「身体能力がえげつない」 マルセイユ酒井宏樹が痛感、フランスで日本人が苦戦する理由
【インタビュー第2回】ハノーファー時代の経験と比較 「間合いがドイツ、フランスで全く違う」
日本代表DF酒井宏樹は、フランスの名門マルセイユでプレーして4シーズン目を迎えた。
2012年から欧州サッカーへの挑戦をスタートさせている酒井は、以前プレーしたドイツ・ブンデスリーガと現在戦うリーグ・アンの違いに言及。それは日本人選手が、フランスで苦戦する遠因にもなっていることを感じさせた。
酒井は03年の中学入学と同時に柏レイソルU-15に加入。U-18を経て09年にトップ昇格を勝ち取った。そして3年半のプレーを経て、12年夏にドイツのハノーファーへ移籍。4シーズンプレーした後、マルセイユへ移籍した。
ブンデスリーガとリーグ・アン。欧州5大リーグに数えられる二つのリーグの違いについて、酒井は端的な言葉で指摘する。
「間合いがドイツ、フランスで全く違う」
割合として、欧州でもゲルマン民族系の白人選手が多いブンデスリーガと、アフリカ系移民を含む黒人選手が多く含まれるフランスでは、その特性がマッチアップした時の違いとして表れるのだという。
「(欧州での経験でプレーの)幅は広がりましたね。免疫というか、いろいろなアタッカーに対して。白人、黒人では間合いが全く違うし、日本人、アジアとも全く違う。ディフェンダーにとっては良かったと思いますね。僕のディフェンスはどれが正解かその人次第ですが、なるべく向こうの長所を出さないように考えます」
過去にフランスで活躍した日本人というと、まずは元日本代表MF松井大輔(元ル・マンほか/現・横浜FC)の名前が挙がる。それに加え、同DF中田浩二(元マルセイユ)や同MF廣山望(元モンペリエ)、同MF梅崎司(元グルノーブル/現・湘南ベルマーレ)といった選手たちもフランスでのプレー経験を持つが、ドイツのドルトムントでリーグ連覇を達成した日本代表MF香川真司(現サラゴサ)や、イタリア・セリエAの名門ローマで優勝を経験した元日本代表MF中田英寿のように、センセーショナルな活躍をした日本人選手という意味では、なかなか名前を挙げるのが難しい。現在は酒井のほかに日本代表DF昌子源(トゥールーズ)と同GK川島永嗣(ストラスブール)もプレーしているが、日本人選手がフランスで苦戦する理由を酒井は次のように語っている。
「“よーい、ドン”で絶対に勝てないのは、たまに切なくなりますね」
「身体能力がえげつない。日本人がどれだけ身体能力がないのかと、僕を含め日々感じていますよ。“よーい、ドン”で絶対に勝てないのは、たまに切なくなりますね。それでも松井さんたちが切り拓いてくれた道なので、僕も(昌子)源も(川島)永嗣さんもそれを継ぐことができるように、後の選手に残せるように頑張りたいですね」
酒井がこう話したように、全く同じ条件でプレーをスタートすると身体能力の差で相手に上回られてしまうというのは、日本人選手にとって非常に厳しい環境だと言える。準備段階やプレーの予測、読みといった部分で差を埋めていくしかないが、試合のなかではどうしてもその身体能力が強調される場面がある。そうした事実は、フランスのチームに加入するか否かの時点でのクラブの評価、加入後のポジション争いにも影響を与えるのだろう。
また、「発音は本当に難しいですね」と酒井が話すフランス語と日本語の違いもまた、その難易度を高めていると言えるのかもしれない。欧州各国へ選手の“輸出国”となりつつある日本だが、その第一線で戦い続ける酒井の言葉からは、フランスがいまだハードルの高い国であることが示されたと言えるだろう。(Football ZONE web編集部)