80年代の人気ドラマ「脳みそスパゲッティ」に「のろまな亀」、“衝撃の名ゼリフ”たち
笑っちゃうような名セリフ満載!
“大映ドラマ”とは、大映テレビが制作したドラマのこと。'70〜'80年代に荒唐無稽な設定と過剰な演出で人気を集めたが、'90年代に入るとトレンディードラマが主流に。しかしここにきて、『M〜愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)や『半沢直樹』(TBS系)に大映ドラマを思い出した視聴者は多い。
【写真】リーゼントヘアがナイスな松村雄基、可愛さあふれる伊藤かずえ『乳姉妹』
「約束のところへ行けない、誰かに会えなくなる、といった問題や試練がありつつも、毎回それをクリアする楽しさがあります。セリフもトンチキなものばかりではなく、人として生きるための根源的な問いかけもあるので、面白いだけではなく“感動”も味わえるんです」
と、大映ドラマの魅力を語ってくれるのは、週刊女性ドラマ座談会メンバーでライターの成田全さん。続けて同メンバーでドラァグクイーンのエスムラルダさんも、
「やはり大映ドラマって少年院、スポ根、大富豪と超貧乏、多重人格など設定自体が非日常だからこそ、非日常的な名ゼリフがちゃんと生きるんですよね」
大映ドラマはアイドルの登竜門ともいわれた。デビューしたばかりの堀ちえみ(スチュワーデス物語、花嫁衣裳は誰が着る、スタア誕生)、小泉今日子(少女に何が起ったか)など若いアイドルが主役を務めることが多かった。
「新人アイドルのつたない芝居でも成立したのは、ベテラン俳優たちがしっかりと脇を固めていたから。さらにTBS系は芥川隆行、フジテレビ系は来宮良子がナレーションを担当し、心情や流れをしっかりと補強してくれる。どんな無理やりな展開やセリフが繰り出されても物語に嘘っぽさが生まれず、安心して見られる作りになっています」(成田さん)
主題歌も大映ドラマの魅力のひとつ。TBS系は麻倉未稀、フジテレビ系は椎名恵が多く担当した大映主題歌。ほかにも小比類巻かほる、葛城ユキ、未唯など実力派ぞろい。
「電子ドラムがけたたましく鳴り響く『スクール☆ウォーズ』の主題歌『ヒーロー』のように、イントロが印象的だったり、ロック系の曲のインパクトが強烈で、それが鳴るだけで血沸き肉躍る感が醸し出される。毎回、歌をバックに物語の概要がナレーションで説明されるのも大映ドラマの特徴ですね」(成田さん)
そして半沢直樹同様、最終回では視聴者をスカッとさせてくれるのだ。
「『スクール☆ウォーズ』は花園出場、『ポニーテール』はバンドとして成功するといったテーマが最後までブレず、最終回では苦労が報われたり、夢がかなうというカタルシスがたまりません!」(エスムラルダさん)
多くの笑いと感動を与えてくれる“大映ドラマ沼”にどっぷりハマりませんか?
『スクール☆ウォーズ〜泣き虫先生の7年戦争〜』(TBS系)'84年〜'85年
◇あらすじ◇高校ラグビー界の無名のチームが、荒廃の中から健全な精神を培い、数年で全国優勝を成し遂げた奇跡を描く
●脳腫瘍で自暴自棄のイソップ(高野浩和)はトルエン漬けに。しかし滝沢(山下)に諭され、不良とひと悶着あった後に更生を誓う
「僕、何よりもトルエンが気持ちよくなってしまっているんです。僕、もうどうだっていいんです!」
●光男(宮田恭男)と滝沢(山下)をしごく、悪い先輩を白馬で蹴散らす圭子(伊藤)
「馬上から失礼します」
●ロックバンド『黒騎士』のボーカル・名村直(鶴見辰吾)が自らバンドの方向性を説明するも意味不明!
「俺たちのロックはよ、怒りと悔しさを涙のスパイスで味つけした五目そばなんだよ! わかるだろ? いや、わかんなくてもいいけどさ!」
『少女に何が起ったか』(TBS系)'85年
◇あらすじ◇北海道の漁村で育った少女(小泉)が母の死を機に、自分の出生の秘密を確かめるため上京。天才ピアニストであった亡き父の娘である証を求めてピアニストを目指す。
●祖父であるはずの東学長(松村)に「憎んでいるのか?」と聞かれた雪(小泉)のトンチキな返し!
「子どもの時から、憎いジジイ、憎いあん畜生だと思ってます!」
●勝手にドレスを着られて怒り心頭の美津子(賀来千香子)が雪の服を脱がせようとしながらの捨てゼリフ
「ニセモノの泥棒猫!」
●毎晩12時に現れては雪を捜査していた川村刑事(石立)。さんざんひどいことをしてきたが最終回にはいい人に
「もう夜中の12時には会えない。ちょっと寂しいが、元気でな。薄汚ねぇシンデレラ……。いや、とってもかわいいシンデレラ」
●コンクールの練習をしたいのに、鍵をかけられてピアノが弾けない雪の怒りが爆発!
