあった。
会議室や貯蔵庫として使われていた
防空壕の中にある温泉とは、たしかに珍しい。Jタウンネット編集部は11月10日、大東館に取材し詳しい話を聞いた。取材に応じたフロントスタッフの伊藤晴美さんはこの防空壕について、
「第二次世界大戦時に、日本陸軍の部隊が実際に会議室や物資の貯蔵庫として使っていたとされています」
と説明した。また、大東館の公式サイトでは防空壕について、
「第2次世界大戦が終盤を迎えていた昭和18年頃、陸軍第22工兵部隊(暁部隊三中隊)が敵の空襲や上陸に備えて、国民の避難をはじめ、弾薬や物資の貯蔵を目的に、熱海市網代から伊東市内に約30ヶ所掘られたうちの1つであります。
総延長は300メートルあり、八方に出入口が設けられて、一部にはコンクリートで固められた通路と会議のできる部屋もあり、本部機能をもった防空壕とされております。現在の部分は入り口の一部にあたります」
と記載されていた。
本物の防空壕だった
神秘的な雰囲気が漂う
それにしても、どうして防空壕が温泉までの通路になっているのだろうか?
伊藤さんは「防空壕五右衛門風呂」ができた経緯について、
「3年ほど前に旅館のオーナーが変わってしまい、資料もあまり残っていないため詳しい年月日などは不明ですが、以前に大東館の新館を建てる際にこの防空壕が発見され、当時のスタッフがそのまま温泉までの通路として活用することを決めたようです」
と話した。
かつて使われた戦跡を見物しながら、温かい温泉で疲れを癒す。温泉好きの人にとっても歴史好きの人にとっても、「防空壕五右衛門風呂」は恰好の観光スポットになるのではないだろうか。