日本酒「白扇」、焼酎「彩の響」などの旧製造元 事業は新会社が継続中

 藤崎(株)<TDB企業コード:270061491、旧:(株)藤崎総兵衛商店、資本金6400万円、埼玉県大里郡寄居町寄居925-2、代表清算人井口敦氏>は、9月26日にさいたま地裁熊谷支部より特別清算開始命令を受けていたことがこのほど判明した。

 当社は、1949年(昭和24年)8月設立の酒類等製造販売業者。創業は江戸時代中期の1728年(享保13年)で、業暦290年を超える当地老舗の蔵元として業界内では高い知名度を有していた。近年では、日本酒をはじめ焼酎などの酒類、また蔵元としての技術を生かし奈良漬の製造も行うほか、大手ビールメーカーの特約店として酒類を主体に食料品の仕入れ販売も行っていた。秩父山系の伏流水を仕込み水とした数多くの日本酒を醸造。看板銘柄の「白扇」を中心に「氏邦」「扇の舞」などの日本酒、また「彩の響」「琥珀の響」といった焼酎も製造。かつては県北地域に複数の営業拠点を開設するなどして徐々に業容を拡大し、ピーク時の92年9月期には年売上高約140億円を計上していた。

 しかし、バブル崩壊後の個人消費の低迷や若者をはじめとした飲酒敬遠の傾向など、業界環境の悪化が当社の業況にも大きく影響。ピーク時から10年後の2002年9月期は年売上高が約82億5000万円まで落ち込んでいた。このため、拠点の閉鎖や所有不動産の売却など各種の合理化を進めていたものの、以後は酒気帯び運転罰則強化による酒類需要の減退、さらにはアルコール飲料の嗜好・品種の多様化傾向が強まるなど、日本酒業界を取り巻く環境はさらに悪化。当社の売り上げも減少に歯止めがかからず、2012年9月期は年売上高が約22億円までダウン。収益面でも赤字となるほか、年商を上回る借入金の利払い負担が重く資金繰りも悪化していた。

 こうしたなか、抜本的な経営再建を目的に事業譲渡による再生を決断。2013年以降、複数の企業に酒類卸売事業や酒造事業を承継させるほか、会社分割なども行い、当社はそれまでの(株)藤崎総兵衛商店から藤崎(株)に商号を変更。清算手続きを進めていた。

 負債は推定30億円でさらに膨らむ見込み。

 なお、事業は新・(株)藤崎総兵衛商店ほか各々の企業が通常通り続けている。

※商号の「崎」「総」は、それぞれ立つ「崎」、旧字体の「総」です。