新しい元号が発表された。「令和」が施行される5月１日まで、「平成」を振り返る企画が様々なメディアで展開されていくのだろう。

　サッカーを含む多くのスポーツは、元号よりも西暦で語られることが多い。もっと言えば「西暦」＋「場所」だろうか。98年の冬季五輪と言えば、長野が思い出される。同年のサッカーＷ杯ならフランスだ。「いつ」だけでなく「どこで」もが、スポーツでは記憶を辿るフックになっていくものだ。

　日本サッカーにとっての平成は、転換期と位置付けることができるだろう。きっかけとなったのはもちろん、１９９３年のＪリーグ開幕である。前年に日本代表初の外国人監督としてハンス・オフトが就任したのも、国内リーグのプロ化を見据えたものだった。このオランダ人監督のもとで日本代表が競争力を一気に高めたことで、Ｊリーグは爆発的な勢いを得ることができた。
　
　93年には実はもうひとつ、日本サッカーにとって重要なトピックがある。Ｕ−17ワールドカップの開催だ。
　
　当時はまだＵ−17世界選手権と呼ばれていた大会のホストとして、日本は国内合宿と海外遠征を繰り返した。世界大会で結果を残すことを前提とした強化方法が、手探りながらここから始まったのである。
　
　ベスト８まで勝ち上がったチームからは、中田英寿、松田直樹、宮本恒靖、戸田和幸がフル代表としてワールドカップに出場することとなる。フル代表まで上り詰めることはできなかったが、Ｊリーグで長くプレーした選手も少なくない。このタイミングでは世界と遭遇できなかったものの、のちに世代別代表やフル代表に招集された選手や、Ｊリーグで実績を残した選手もいる。自国開催の世界大会へ向けて世代全体を強化した成果が、90年代後半のＪリーグと代表チームを充実させていったのである。
　
　95年のＵ−20ワールドカップ出場も、忘れてはいけないトピックである。79年以来8大会ぶり２度目の出場となったが、アジア予選を突破しての出場はこれが初めてだった。

　もうひとつ付け加えておけば、92年のアジアユース選手権も大きな意味を持つ。西野朗監督のもとで12年ぶりにアジア３位に食い込んだチームの戦いぶりが、94年大会のアジア予選突破を後押ししたのは間違いない。いまでは当たり前となっている予選開催国（または近隣国）での事前合宿や暑熱対策といった強化プログラムは、西野監督のチームの経験をもとに組み立てられていったものである。

　93年、95年と世界大会で戦った経験は、96年のアトランタ五輪出場へつながっていく。そして、28年ぶりの五輪出場は、98年のフランスＷ杯出場の足掛かりとなる。92年から95年にかけての年齢別代表こそは、日本サッカー躍進の土台といっていい。