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●「残酷な天使のテーゼ」は尋常ではない力のある楽曲『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌「残酷な天使のテーゼ」をはじめ、数々の名曲を手掛けてきたアーティスト・高橋洋子が、カヴァーアルバム第二弾となる「20th century Boys & Girls II」を2015年4月22日にリリースした。

本作では、アニメやドラマ、バラエティなどの主題歌に加え、小坂明子の「あなた」など、まさに20世紀を象徴するような名曲が取り揃えられているほか、高橋自身の代表曲でもある『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』のセルフカヴァーも収録。また、高橋が10歳のころに収録した「ふしぎなメルモ」の音源を掘り起こすことで、時代を超えたデュエットを実現するなど、まさに注目の一枚に仕上がっている。

そこで今回は、本作のリリースにあたって、高橋自身が語ったメッセージを紹介しよう。

○高橋洋子が語る「20th century Boys & Girls II」

――カヴァーアルバム第2弾となる「20th century Boys & Girls II」がリリースされますが、カヴァーする楽曲はどのようにして選んだのですか?

高橋洋子「私と、キングレコードの大月さんとで選びました。まさにこのタイトルどおり、"20世紀に少年少女だった方"向けということで選んだのですが、私たちが好きだった曲のほか、当時はビデオなどの機器も揃っていませんから、すごく好きだったけど手元になくて聴けないような楽曲を、あえて選んでみようという思いもありました」

――あらためて掘り起こす感じですね

高橋「あと、たとえば『真っ赤なスカーフ』は、前回も候補に挙がっていたのですが、いろいろと検討した結果、入れられなかったので、あらためて今回収録されることになりました。そのほか、『カリキュラマシーンのテーマ』などは、まさに知る人ぞ知るという感じの曲ですが、すごくカッコよくて、時代背景が象徴的だと思うんですよ。番組も面白かったですし、いつか誰かがやるだろうという存在なのに、誰もやっていない。じゃあ私がっていうことでやらせていたたきました(笑)」

――そういった楽曲に加えて、「残酷な天使のテーゼ」と「魂のルフラン」といったセルフカヴァーも収録されていますね

高橋「この2曲はたくさんの方にカヴァーしていただいているのですが、ここまできたら自分でもやり続けようかなと(笑)。半ば意地みたいなものですが、どんなカタチであれ、カヴァーアルバムが出せるなら入れ続けようと思って、今回も歌わせていただいております」

――セルフカヴァーということで、かえって難しかったところはありますか?

高橋「セルフカヴァー以前に、そもそも楽曲自体がすごく難しい(笑)。しかも、シンプルにすればするほど粗が目立つ楽曲なのですが、今回は、限りなく裸に近づけて、どこまでシンプルにできるかチャレンジするという試みもあったりします。コーラスもほとんどいれず、ほとんど一発録りなので、シンプルというだけじゃなく、ライブ感もあるんじゃないかと思います」

――あらためて「残酷な天使のテーゼ」を歌ってみた感想はいかがですか?

高橋「とにかく楽曲のパワーを感じました。未だたくさんの方にカラオケで歌っていただけているのは、やはり曲自体に力があるからだと思います。歌詞もそうですし、エヴァンゲリオンという背景も含めて、尋常ではない力のある楽曲だと思います」

――高橋さんの歌の力も加わって、さらに大きなパワーになっていると思います

高橋「最初に歌ったときは、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったんですよ。歌詞や譜面をいただいたのはレコーディングの数日前でしたし、収録当日になって歌詞が変わったりもしました。こういうことに慣れていない人だったらとても大変な環境で、まさか売れるなんて思いもしませんでしたから、リリース後に一番ビックリしたのは私かもしれません(笑)。絵も観てないし、ストーリーも聞いていない。何も知らない中でのレコーディングでしたから」

