<慶應幼稚舎合格談>保護者が幼稚舎出身でも必ず受かるわけではない現実

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【小学校受験のお作法2.0】親子力を合わせ、厳しいお受験を乗り越えるためにも、先人たちのリアルな合格体験談はあらかじめしっかりと知っておきたいもの。しかし、幼児教室などで登壇する合格者の経験談は、幼児教室の先生たちのフィルターがかかった内容になりがち。実際にはいろいろな教室に行っていたのに「わが家は本当にこちらの教室のみでした」とコメントされることもあるそう。そこでここでは、お受験コンシェルジュ&戦略プランナーのいとうゆりこさんが、合格者のお母様たちにインタビューを実施。合格するまでの道のり、そして入学後の様子など“生”の声を伝えてくれます。あくまでもひとつの参考とされてみてくださいね。

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■慶應幼稚舎に合格した男の子の場合

 今回は、世間の方々がいちばん気になるところであろう、慶應幼稚舎に合格した男の子のお母様にお話を伺いまいした。幼稚舎のつながり、そして“縁故”ははたしてあるのでしょうか?

ご家族のスペック

・お父様:慶應幼稚舎出身、某ファミリー企業
・お母様:大卒専業主婦
・お子様:0歳から有名幼児教室に通い、年少からは幼稚舎専門のお教室

――準備していたお稽古を教えてください。

「幼稚舎専門の個人の教室、体操教室のみです。個人の先生は、主人が幼稚舎受験のときにもお世話になっていた先生です。もちろん、代々ご出身であるか、あるいはご紹介がないと入会できません。

 お教室では、絵画や工作、行動観察、筆記試験対策用として言葉の表現や一般常識などもしっかり見ていただいていたので、先生にすべてを委ね、私は送迎するのみでした」

――幼稚舎受験のために“活動”されたことはありますか?

「主人と主人の両親がいろいろとしていたと思います。具体的にはよくわかりませんが、同級生や先生方とよく飲みには行っていましたね。

 とはいえ、受験の前だからということではなく、ほぼ毎週末、昔からよく飲みに行っているんです。スポーツやキャンプや海、ライブ、いつも幼稚舎仲間と一緒にいるのが、世間でいう“活動”にあたるのでしょうかね?」

――その活動にお母様はご一緒されないのですか?

「家族連れ旅行のときはもちろん一緒ですが、男同士でもよくどこか旅行に行っているので、毎回は呼ばれませんね。とにかく濃い付き合いですよ。小学校1年生から半世紀近く一緒なわけですから。

 特に男子は、幼稚舎→普通部→塾高→大学と、進路が変わらないんですよ。それもあって、部活動の仲間か、この幼稚舎仲間、常にどちらかと一緒ですね。

 会社の仲間と遊んでいるなんて、ほとんど聞いたことがありません」

――幼稚舎の同窓会が“お受験の前哨戦”だと伺いましたが?

「たしかに同窓会で久しぶりに会う先生や仲間もいるみたいですが、先ほどお話ししましたように、何しろ普段からいつも一緒ですので(笑)。

 ただ同窓会は、息子が幼稚舎のなかに入れる数少ない機会ですので、毎年連れて行っていますね。遊具が本当に充実しているんです。パパも小さいときから遊んでいたとなると、息子も“ここは特別な場所なんだ”と認識しますので、毎年楽しみにしていましたね」

――こんなことを伺うのも失礼かと存じますが、ご寄付のようなことはされましたか?

「そのあたりは聞いていないです。同窓会や連合三田会などで行われるチケット抽選の際に、景品を出したりはしていたようですが。ただ受験のためというより、長年ずっとやっているみたいです」

親が出身でも100%合格はない

――ご主人が出身とはいえ、100%合格が決まっているわけではないですよね?

「もちろん、まったくわかりません。実はある著名な方が、2学期に入った時点ですでに“合格”を手にしたと発言なさったんです。さすがに幼稚園でザワつきましたね。そして実際その言葉どおり合格されました。わが家はネットを開くまで合否が本当にわかりませんでしたし、念のため他校も受験しました」

――幼稚舎以外、どちらを受験しましたか?

「桐蔭、学習院、立教です」

――結果はいかがでしたか?

「桐蔭以外は合格しました。桐蔭は10月が試験なのですが、自宅から遠かったこともあり、乗り換えのときに電車が遅延してホームで少し待ったんですね。そこで子どものモチベーションが下がってしまい、駅に到着した時点で帰りたいと言いだし……。面接では何も答えないというお粗末な状況でしたね。練習のつもりだったのですが、やはり不合格からのスタートというのは最初の試練になりました。

 本人にも“幼稚舎がダメだったら行く学校ないんだからね”と言い聞かせ、立教と学習院に挑みました。その結果、2週間でヤル気スイッチも切り替えることができ、幼稚舎本番前にマルを得られたことで自信にもなりました」

――複数合格した場合の手続きにかかるお金事情について教えていただけますか?

「学習院の入学手続きには、入学金と施設維持費の合計60万円を納めました。入学辞退をすると、施設維持費は返納されますので、30万円だけ捨てることになりますね。

 幼稚舎の場合は、手続きのときに入学金と1年生の学費を全額納付します。約150万円でした。辞退する場合、150万を捨てることになるのは痛いですよね。まあ辞退する方なんていないと思いますが。

 ちなみに、慶應の横浜初等部にも合格してそこに進学する場合のみ、この幼稚舎の150万円は横浜初等部にスライド手続きができます。横浜初等部のほうが30万円ほど高いので、追加分30万円を納付すればいいみたいです」

慶應幼稚舎、根強い都市伝説

 かつては1億ともいわれていた幼稚舎の「事前合格証」も、とある有名人の双子のお子様が3億に値上げしてしまい、以後、3億がベースになってしまったという“ウワサ”が園内をザワつかせていましたが、どのような縁故があったとしても、当日の試験がすべてだと思います。

 昨年は東京医科大学の裏口入学のニュース、今年3月には青山学院の理事長と院長が裏口入学に関与したとのニュースも報道されたことですし、本年度は特に“縁故”は皆無になると思って挑んだほうがよさそうです。

<著者プロフィール>
いとうゆりこ◎お受験コンシェルジュ&戦略プランナー。自身の経験から美容や健康・芸能・東京に関するマネー情報まで幅広い記事を各媒体で執筆中。いとうゆりこ受験情報公式サイトは、https://itoyuriko.studio.design