『おにぎり浅草宿六』に学ぶ!おにぎり作りの極意 〜ごはんの炊き方〜【前編】

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毎日の「おいしい」が生まれる場所を訪ねて、おうちごはん編集部がそのおいしさの秘密に迫る特別企画。今回は東京で一番古いおにぎり専門店『おにぎり浅草宿六』3代目店主の三浦洋介さんにお話を伺いました。前編では米の研ぎ方から炊き方までシンプルだからこそ大切にしたい、いつものおにぎりをおいしく作るコツをご紹介します。

東京で一番古いおにぎり専門店『おにぎり浅草宿六』


いつでもどこでも手軽に食べられる、日本人にとって最も身近な食べ物である「おにぎり」。11月の新米がおいしい季節にふと「おいしいおにぎりの握り方を学びたい!」と思い立ちました。
それならばプロにお話を聞きに行こうということで、昭和29年創業の東京で一番古いおにぎり専門店『おにぎり浅草宿六』におうちごはん編集部のやん編集長とmicoで行ってまいりました!


創業当時のまま、まるでお寿司屋さんのようなカウンター

少し緊張しながら白いのれんをくぐると、目の前には美しい一枚板のカウンターが。まるでお寿司屋さんのような雰囲気が漂う店内で提供される宿六のおにぎりは、64年前の創業以来ずっと作り置きはしないで、注文が入ってから一つずつ握ることにこだわっています。


具材も昔からほとんど変わっていない

「生姜味噌漬」「奈良漬」「あみ」「塩辛」など、他店ではなかなか食すことができない具材も多い宿六の定番ラインナップは、創業以来のほとんど変わっていないとのこと。

中でも鮭が一番人気だそうでその理由を『おにぎり浅草宿六』3代目店主の三浦洋介さんに伺ったところ、
「安心なんですよね。おにぎりを食べておけば間違いないでしょ。みんなコンビニで買う時もそんなに何個も買えないと思うんですよ。だからおにぎりに求めるのって安心なんですよ。好きなものを食べるのがおにぎりだし、安心を求めるのがおにぎり、だからうちは奇抜な具はいれない。」

いつも迷わず鮭のおにぎりを選んでしまう私と編集長、三浦さんのお話を伺いながら思わず納得。


漬物などの具材は元々昔からつきあいがあるところで仕入れて、佃煮など宿六仕様にしていただいているのもあり、それぞれ業者さんが違うとのこと。鮭は豊洲から買ってきて焼いたものをほぐしています。


プロ直伝!ごはんの炊き方の極意


米を研いで、炊いて、握って……、自分好みの米を見つけることも大切ですが、おにぎりの味や食感を左右する重要なポイントを知ると、いつものおにぎりが格段においしくなります。

1日に4升もの米(おにぎり約100個分)を2升ずつ羽釜で炊かれていらっしゃる三浦さんに、まずはごはんを炊くうえで大事にされていることやこだわりについてお話を伺いました。


―― 三浦さんはお店を継いでから、お米に関する知識などは昔からおばあさま(初代)やお母様(2代目)から受け継いでこられたのですか?


いえいえ、自分の代になってから追求し始めました。今までの感覚を僕は数字で表したいんです。そういうタイプの人間です(笑)。もちろん表せないことはあるんですけれど、できる範囲で数字で表したいというか、理論的に考えたいと思っています。例えば、「米をなぜ研いで、浸水しないといけないのか?」ってわかります?


―― 普段あまり考えることはなかったのですが……研いでから浸水することによって、お米にまんべんなく水分を行き渡らせるためですか?


正解! 今では精米の技術も上がってきていますし、お米屋さんで買ってきた米とスーパーで買ったものでは米の状態が異なります。
研ぐ時の力加減のコツは特にありませんが、1回目はいつもどおりに研いで炊いてみて、2回目以降に炊く際は前回のことを振り返りながら試してみて、自分の好みの研ぎ方を見つけてください。


―― なるほど、自分の好みなんですね。ちなみに宿六さんではお米にもこだわりがあるのでしょうか? 毎年どちらの銘柄を使われているんですか?


