『半分、青い。』ロケ地、人出が約6倍に! フィーバー冷めやらぬ“聖地”を巡礼してみた
半年間にわたって日々、私たちをハラハラドキドキさせてくれたNHKの朝ドラ『半分、青い。』。9月で最終回を迎えたものの、主人公・鈴愛が生まれ育った「ふくろう商店街」のロケ地、岐阜県恵那市岩村町には、いまも大勢の観光客が押し寄せている。
「ここは新宿か?」
今年4月の人出は、昨年同月の8331人に対して2万5423人と3倍以上に! 放送前の3月は昨年に比べて2864人減だったことを考えると、朝ドラ効果、おそるべし! 離婚した鈴愛が故郷へ戻った8月には、昨年比で約5・8倍にまで膨れ上がっている。
「4月2日に放送が始まって、その月末からゴールデンウイークにかけてすごい人数が訪れました。撮影場所の西町一丁目商店街は“ここは新宿か?”と思うほどの混雑ぶり(笑)。まったくの想定外で、駐車場は足りない、車は渋滞、地元名物の五平餅やかすてらが完売して“お土産が何もない”と言われました」
そう振り返るのは、恵那市役所職員で岩村町のまちづくりに携わる近藤明浩さん。
岩村町には日本百名城に選ばれた岩村城跡があり、江戸時代の建物が50〜60戸残る通りを含めた城下町一帯は、国の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建)に指定されている。『半分、青い。』のロケ地はその城下町にある。ただ、朝ドラが始まるまでは、観光地としての知名度はいまひとつだった。
その後、勃発した『半分、青い。』フィーバーを受け、市では歴史的建造物の勝川家でドラマの展示(9月末で終了)や、観光案内所に物産館『えなてらす、いわむら。』を併設。旧振興事務所の建物を活用して撮影小道具の展示コーナーや休憩所を作るなどして、観光客を迎えている。
また、4月から月1回ペースで商店街をドラマの舞台だった昭和時代の風景に染める「ふくろうまつり」を開催。町の人たちが所有しているクラシックカーや古い自動販売機、家具や小物がずらりと並べられ、スタッフは “昭和風の服装”で任務にあたる。
「『ふくろうまつり』は11月4日(日)11〜15時がファイナル。気候が穏やかなこの季節に、ぜひお越しください」(近藤さん)
岩村町の“聖地”に突撃!
実際に記者が岩村町の“聖地”を歩いてみた。明知鉄道の岩村駅で散策マップを入手し、徒歩数分で岩村本通りへ。“重伝建”の指定を受けた道のりは、散策にほどよい約1・3キロ。かつて商家が並んでいたという趣深い街並みを進むと、五平餅を焼く香ばしい香りが漂ってくる。
まずは、鈴愛の親友・菜生の実家として、唯一セットではなく実際の店で撮影が行われた「やすだや洋品店」が見つかるはず。店先に撮影当時の写真が飾られているので、要チェック!
次の横道を過ぎたあたりからが「ふくろう商店街」の撮影地だ。劇中では看板や幟、すでに地中化がすんでいる電柱と電線が作り込まれていた。セットとなった店の入り口にはロケ風景の写真が貼られ、ドラマのシーンが思い浮かぶ。
グルメスポットも多く、なかでも五平餅店『みはら』は、鈴愛の祖父役・中村雅俊に五平餅の焼き方を指南した店。女将の長尾美佐子さんは、「大勢の人たちに、町や五平餅のことを知ってもらえてうれしい」と、笑顔を見せる。
「生活が見え、ぬくもりを感じる」
撮影地はここまで。通りの“枡形”(街道を2度直角に曲げ、外敵が進入しにくいようにしたもの)の先は、江戸時代に栄えた商家が並ぶ。市の指定文化財の旧家は無料で見学できるほか、『えなてらす、いわむら。』、日本酒の試飲や奥行きの長い内部を見学できる岩村醸造、220余年かすてらを作り続けているという松浦軒本店など、見どころがめじろ押し。
「重伝建地区の中には人がまったく住んでいなかったり、観光向けの店ばかりの地域もあるようですが、このあたりは洋品店や金物屋、薬屋などの商売を続けているところが多い。生活が見え、ぬくもりを感じる、と好評いただいています」(近藤さん、以下同)
横道に入ってさらに進み、急な坂道を上ると岩村城跡にたどり着く。明治時代に廃城令で失われるまで700年間も存続した名城で、織田信長の叔母が城主だった伝説が残る。現存する見事な石垣と城跡から見下ろす町の眺めが素晴らしい。
現在、岩村町では、この先も大勢の人に町を訪ねてもらおうと、地元以外の人が気軽に参加できる体験プログラムを実施している。
「『半分、青い。』に教えてもらったことをヒントに、岩村城跡や城下町、町に残る古いものを、これまでとは見せ方や楽しみ方の視点を変えた取り組みを進めていきたい」
名作の余韻に浸れる聖地へ、あなたもぜひ足を運んでみては!?