サッカー・リオ五輪代表メンバー選考に残る解決不能の「不安」
注目のリオ五輪・男子サッカー日本代表の登録メンバーが7月1日に発表されます。この原稿を記載している時点では誰が選ばれるのかは定かではないのですが、ひとつだけ確実にわかっていることがあります。それは、今大会のメンバーに「五輪」「ワールドカップ」の経験者がひとりも含まれていないということです。
もともと現在のU-23代表にあたる世代は、国際大会の経験が乏しいグループです。この世代の選手たちが参加資格を持っていた2013年と2015年のU-20ワールドカップは、日本は本大会出場を逃しています。そのひとつ手前、やはりこの世代で構成された2011年、そして2013年のU-17ワールドカップは本大会出場をはたしていますが、そこから現在選考の遡上にあるのは可能性がかなり低いと目されるメンバーを含めても10名ほど。
もちろん、浅野拓磨などA代表やアジアチャンピオンズリーグでの出場歴を持つ選手もいますが、「五輪」「ワールドカップ」に比べれば、その規模感や注目度は及ぶべくもありません。U-23世代のほとんど…いや、基本的に全員が「いまだ体験したことのない大舞台」に、これから臨むことになるのです。
五輪には魔物が棲むとよく言われます。4年に一度、全世界の注目を集める大会は、それだけ注目度やプレッシャーも大きいもの。平時のチカラを出すことは難しい一方で、人生を賭けて生涯最高のパフォーマンスを見せるライバルもいる。その中で、自分のチカラを発揮し、勝つというのは簡単なことではないはずです。「五輪初参加」の選手ともなれば、開会式に参加しただけで浮き足立ったり、五輪に参加したこと自体に満足感を覚えてしまうケースもまま見られます。
そこでモノを言うのが「経験」。
その意味で、今回のオーバーエイジの選考は首を傾げるものでした。選ばれた3選手…藤春廣輝、塩谷司、興梠慎三もまた「五輪」「ワールドカップ」の出場経験がない、「いまだ体験したことのない大舞台」にこれから臨む初々しい選手だったのです。守備陣に負傷者が相次いだことで、オーバーエイジの選考が制限されたという事情はあるにしても、あまりにも「経験」を軽視した選考と言わざるを得ません。
ベスト4まで進んだロンドン大会では、徳永悠平(アテネ五輪代表)・吉田麻也(北京五輪代表)という2人の経験者をオーバーエイジとして加えていました。ベスト8まで進んだシドニー大会では、オーバーエイジとして楢崎正剛(98年ワールドカップ代表)がおり、中田英寿(98年ワールドカップ代表)がその世代の中心選手として名を連ねていました。グループステージで敗れはしたものの1勝2敗と意地を見せたアテネ大会では、オーバーエイジの小野伸二(98年、02年ワールドカップ代表)がリーダーシップを発揮しました。
一方で、近年のA代表につながる本田圭佑、香川真司、内田篤人、長友佑都、岡崎慎司らが名を連ねた北京大会では、オーバーエイジは使わず、3戦全敗を喫しています。その過程では監督の指示と、選手の判断が食い違うようなチグハグな戦いも見られ、選手個々の能力以外の部分で苦戦をした大会でした。
オーバーエイジに期待されるのは戦力アップだけではありません。23歳時点ではなかなか持ちえない経験や成熟にこそ、「年齢が上」である選手ならではの価値があるはずです。1日のメンバー発表で誰が選ばれたとしても、その「経験」がこのチームにないことは変わらない。「大舞台未経験者」だけで臨む五輪。本大会への大きな不安を残す選考が、やはり「大舞台未経験者」である手倉森監督を襲う「魔物」とならないことを祈るばかりです。
(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)
もともと現在のU-23代表にあたる世代は、国際大会の経験が乏しいグループです。この世代の選手たちが参加資格を持っていた2013年と2015年のU-20ワールドカップは、日本は本大会出場を逃しています。そのひとつ手前、やはりこの世代で構成された2011年、そして2013年のU-17ワールドカップは本大会出場をはたしていますが、そこから現在選考の遡上にあるのは可能性がかなり低いと目されるメンバーを含めても10名ほど。
五輪には魔物が棲むとよく言われます。4年に一度、全世界の注目を集める大会は、それだけ注目度やプレッシャーも大きいもの。平時のチカラを出すことは難しい一方で、人生を賭けて生涯最高のパフォーマンスを見せるライバルもいる。その中で、自分のチカラを発揮し、勝つというのは簡単なことではないはずです。「五輪初参加」の選手ともなれば、開会式に参加しただけで浮き足立ったり、五輪に参加したこと自体に満足感を覚えてしまうケースもまま見られます。
そこでモノを言うのが「経験」。
その意味で、今回のオーバーエイジの選考は首を傾げるものでした。選ばれた3選手…藤春廣輝、塩谷司、興梠慎三もまた「五輪」「ワールドカップ」の出場経験がない、「いまだ体験したことのない大舞台」にこれから臨む初々しい選手だったのです。守備陣に負傷者が相次いだことで、オーバーエイジの選考が制限されたという事情はあるにしても、あまりにも「経験」を軽視した選考と言わざるを得ません。
ベスト4まで進んだロンドン大会では、徳永悠平(アテネ五輪代表)・吉田麻也(北京五輪代表)という2人の経験者をオーバーエイジとして加えていました。ベスト8まで進んだシドニー大会では、オーバーエイジとして楢崎正剛(98年ワールドカップ代表)がおり、中田英寿(98年ワールドカップ代表)がその世代の中心選手として名を連ねていました。グループステージで敗れはしたものの1勝2敗と意地を見せたアテネ大会では、オーバーエイジの小野伸二(98年、02年ワールドカップ代表)がリーダーシップを発揮しました。
一方で、近年のA代表につながる本田圭佑、香川真司、内田篤人、長友佑都、岡崎慎司らが名を連ねた北京大会では、オーバーエイジは使わず、3戦全敗を喫しています。その過程では監督の指示と、選手の判断が食い違うようなチグハグな戦いも見られ、選手個々の能力以外の部分で苦戦をした大会でした。
オーバーエイジに期待されるのは戦力アップだけではありません。23歳時点ではなかなか持ちえない経験や成熟にこそ、「年齢が上」である選手ならではの価値があるはずです。1日のメンバー発表で誰が選ばれたとしても、その「経験」がこのチームにないことは変わらない。「大舞台未経験者」だけで臨む五輪。本大会への大きな不安を残す選考が、やはり「大舞台未経験者」である手倉森監督を襲う「魔物」とならないことを祈るばかりです。
(文=フモフモ編集長 http://blog.livedoor.jp/vitaminw/)