――当初は、主題歌を歌う予定ではなかったとお聞きしていますが

高橋「最初は、エンディングテーマの『FLY ME TO THE MOON』をいろいろな人が歌うという企画で呼ばれた中の一人だったのですが、そもそも当時はキティレコードに所属していて、キングレコードさんで歌ってもよいかどうかもわからない状態だったんです。それで確認したらOKだったので、じゃあ歌いましょうかという話になったとき、それなら主題歌も歌えばって大月さんに言っていただいて(笑)。そんなノリでの抜擢だったので、まさかこんなにヒットするなんて予想もしていませんでした」

●「ふしぎなメルモ」では10歳の自分とデュエット!?――それではほかの収録曲についてもお伺いします。まずは「カリキュラマシーンのテーマ/3はキライ」

高橋「『カリキュラマシーン』は、私が小学生のころに放送されていた番組なんですけど、すごく面白かったんですよ。その中でも、この曲のイントロが衝撃的でした。今回の楽曲でもそのテイストは残しているのですが、とにかく演奏が難しくて、ミュージシャンの方は、本当にプロ中のプロという方ばかりだったにも関わらず、みんな楽譜から目がまったく離せない状況でした。しかも今回は一発録りだったので、緊張感もすごかったです(笑)」

――続く「ひこうき雲」は荒井由実(松任谷由実)さんの曲ですが、最近で『風立ちぬ』でも使用されていましたよね

高橋「これは大月さんのチョイスなんですけど、私にとってもすごく思い出深い曲なんですよ。小学3年生くらいの頃、私は父親からピアノを習っていたのですが、すごく嫌で(笑)。本当に、嫌々習わされているといった感じだったのですが、ちょうどその頃、テレビで由実さんが弾き語りをしているのを観て、身体に電流が走ったんですよ。なんでしょう、このサウンドは、こういう表現もあるんだって。もうショックを受けて、すぐ楽器屋さんに行って、楽譜を探しました」

――その衝撃というのは曲に対してですか?

高橋「曲も、歌い方も、歌詞も、すべてですね。もうすべてが新しかった。こんなに素晴らしい表現の仕方があるんだって、すごい衝撃を受けたんですよ。ちょうどその時に買った楽譜は弾き語り用で、その中に『ひこうき雲』も入っていました」

――選曲した大月さんだけではなく、高橋さんにとっても、本当に思い出深い楽曲なんですね

高橋「その後、私は由実さんのコーラスを5年間ほどやらせていただいているのですが、そのときは本当に、荒井由実、そして松任谷由実の世界にどっぷりと浸かった5年間だったので、いつかこういう機会があればぜひ歌わせていただきたいと思っていました。ただやはり、原曲に勝るカヴァーというのは本当に難しくて、今回歌ってみて、あらためて由実さんの偉大さを知りました」

――「真っ赤なスカーフ」は、今回唯一、原曲が男性ボーカルの曲ですね

高橋「こちらも大月さんのチョイスですが、先ほどもお話したとおり、前回から候補に挙がっていた曲なのですが、今回あらためて歌うことが決まったとき、どういったアプローチで行くべきか、けっこう悩みました。男性ボーカルのイメージが強いので、不安もありましたし、歌うための勇気も必要でした。でも、とても素晴らしいアレンジをしていただいたおかげで、等身大の自分で歌うことができて、すごくいい感じで収まったのではないかと思います」

――高橋洋子版の「真っ赤なスカーフ」という感じですね

高橋「今回、音楽的な部分のアレンジは、すべて笹路(正徳)さんにお任せしました。もちろん最初に、自分なりの思いはお伝えしたものの、それはあくまでもひとつの提案で、笹路さんが良いと思うようにしてくださいというオファーをさせていただいたのですが、本当にすばらしいアレンジをしていただけたと思っています」

――小坂明子さんの「あなた」にはかなり思い入れが強いと伺っていますが

高橋「すごく大好きな曲で、絶対に歌わせてくれとお願いして歌いました(笑)。子どものころ、本当によく歌った曲で、私の原点ともいえる曲なんですよ。意外と若い方はご存じないようなんですけど、そんな方が聴いても、良い曲だってわかるくらいの名曲ですから、20世紀の曲を紹介する上では、絶対に外せない曲だと思います」

――実際に歌ってみていかがでしたか?