「ダメだ! 紙の鍵盤だと、指が沈まないし、ますます滑って転んじゃう! 16分音符がまるで叩けない! 本物のピアノが弾きたい! ピアノが弾きたい!」
●最終回、田辺百合子(高木美保)率いるお嬢様軍団と、雪が筆頭格の特待生軍団が和解。お嬢様たちの「野良猫ガッツ」に対し、お株を奪われた特待生側が「エレガント、お上品」と返す地獄のようなコール合戦が続く中、雪と大津(辰巳)が見つめ合ってドラマ終了!
「みなさん、私たち、あなた方特待生、野良猫の強さを見習うことにしたの」
「野良猫……野良猫ガッツで頑張ろう!」
「エレガント! お上品!」
『不良少女とよばれて』(TBS系列)'84年
◇あらすじ◇原笙子の実録『不良少女とよばれて』をドラマ化。「あなたさえ生まれていなければ」という言葉から非行に走り、傷つき荒れ狂った日々を送る少女(いとう)。彼女がひとりの青年の愛によって目覚め、舞楽の一人者に成長するまでの姿を綴る。
●少年院へ達也(国広)に舞楽の稽古に来てもらいたい笙子(いとう)にモナリザ(伊藤)が放った珍妙なたとえ
「恋は壊れやすいのよ、ビタミンCのようにね」
●麻里(比企)の死を留置場で知った朝男。ヘラヘラする同房のおっさんを張り倒して投げつけたセリフ
「バカ野郎! 人が死んだらよー、世界中はそのひとりのために泣くべきだぜ!」
●タイマンをする笙子(いとう)とモナリザ(伊藤)のセリフ
「たとえ死んでも恨みっこなしだよ?」
「ああ。生き残ったほうがくたばったやつの骨壺を蹴飛ばすまでさ」
『ポニーテールはふり向かない』(TBS系)'85年〜'86年
◇あらすじ◇3歳で母と別れた未記(伊藤)は非行に走り何度も補導され父から禁じられていたドラムスティックで4人のヤクザを骨折させ女子少年院に、18歳となった未記は父の死を知り不良の世界に戻ろうとするがー。ライブハウスのボーイ晃(松村)と医大生のプレイボーイ邦男(鶴見)と世界に通用するロックバンドを作り上げようとする。
●ケント・ギルバートの弾いたピアノをほめた未記(伊藤)にケチをつける田丸晃(松村)
「脳みそスパゲティになっちゃってるのか?」
●自慢げに言い放つ脇田(野々村)だが、この数話後に……
「俺はこのハチミツみたいな甘いマスクとボイスで、ライブでの人気はちょっとしたもんだった」
●交際相手の実家のヤクザたちにひどい目に
「顔だけは! 顔だけは殴らないでくれ!」
●しつこくつきまとう元彼女で未記(伊藤)の異父妹に邦男(鶴見)が言った暗喩?
「僕は君にはもう蚊の死骸ほどの愛情も持ってない」
『ヤヌスの鏡』(フジテレビ系)'85年〜'86年
◇あらすじ◇普段はまじめな優等生の裕美(杉浦)が時に凶暴な不良少女ユミに豹変してしまう。2重人格の女子高生を描いた青春ドラマ。
●トルエン狂いの子に涼子(大沢)が放った名ゼリフ
「ゆがんだ街がまっすぐ見えるとでも思ってんのかよ!」
●大沼ユミ(杉浦)が泣いている祖母(初井言榮)に放つパンチの効いた名ゼリフ
「ババアが泣けば足元からウジがわくっていうじゃないか!」
●祖母(初井)がたびたび裕美(杉浦)にかけるセリフ
「お前には淫蕩な血が流れておる」
『スチュワーデス物語』(TBS系)'83年
◇あらすじ◇訓練生(堀)と教官(風間)を中心にしたラブストーリー。教官のハートを射止めるまでさまざまな試練がヒロインをおそう。
●失敗ばかりの千秋(堀)がことあるごとに発するセリフ
「私はドジでのろまな亀です!」
●教官(風間)への思いを募らせる千秋(堀)を励まそうとする練習生仲間たち。千秋を囲み拳を上げながら「やるっきゃない!」をエンドレスリピート!
「やるっきゃない! やるっきゃない! やるっきゃない!」
『乳姉妹』(TBS系)'85年
◇あらすじ◇18年前、時を同じくして生まれた2人の少女が入れ替わってしまう。一方は貧しい漁村の漁師の娘(渡辺)、一方は大財閥のひとり娘(伊藤)として育てられ、やがて2人は運命的な出会いを果たすが……。
●しのぶ(渡辺)と過去に会ったことがあると友人に言われた千鶴子(伊藤)お嬢様がひとこと。本当は乳姉妹なのに……
「ゆきずりの人の顔など私はいちいち憶えてはいないわ」
●楽し気に踊る父親としのぶ(渡辺)の姿が脳裏に浮かんだ千鶴子(伊藤)は日記にバツ印を書きなぐる。
「嫉妬は、もっとも非生産的な情念だ」
●川の中まで追いかけてくる路男(松村)に対して千鶴子(伊藤)が「あなた、何者よ?」と尋ねた返しがこれ。海鳴りとはなんなのかは劇中で最後まで明かされなかった。
「俺は海鳴りだ!!」
(取材・文/江藤エマ)