2017年1月17日、次のような写真付きのツイートが投稿され、話題となっている。

写真は、奈良の貸切シアタールーム「青丹座」の入口と内装だ。「4Kスクリーン&ドルビーアトモスのシアタールーム」だという。なるほど、なんとも居心地の良さそうなミニシアターである。しかも洗練されたデザインが素敵だ。このツイートには7000を超えるリツイートがあり、今も拡散している。

「好きな映画の上映会をやりたい」


「青丹座」は理想のシアタールームかも(画像提供:有限会社ならがよい)

映像はともかく、自宅の環境では映画館のような満足のいく音量での映画鑑賞はなかなかできることではない。「マッドマックス」や「ガルパン」など、好きな映画の「一人(や仲間内の)上映会」をぜひここでやりたい――という反応も相次ぐ。

実際に利用した人からは、こんなコメントも届いている。


映像機材は、4Kプロジェクター。音響システムは「ドルビーアトモス」(画像提供:有限会社ならがよい)

「青丹座」とは、いったいどんなところなんだろう? Jタウンネットは電話で話を聞いてみることにした。

電話で答えてくれたのは、『青丹座』プロデューサーの平田幸一さんだ。

「3年ほど前に、東京から奈良に引っ越して、古い町屋を活用したレンタルスペースを運営するビジネスを始めました。そこで気付いたことは、奈良市に映画館が1軒もない(※編注:一応、「イオンシネマ高の原」が県境すれすれにある)ということでした。隣りの大和郡山市や京都府木津川市まで行かなければならない。映画好きな人のために何かできないか、と考えたのがきっかけでした」と平田さんは語る。

「映画好きな人なら、自宅にプライベートシアターをつくるのは夢だと思う。でも一人で持つのは無理でも、共同で所有し、シェアする形なら、可能ではないか」と平田さん。「そこでビルの1室を改装し、理想のシアタールームを造ることにしました」。工事が始まったのは、2015年6月だった。

まず防音壁にこだわった。アルミ柱の骨組の中に、グラスウールを敷き詰めた防音壁。その厚さは、約24センチだ。この防音壁が、周囲への音漏れを防ぐ。

音響システムは「ドルビーアトモス」。JBL製ホーン型スピーカーを、フロントに4台、壁面に4台、天井に4台、計12本のスピーカーを配置した。360度全域が音で包み込まれる、次世代のサラウンド規格なのだという。

映像機材は、4Kプロジェクター。120インチの4K専用スクリーンが、前面の壁一面に貼られている。座席として、リクライニングソファ11席が置かれている。


ゆったりとくつろげる「青丹座」のリクライニングチェア(画像提供:有限会社ならがよい)

これだけの設備を個人で用意しようとしたら、大変な出費になるはずだ。失礼ながら費用はどのくらいかかったか、聞いてみた。「高級車が買えるくらいでしょうか」と平田さんは笑って答える。高級車といってもいろいろあるが......「ご想像にお任せします」とのこと。

エントランスは両開きドアで、壁面は緑色、正確には「青丹色」という。紺色のシェードが下がり、窓から見えるカーテンはシックなエンジ色だ。まさに昭和の名画座のような雰囲気が漂っている。


「青丹座」の外観は、昭和な名画座風(画像提供:有限会社ならがよい)

シアタールーム内の機器は、タブレット端末でかんたんに操作できる。クリックすると、各機器が起動し、ブルーディスクプレーヤーのトレイが開き、室内の照明が徐々に消えていく。


「青丹座」での機材の操作は、タブレットで行う(画像提供:有限会社ならがよい)

青丹座運営の特徴は、オーナー制だ。「ご自分の部屋同様の意識で利用していただくため、オーナー制という形をとりました」と、平田さんは語る。「現在、オーナーの数は約50人です。きちんとマナーを守ってご利用いただいています」。土日は予約でいっぱいだが、平日はまだまだ空きがあるとのこと。

「子供連れでもOKなので、家族で楽しまれる方が多いですね。映画はもちろんですが、家庭用ビデオの鑑賞会などにも利用されています」。アイドルのファン仲間で集まるケースもある。「V6ライブのドルビーアトモス対応ディスクを持ち込んで、盛り上がったグループも......。わざわざ北海道や九州から予約して訪れたファンもいましたね」。

オーナー以外のビジターでも利用できる。利用料金など詳細については、青丹座のオフィシャルサイトで確認できる。


「青丹座」オーナーになると、スマホ専用アプリで予約し、入退場できる(画像提供:有限会社ならがよい)