高橋「あらためて名曲だと思いました。現在、歌を歌う機会ってすごく増えていると思うんですけど、『あなた』のような曲を、正確に歌うことが出来たら、ほかの曲もけっこう歌えるようになるんじゃないかと思います。音域も広いし、さまざまな良い要素がたくさん含まれている曲ですから」

――『一休さん』からは、エンディングテーマの「ははうえさま」が収録されています

高橋「実は私、エンディングフェチなんですよ(笑)。以前からこの曲は名曲だと思っていたので、ぜひ歌いたいと言っていたのですが、前回は却下されちゃって……。『一休さん』はないよって(笑)。でも、どうしても歌いたかったので、あらためて今回強く推してみました」

――いいバラードですよね

高橋「ですよね! 本当にいい曲だと思うので、知っている人も知らない人も、あらためてじっくりと聴いていただきたいと思います」

――『ふしぎなメルモ』の主題歌では、面白い取り組みが行われていますね

高橋「手塚作品から一曲入れたいと思っていて、いろいろな候補が挙がったのですが、その中でもこの曲は、自分が10才のころにカヴァーしたことがあったので、当時の歌声と今の私が、時空を超えてデュエットしたら面白いだろうなと思って提案しました。ただ、それを実現するためには、まずマルチトラックの音源を探すところから始めなければならなくて(笑)」

――よく音源が残っていましたね

高橋「本当によく残っていましたよね。実際に歌ってみて感じたのは、10歳の頃の私はパンチが効いているんですよ、若いから。その声にはやっぱり敵わない(笑)。あと、『ふしぎなメルモ』の歌詞って、大人になったり、子どもになったりするじゃないですか。それを、子どもの私と大人の私が歌っているわけですから、すごく不思議な一致だと思いませんか? これは後になって気づいたことなんですけど」

――最初から狙っていたわけではないのですか?

高橋「本当に偶然の一致です(笑)。手塚先生の作品で、自分が10歳の頃にソロで歌ったのがこの曲しかなかったから採用されたわけで、本当に不思議な縁だと思いました。今回のアルバムは、自分が20代のころにコーラスをやっていた由実さんの曲であったり、はじめてソロでレコーディングした曲であったり、昔から大好きだった曲であったり、私の歌の中で、皆さんに一番知っていただいている曲であったりが収録されているわけですよ。そういう意味では、原点回帰というわけではないですけど、自分のこれまでを振り返りつつ、今後どうしていくのかをあらためて考える機会をいただけたのではないかと思っています」

●高橋洋子にとってカヴァーとは――そこから一転、急に渋い感じで「愛のバラード」になりますが、これは大月さんのチョイスですよね

高橋「そうですね。メロディは皆さんご存知の有名な曲だと思いますが、歌詞があるなんて知らなかったので、最初に聞いたときはビックリしました。まさに今回の隠し玉なんですけど、この曲に歌詞があって、金子(由香利)さんが歌っていたことを知っていた大月さんにもビックリですよね。そういう点でも、この企画の選曲において、大月さんは欠かせない存在なんです(笑)。ただ、実際に歌う際、どうやって歌おうかすごく悩みました。原曲に寄せるべきかどうか。最終的には笹路さんが、高橋洋子が歌ったらどうなるかというニュアンスでアレンジしてくれたので、すごく収まりのよい感じになったと思います」

――さらに「夜明けのマイウェイ」と渋いチョイスが続きます

高橋「これは意外と私のチョイスなんですよ(笑)。『夜明けのマイウェイ』が主題歌のドラマ『ちょっとマイウェイ』は、DVD-BOXを買うくらい好きな作品で、すごく面白かったんですよ。この曲もすごく良い曲なんですけど、意外と皆さんには知られていないので、この曲も歌わせていただくことにしました」

――そして最後は「魂のルフラン」ですが、あらためて歌ってみていかがでしたか?

