敗者なきゲームとでも呼ぼうか。両軍全てを出し切った、これぞ高校野球といえる素晴らしい試合

 この日の主役は間違いなくコザの大黒柱・内間 敦也であった。2回までに6奪三振、4回を終えて二桁の10個を数えるなど9回完投、42人の打者に対し圧巻の17奪三振!最速149kmをマークし、常時140km中盤を記録するなど、奪三振とスピードを見ると、名護打線を圧倒したように思えるが、名護打線も内間に対し、徹底的に追い込むが、それを内間が力でねじ伏せた試合であった。

 試合は先制したのはコザ。内間と中学でバッテリーを組んできた盟友である兼本陸(コザでは外野手)が思い切り振ると、グングン伸びた打球はレフトスタンドへアーチを描いた。さらに2回、一死から四球の走者を、犠打とワイルドピッチで三塁へ進めて、相手のキャッチャーの三塁への牽制悪送球の間に2点目を迎え入れた。それ以降も、コザの各打者の当たりは悪くなく、名護の當山 昇平を捉え続けるが、この日の強風や名護外野陣の好守もあり、追加点を挙げることが出来ない。それが後半以降、名護へと流れが傾く一因ともなっていった。

 内間の速球で圧倒されていた名護であったが、6回、死球二つと突如乱れた内間を攻め二死満塁とした粘りを、さらに7回に見せつけ、真栄田伊織と古我知拓也のヒットで一・三塁とすると、4番5番が連続四球を選び、追い出しで1点差へと詰め寄る。そしてこの日一番の注目を集めた8回には、四球で出した走者を犠打で進めようとするが、内間自身の二塁への悪送球と、9番當山のライト前ヒットで無死満塁としたのだ。

 この時、右足を気にやる内間はベンチに目線をやるが、互いに意を決したように続投。すると残っていた気力を全て使う、まさに一球入魂の四文字が相応しい内間のストレートが蘇る。サードゴロで本塁封殺にすると、次打者のスクイズも同じく本塁で刺す。そして三つ目のアウトを、セカンドの正面への当たりに斬ると、内間は雄叫びをあげた。

 9回裏、先頭打者をピッチャーゴロに斬ると、代打で登場した二人を、最後は連続空振り三振に斬って取りゲームセット。夏の沖縄の主役は與那原 大剛(普天間)ではなく、オレだ!と言わんばかりに、豪腕伝説の幕明けを強烈に印象づけた。

 内間に対しヒット9本を浴びせ四死球6つを数えるなど、内容はコザを上回り、中盤以降は完全に押してもいた名護。試合に敗れたものの、互角以上の力と粘り強さをグランドで見事に表現していた。どちらも勝たせてあげたい、どちらにも負けをつけたくない最上の試合、これぞ高校野球というものを見せてくれた両者に惜しみない拍手を送りたい。

(文=當山 雅通)