昨年は新潟のこしひかりで、今年はまだ決まっていません。毎年毎年20種類くらい米を炊き試食をしてから決めるのですが、11月くらいにならないと米が固定されないんです。標高によって米を収穫する時期が異なるので、主要な米が出揃う11月中旬まで待ってからどの銘柄がいいかを判断して、翌年の新米が出るまでは年間通して同じ銘柄を使い続けます。
(※取材は2018年11月上旬時点の内容です)


―― 銘柄を選ぶ時期にこだわりがあったのには驚きでした。「おいしさ」の感じ方は人それぞれ。ほっと安心するおにぎりを作るには、自分もしくはご家族の好みを把握し、それに少しずつ近づけていく努力が必要ですね。


『おにぎり浅草宿六』流ごはんの炊き方


それではお待たせしました。三浦さんに教えていただいた、宿六流のごはんの炊き方をご紹介します!


【1】米を研ぐ 〜白さの加減は好みの味につながる〜

「研いだ時の水の白さ加減 = 糠の度合」となるので、糠の味が好きなら、それほど研ぐ必要はありません。もし糠のにおいを消したい場合は無洗米がおすすめです。
※無洗米は精米する工程で白米よりももっとより深くまで精米してあるので、炊飯時に米を研ぐ必要がありません。


【2】ザルにあげて30分おく

米を研ぐとまわりに水分がつき吸収し始めるが、米の中はまだ乾いている状態。ザルにあげてしばらく置くことによって中にもまんべんなく水分が浸透していきます。


【3】水に浸けて30分おく

米:水の比率が1:1や1:1.2など、水加減は好みですが、米も水も容積(ml)ではなくグラム(g)で量るのがポイント!
※ ザルあげの段階で米の水分量は調整されるので、新米だからといって水の量を変える必要はありません。

ただし、30分の浸水時間は必ず守ってください。長時間浸水すると菌が発生して発酵してしまい味わいが半減、短すぎると米の中まで水分が浸透せず芯が残ってしまう原因になることも。長すぎても短すぎてもいけないのです。


【4】強火にかけて、吹いたら火を止める

なべ蓋の穴から蒸気が吹き始めると、鍋の中で米がパチパチと弾けている音がしてきます。この音が火を止める目安になります。これは水がなくなってきた、つまり、水が米に吸収された合図です。


【5】そのまま放置し、20分ほど蒸らす

火を止めたら蓋は開けちゃだめです、ゼッタイ。


【6】蒸らした後、まぜない!

宿六では、炊きあがった米を保温器に移しています。保温器に移す作業で上下がひっくり返り、米が自然とくずれて、きっていることと同じになるので、蒸らした後にあえて羽釜の中では混ぜません。

炊きたてのごはんを狭い空間の中でかき混ぜることで、ごはん粒をつぶしてしまいがちです。
しゃもじですくったり、お茶碗によそった瞬間にごはんがくずれてふわっとなり自然と余分な水分がとぶので、自宅では必要以上に混ぜすぎないよう注意してみてください。


【三浦さんからのアドバイス】

おいしい米を炊くためにはできれば同じ銘柄で楽しんでもらった方がいいし、毎回毎回同じ米を使うことによって米の善し悪しがわかってきます。

何グラムの米に対して何グラムの水で炊けば自分にとって一番うまい米ができるというのを考える、小さなことなんだけどそれを続けるとたぶん米の上手い炊き方がわかってくるし、それがおいしさに繋がっていきます。やっぱり炊いた後しかわからないので、1度炊いてみてぜひ好みの味や加減を探してみてください。


なぜそうするかを考えることが味に、そしておいしさに繋がる。


今までなんとなく米を研いだり、蒸らした後にごはんを混ぜていたことを振り返りながら、三浦さんから教えていただいた炊き方を一つ一つ実践し、いろいろと試していく中で、自分の一番好きなごはんの味を見つけられたらいいですね。

さて、次はおにぎりの握り方の極意を学びます。
続きは、後編でご紹介しますのでお楽しみに!


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