高橋「『魂のルフラン』は最終的に劇場版の主題歌になっていますが、レコーディングの時点では、『心よ原始に戻れ』とどちらが主題歌になるか決まっていなかったんですよ。歌詞もレコーディング当日にFAXで送られてきたぐらい、本当にドキドキの収録でした。TVシリーズが終わりきらないから映画になったのに、映画もああいった結末で、私の曲が流れ出す(笑)。そういったことすべてをひっくるめての『魂のルフラン』なので、この曲を歌うと、それらの記憶がすべてセットになって蘇ってきます」

――そういう意味でも、忘れらない曲なんですね

高橋「エヴァンゲリオンの2曲で言うと、『残酷な天使のテーゼ』よりも『魂のルフラン』のほうが歌いやすいです。これはあくまでも音楽的な話ですが、『残酷な天使のテーゼ』はブレスが少ないので、すごく難しいですね」

――ここまで収録曲を振り返っていただきましたが、あらためて、高橋さんにとってカヴァーとはどういった位置付けになりますか?

高橋「歌を生業として生きている人間として、私がカヴァーすることの意味は、世の中にある名曲をあらためて皆さんにお伝えすることだと思っています。例えば、皆さんがカラオケでエヴァンゲリオンの曲を歌っても、私には何の連絡もありません。詞や曲を書いているわけではないので。それは当然のことなんですけど、詞や曲を作った人と同時に、歌った人がいるからこそ、曲は語り継がれていく。前回のアルバムもそうだったのですが、私は原曲を歌われた方にCDをお送りするようにしています。お金をお支払いすることはできませんが、やはりその方が歌うことによって、曲の素晴らしさを知ったわけですから。だから、カヴァーする際は、そういった敬意も含めて世の中の人にお伝えしたいと思っています。極論を言えば、絶対に原曲には敵わないんですよ。だから、原曲が好きな方は原曲をお聴きになったほうがいい。でも、あえて今、高橋洋子が歌ったらという世界観だったり、新たなアレンジだったりを楽しんでもらえたらうれしいですし、そこにカヴァーをする意義があるのではないかと思っています」

――高橋さんが歌うことで、新たな発見があったりもしますよね

高橋「結局、世代が違えば、知られないまま死んでいく曲なんて五万とあると思うんですよ。それだともったいないじゃないですか。それをあらためて掘り起こすのもカヴァーの醍醐味だと思います」

――やはりきっかけは必要ですね

高橋「まずは知らないと、調べることもできませんから。こういうカタチでカヴァーアルバムを出させていただいていますが、私自身が知らない名曲も、まだまだたくさんあると思います。これからもそういった名曲に出会っていきたいですね」

――そうなると第三弾にも期待が膨らみますが

高橋「今回、『魂のルフラン』を最後にしているのは、"続く……"ということを意識した配置なんです。そういうイメージのアレンジになってますので、個人的にはぜひ第三弾もやりたいです」

――第三弾にも『残酷な天使のテーゼ』と『魂のルフラン』は収録されるんですよね

高橋「そこはもう意地ですね(笑)。カヴァーアルバムが出せる限りは、ずっと入れたいと思っています」

――それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします

高橋「このアルバムには、20世紀の名曲で、21世紀になっても皆さんに聴いてもらいたいし、歌ってもらいたい曲がたくさん収録されています。このアルバムを通して、その世界観を共有し、そこに新たなエッセンスとして、皆さんの思い出を加えていただけたらうれしいです。今回は第二弾ですが、第一弾もすばらしい仕上がりになっておりますので、まだお聴きになっていない方は、ぜひあわせて楽しんでください。よろしくお願いいたします」

――ありがとうございました

高橋洋子のカヴァーアルバム第二弾「20th century Boys & Girls II」は、2015年4月22日のリリースで全10曲を収録。価格は3,000円(税別)。

(竹間葵)