介護士は不足しているにもかかわらず、賃金が上昇しづらい状況にあります(写真はイメージです) Photo:PIXTA

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介護士が不足している。介護労働実態調査(平成29年度)によると、介護職員に「不足感がある」と答えた事業者は66.6%に上り、4年連続で悪化しているのだ。そこで政府は、外国人労働者を受け入れて介護士不足に対応しようとしているが、その前に改善すべきなのは日本人介護士の待遇だ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

労働力不足の原因は
低すぎる賃金

 労働力不足という言葉にはネガティブな語感があるが、経営者にとって困ったことでも、労働者には素晴らしいことである。需要が供給を上回っているのだから、労働力の価格である賃金の上昇が期待できるからだ。

 そもそも経済学は「需要と供給が一致するように価格が決まる」と教えている。これを「均衡価格」と呼ぶ。企業が均衡価格を提示して求人広告を出すならば、定義上、労働力の売り手である労働者を確保できるはずである。

 つまり、企業がいつまでも労働力不足に悩んでいるのは、企業が求人広告で提示している賃金が低すぎるからである。

均衡価格を下回るのは明らかなのに
賃上げできない「介護士」

 先月の拙稿(「労働力不足を解消するには「最低賃金」を大胆に引き上げるべきだ」)では、人々が持っている賃金に関する情報が不十分であるが故に労働力不足の問題が生じているのだから、政府が最低賃金を引き上げることで問題を解決すべきだ、と主張した。

 企業の中には、自分の提示している賃金が均衡価格より低いことを知らずに「求人広告が足りない」と考えて広告を出し続けているところがあるかもしれない。労働者の中にも、自分の時給が均衡価格を下回っていると知らずに働く人がいるかもしれない。そうした人々を最低賃金の引き上げで救おう、というのである。

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