2.5次元ドラマか「重版出来!」原作そっくりキャラ続々登場

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黒木華主演、オダギリジョー、坂口健太郎、安田顕、松重豊ら個性派キャストが顔を揃えるドラマ『重版出来!』がスタートした。週刊マンガ雑誌の編集部を舞台に、「重版出来」(本をたくさん売って、増刷すること)を目指す編集者やマンガ家、営業部員、書店員らの姿を描く群像劇だ。


先週放映された第1話は、主人公の黒沢心(黒木)が出版社の入社試験に合格して『週刊バイブス』編集部に配属され、ベテランマンガ家・三蔵山龍(小日向文世)の抱える悩みを解決するまでが描かれた。

第1話は原作にかなり忠実な作りであり、原作ファンも安心して見ていられたと思う。ビジュアル面でも、ナチュラルな状態なのにキャラそっくりな先輩編集者・五百旗頭(いおきべ)役のオダギリジョーをはじめ、かなり原作に寄せている印象。安田顕は脇役なのに髪型やファッションまでちゃんと真似していたし、原作キャラと体型がまるで違う編集長役の松重豊も表情などは原作キャラそっくりだった。社長役の高田純次も、実はけっこう原作キャラに顔が似ていたりする。

原作を活かした脚本づくりに定評のある野木亜希子(『空飛ぶ広報室』『図書館戦争』『俺物語!!』など)も、数の多いキャラをしっかり紹介しつつ、100ページもある原作の第1話を過不足なくまとめてみせた。かなり明るめの画作りを多用した演出は、“TBSのエースディレクター”こと土井裕泰によるもの。ドラマの陰影を出すというより、キャラクターの個性に重きを置いた演出は、ちょっと“2.5次元ドラマ”を見ている気分になった。いろいろな意味で、とても見やすいドラマだという印象だ。

初回の視聴率は9.2%と、けっして上出来の滑り出しとは言えないが、インターネットでは概ね満足したという声が多く、録画視聴率も高いと思われる。2回目以降の推移に注目だ。

努力家でコミュ力高くて可愛い主人公


主人公の心を演じる黒木華も、まっすぐひたむきな体育会系女子をさわやかに演じている。地は人見知りで、セックス・ピストルズと萩尾望都を愛する文系女子だという黒木だが、そういうところはさすが女優。というか、もともと体育会系の女優が演じるより、うっとうしさが中和されているような気がする(原作の心は、かなり周囲にうっとうしがられていた)。

実は、主人公の心は、ほかのお仕事ドラマの主人公にありがちな新米役と違い、ドジな子でもなければ、ダメな子でもない。マンガ編集者としては新人だが、実は何でも出来る子である。柔道でオリンピックを目指せるほどの“努力の天才”であり、幼少の頃からマンガの大ファンということでマンガ編集部の仕事にも全力で打ち込むことができる。

さらにコミュ力が高く、超体育会系の異分子(出版社の編集部は超文化系の巣窟)でありながら、周囲の先輩編集者と打ち解けるのも早い。大きな挫折を経験しているが鬱屈したところがなく、気難しいマンガ家に対しても「大ファンです!」とストレートに伝える素直さを持つ。それでいて外見が可愛い黒木華なんだから、ちょっと何でも持っていすぎ! 

第1話は心の物語ということで、ある意味わかりやすい展開だったが、第2話以降は心を通して出版業界に生きる人たちの人間模様が描かれていく。苦闘するマンガ家、それを支える編集者、無気力な営業部員……。基本的にみんな心に鬱屈としたものを抱えている出版業界に、まったく鬱屈さを持たない心がやってきて、周囲はどう変わっていくのか?(こうしてみると『アルプスの少女ハイジ』のようなお話でもある)。

物語は出版業界の現在や仕組みにもかかわってくるだろう。原作は普遍的なお仕事ものというより、かなりマニアックに出版業界のことを描いている。そのあたりをどう中和させていくのか、あるいはそのまま視聴者にぶつけていくのか。今夜放送の第2話に注目だ。
(大山くまお)