【冷え性・閉経後は要注意】1回3分のストレッチで“血管の老化”を食い止める!
「冷え性の方は、そうでない人に比べて、血管年齢がかなり老化していることがわかっています」というのは運動生理学の専門家である家光素行さん。
閉経後は要注意! 老化が進行
いままで冷え性は大きな病気ではなく、放っておいても大丈夫という一般認識があったが、家光さんは冷え性と血管の硬さについて科学的な実験を行った。すると、冷え性の人は、実年齢よりも血管老化が進行していることがわかったのだ。
「血管老化とは血管が硬い状態をいいます。そのため、血液の流れが悪くなり、動脈硬化といった疾患のリスクが上がったり、免疫機能にも悪影響が出てくると考えられます」
冷えを感じているとき、身体は体温を逃がさないようにと血管を縮めている状態にある。すると、血液にのって身体のすみずみに運ばれるはずの酸素や栄養素などが十分に運ばれなくなってしまう。ウイルスや病気と闘ってくれる白血球も行き渡らず、免疫力が下がってしまうのだ。
「特に閉経後の女性は要注意です。血管の保護作用があるエストロゲンが、閉経後にはガクンと減ってしまうので、血管が硬くなり、老化が進行してしまうのです」
手足を触ってみて、冷たいと感じたら、冷え性を疑ってみてほしい。
「例えば、体温が36度で、さほど低くなくても、足先の温度を測ると25度、その差10度ということもあります」
身体の中心部は重要な臓器が集中しているので、体温を一定に保とうと機能するが、末端部には血液が行き渡りにくくなり、温度が下がりやすくなるのだ。
「改善策としておすすめしたいのがストレッチです。特に下半身を重点的に行う“血管伸ばしストレッチ”を実践してみてください」
これは重力によって下半身に滞りがちな血液の流れを促し、特に末端の血流を効果的に改善するものだ。太もも、ひざ裏、ふくらはぎの3か所をストレッチするもので、トータルで行っても3分程度ですむという手軽さがうれしい。
「ただし効果は一時的なので、1日に2回ほど実行し、継続してやるのが大切です。続けた方は平均して末端の体温が2度アップしました」
やる際には、ストレッチさせる血管を意識しつつ身体を伸ばすのがポイント。伸ばす場所が違うと、効率よく血管に働きかけられなくなるからだ。またストレッチ時には呼吸を止めないよう注意を。
「伸ばしたときに痛いと感じるのはダメ。伸ばしているのかわからないというのは負荷が足りない状態。イタ気持ちいい、くらいの負荷がベストです」
まずは朝晩、テレビを見ながらでもOKなので、トライしてみてほしい。
【当てはまれば血管がヤバい! 「冷え性」チェックリスト】
■ほかの人に比べて寒がりだと思う
■足が冷えるので夏でも厚い靴下をはくことがある
■冷房の効いている部屋は身体が冷えてつらい
■冬には電気毛布や電気敷布を使っている
■手足がほかの人より冷たいほうだと思う
■特に冬は身体を丸くして眠るクセがある
■寒い日にはトイレが近くなる
■体温が36.0度より上に上がらない
■身体が急に暑くなったり、寒くなったりする
■しもやけができやすい
※2つ以上当てはまる人は冷え性の疑いあり。血管ストレッチで温活をスタート。
血管伸ばしストレッチのやり方
トータル3分程度。できれば、朝晩2回を毎日やるのがおすすめです。
■その1 太ももの血管伸ばし
そけい部にある大腿動脈はもっとも太い血管。しっかり伸ばすことで、血管がしなやかになる。太ももと足の付け根を伸ばすように行って。
1. 正座をして両手を前につく
正座をして、軽くおじぎをするように両手を前につく。両手の幅は肩幅程度に広げ、体重をかけすぎないこと。
2. 片足を伸ばして足の付け根を刺激
1の状態のまま片方の足を伸ばして後ろに引き、足の甲を床につける。顔を上げたまま、30秒キープ。左右各1回ずつ行う。
■その2 ひざ裏の血管伸ばし
ひざ裏のくぼみにある膝窩(しっか)動脈をストレッチ。ひざに痛みがある場合は、無理をせずに椅子に腰かけてやってもOK。
1. 片足を1歩前に出す
足先を前に向けてまっすぐ立ち、片足を軽く前へ出す。前に出した1歩は、肩幅の広さが目安。
2. 前に出した足に両手を置く
上体を倒しながら、前に出した足のひざに両手を重ねて置く。このとき、両ひざは少し曲がっていてもOK。
3. 後ろ足のひざを曲げ、重心を落とす
後ろ足のひざを曲げ、腰を引き、前足のひざ裏を伸ばす。両手で押しながら30秒キープ。反対側の足も同様に。
■その3 ふくらはぎの血管伸ばし
ふくらはぎにある腓腹(ひふく)筋や後脛骨(こうけいこつ)動脈に働きかけるストレッチ。身体を正面に倒すときは、負荷が大きいのでゆっくり行って。
1. 正座で座る
前のスペースを少し空けて正座をする。正座ができない人は、ひざとひざの間を広げて座ったり、2のポーズから始めてもよい。
2. 片ひざを立てて両手を置く
足首とすねが直角になるよう、片足のひざを立てて、もう一方のひざを軽く外側に開く。立てているひざに両手を置く。
3. そのまま状態を前に倒す
立てたひざに胸を近づけるよう、徐々に上体を前に倒す。腰は浮いてもいいので、そのまま30秒キープ。反対側の足も同様に。
【ポイント】
★慣れてきたら、それぞれのストレッチを左右2回ずつに増やす。
★伸ばすときは息を止めず、イタ気持ちいいくらいまで。
★ひざや関節などに痛みのある方、持病のある方は、医師に相談のうえ行ってください。痛みが出たらすぐに中止を。転倒や滑るおそれがある場所では行わないでください。
(取材・文/樫野早苗)
《PROFILE》
家光素行さん ◎立命館大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授。日本体力医学会評議員、日本運動生理学会評議員などを務める。心血管疾患、糖尿病、肥満などにおける運動効果について多くの論文を発表している。