30本以上のシュートを放ちながら、3得点しか奪えなかった日本。今ひとつキレを欠いた岡崎も不発に終わった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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  勝ったのは評価できても、それ以外に収穫はなかった。

【PHOTOギャラリー】日本 3-0 カンボジア

 
 カンボジアにしろ、次戦のアフガニスタンにしてもワールドカップ・アジア2次予選は徹底的に引いた相手との勝負は避けられない。難しい試合になるのは分かるが、ただそれ以前として、この試合は全体的にピリッとしなかった。
 
 活躍が期待された香川や岡崎のコンディションは悪く、なにより気になったのは非効率的に映ったサイドアタックだ。酒井宏や長友がクロスを上げるシーンは多く見られたが、ほとんど撥ね返されてばかり。本当に惜しかったのは、武藤のクロスから香川が決定機を外した42分のシーンくらいだったのではないか。
 
もちろん、クロスを上げる側にも問題はあったが、受け手もDFのマークを振り切らなければいけない。ところがそれを徹底できず、岡崎や武藤はクロスに飛び込んではいたが、事前にDFを外し切れてはいないシーンが多かった。それでは得点を奪えるはずはない。
 
もっとも、DFに密着マークされながらそれを振りほどくのは簡単ではない。だとすれば、相手が少しでも守りにくい状況を作り出す必要がある。一方のサイドから徹底的に攻め込むのもひとつの手かもしれないが、サイドチェンジを繰り返し揺さぶりながら両サイドを攻め込めば、DFからするとマークしずらくなり、ひいてはゴール前にスペースが生まれる可能性が高まる。
 
この試合、左右両サイドを使っての攻撃はたしかに見られたが、その?揺さぶり″はやや物足りなかった。右サイドから攻め込むと見せかけて、思い切って逆サイドに展開しそこから攻め込むような形がもう少しあっても良かったのではないか。
 
 それと、単純にクロスを放り込んでいたので、カンボジアの守備陣は時間の経過とともに対応に慣れていた印象も受けた。相手の守備陣形が整う前にGKとDFの間にアーリークロスを送り込むなど、ひと工夫していればまた違ったんじゃないかと思う。
 そしてもうひとつ、声を大にして言いたいのは、なぜペナルティボックスの角までえぐらないのかということだ。
 
 せっかく高い位置まで攻め上がっても、ゴールに近い位置ではなく、コーナーエリア付近からクロスを放り込む場面がほとんどだったが、それではチャンスにつながりにくいのは当然で、ゴールへ少しでも近づかなければ相手への脅威にもならない。
 
 例えば、右サイドでボールを受けた本田が外側から攻め上がってきた酒井宏にボールを預け、縦のランニングでペナルティボックスの外側まで走り、そこでリターンパスを受けマイナスのクロスを上げる。または、そこでDFを引きつけたうえで、酒井宏にクロスを上げさせるのでも良いだろう。サイドをえぐれば、相手の守備組織が崩れる可能性もより膨らむため有効的なのは間違いない。
 
 他国を例に出すと、コパ・アメリカで優勝したチリは、まさにそんな攻め方を徹底していた。相手が引いていても単純にクロスを放り込まず、サイドの高い位置からペナルティボックス付近に走り込んだ味方にパスを出したり、相手の守備網をいかに崩すかに腐心していたのが印象的だった。
 
 それに比べるとカンボジア戦の日本は、あまりにもオーソドックスすぎた。結果的に3ゴールを奪ったとはいえ、相手を崩すためのバリエーションに乏しかった攻撃は、アジアの弱小国でも守れるレベルだったと言えるだろう。
 
 今回の招集メンバーを見ると、前線に高さのある選手が見当たらない。相手が守備的に構えた際の攻撃に、より幅を持たせる意味では、豊田のような空中戦を強みとするFWがいても良かったと思うが、今さら嘆いても仕方がない。それよりも、ペナルティエリアの角を意識的に使える攻撃の形を確立していくべきだと思う。それをアフガニスタン戦で体現できるか、注意深く見ていきたい。