囲碁AIが最強棋士に3戦全勝、完全決着
グーグルが開発した囲碁AI「アルファ碁(AlphaGo)」と、非公式のものながら棋士レーティングで世界第1位にあり、事実上の世界最強棋士と目されていた中国の柯潔(かけつ)九段の3連戦の第3局が上海近郊で行われ、アルファ碁が勝利した。これで両者の対戦成績はアルファ碁の3戦3勝となり、1997年にチェス世界王者(当時)ガルリ・カスパロフ氏がディープ・ブルーに敗れて以来続いていた人類と人工知能の盤上の死闘は、「人類の完全敗北」という形で決着がついたと見てよさそうである。
そもそも、囲碁は、そのルール上の特性から、コンピュータにとっては、代表的な盤上競技の中ではおそらくは最も攻略の難しいゲームであると言われていた。それにおいて、この結果となったわけである。
柯潔九段は1997年生まれ(何の運命の巡り合わせか、カスパロフが敗れた年である)、19歳。2016年にアルファ碁に敗れたイ・セドル(韓国)氏には過去9回勝っており、イ・セドル氏がアルファ碁に敗れたとき、「アルファ碁はイ・セドル氏には勝てたかもしれないが、自分には勝てないであろう」と豪語したという。
ちなみにアルファ碁の方は、その時点からさらに進化を遂げている。2017年の初頭、ネット上に「Master」を名乗る謎の棋士が登場、世界最強クラスの棋士たちを相手に60戦無敗という記録を打ち立てたのだが、のちにこれがアルファ碁の改良版の運用テストであったことが明らかにされた。
結果について、柯潔九段は「人間では想像もつかない手を打ってきた。強かった」と述べている。
なお、先にも報じた通り、将棋においては佐藤天彦名人が20日に将棋AI「PONANZA」に2戦2敗で敗れたばかり。
プロ競技としての側面はあまり知られていないが、オセロについても記録がある。2002年、元日本チャンピオンの富永健太氏、当時24歳が、Logistelloというパソコンソフトに2戦2敗している。
これで、主だった盤上競技において、最強クラスのAIに対しては、もはや人類が勝ることはできなくなった、と見てよさそうである。柯潔九段も対戦前の時点で、結果がどうなるにせよAIと勝負するのはこれが最後だろう、と語っていた。
ディープ・ブルーの激震から20年。AI研究の歴史に、また一つ大きな金字塔が打ち立てられたようだ。