大切なのはこれから、である。

　５月17日に行われたＪ１リーグの浦和対湘南戦で、大変な誤審があった。湘南の杉岡のシュートが決まったにもかかわらず、山本雄大主審もふたりの副審も、第4の審判員も得点を認めなかった。

　微妙な一撃ではない。はっきりとゴールラインを割っていた。言い訳の余地はない。なぜ認められなかったのかが、いまだに不思議なぐらいだ。

　３対２で湘南が勝利したことに、誰よりも安堵したのは4人の審判団だったに違いない。チョウ・キジェ監督のチームが驚くべき粘りで勝利をつかんだことで「誤審があった」というだけで済んだ。しかし、湘南が負けていたら、誤審が直接的な不利益につながってしまった。勝点３が足りずに優勝を逃した、ＡＣＬ出場を逃した、ということになったら、Ｊリーグは湘南にどんな説明をしたのだろう。

　山本主審だけでなく審判団全員には、速やかな処分が課せられるべきだ。Ｊリーグは審判の数に余裕があるわけではないと聞くが、今シーズンいっぱいは担当しないことになっても、個人的に違和感はない。１、２か月では短い気がする。

　今回のケースは明らかな誤審だが、微妙なジャッジは週末ごとに積み上がっている。すでに不利益を被っているチームもある。判定の確度をあげるためにも、何らかの対策を講じるべきではないか。

　ＶＡＲやゴールラインテクノロジーを導入すれば話は早いが、すぐにでもできるのは審判の増加だ。ゴールラインを割ったかどうかを専門に確認する審判を、両ゴールにひとりずつ立たせることはできないだろうか。

　あるいは、ＶＡＲを簡易的にしたものでもいい。映像はすでにあるのだ。ゴールラインを割ったのかどうか、ハンドがあったのかどうかといったことは、誰でも確認できる。ＶＡＲという仕組みにこだわることなく、映像を活用する方法を考えていいと思う。

　誤審や微妙な判定が起こるたびに、日本人の審判のレベルが疑問視される。「レベルが低い」との指摘が勢いを増す。

　世界的にみて高い、とは言わない。しかし、低いとも思わない。アジアの各種大会では日本人の主審や副審が試合を担当し、一定の評価を獲得している。

　審判のモチベーションも考えたい。

　彼らは主役になるはずのない存在だ。ミスをすれば取り上げられるのが必然だとしても、少しばかり気の毒である。いいジャッジが分かりやすく讃えられる環境も、レベルアップに欠かせないと思うのだ。