16番ホール(今日の7番)ではピン横1メートルにつけてバーディ。勢いに乗った (Photo JJ.Tanabe)

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 米女子ツアーの今季メジャー第2戦、全米女子プロゴルフ選手権が開幕した。戦いの舞台となるブルロックGCは全長6596ヤードと距離的には超難コースだ。一見、フェアウエイは広く見えるが、フェアウエイの両サイドもグリーン周りもラフは深くて濃密ゆえ、ラフに入れたらボギーは覚悟。グリーンもアンジュレーションに富み、芝目がきつくてラインは難解。どこを取っても、きわめてタフなセッティングは、メジャーにふさわしいと言える……はずだった。しかし、初日のスコアは予想以上に伸び、ニコル・カストラーリが8アンダー64をマークして単独首位。2位タイにはパット・ハーストとクリスティ・カー。宮里藍は4アンダー68で7位タイと好発進。不動裕理は3アンダー69で16位タイと健闘。諸見里しのぶはイーブンパー72で61位タイに食い下がっている。

 なぜ、初日のスコアが予想以上に伸びたのか。その理由の1つは、天気予報だ。雨の予報が出ていたため、大会側は雨で選手たちの飛距離が落ちること、プレー進行が遅まることを想定し、あらかじめセッティングを易しくした。「ティは前だったし、昨日とは全然違うセッティングだった」とは宮里の指摘。女王アニカも「グリーンは止まるし、コンディションは最高だった」と、スコアを伸ばしやすい環境だったことを認めていた。おまけに、実際には雨はほとんど降らず、ほぼ無風で暑すぎず寒すぎずの気温。あらかじめセッティングに加えた手心が「無意味な対策」となり、本来ならもっとタフなはずのコースが、少しばかり易しいコースに変わっていたのである。

 だが、「1日1アンダー平均」を目標に掲げていた宮里のスコアが、それを3つも上回る4アンダーまで伸びた理由は、セッティングの易しさにも助けられてはいたであろうが、むしろ彼女の安定した精神状態が安定したゴルフにつながった賜物と評価すべきだ。前日まで警戒していたラフには、フェアウエイサイドで2回、グリーン周りでは1回しかつかまらなかった。もちろん、安定したショットを放ち続けたからこそである。「このグリーンは読みが難しい」と言いながらも、1メートルから8メートルまで、ショートパットもミドルパットもロングパットも、どんなレンジ(範囲)のパットにもうまく対処し、4つのバーディを奪った。折り返し後の2番パー5で第3打をグリーン奥のラフに入れ、初めてピンチらしいピンチに遭遇した。しかし、アップ&ダウンでパーセーブ。「いい流れだった」と静かな口調で振り返った。

 「いい流れ」を維持できたのは「メンタル面がいい状態だった」からなのだと宮里は言う。スコアを伸ばしやすいコンディションであることを肌で感じながらも、妙に意気込まなかった。4つのバーディは「どうしても取らなきゃというバーディじゃなかった。一打一打に集中できた」。欲張らず慌てず気負わずというメンタル面の安定があったからこそ、逆にスコアは伸びた。メジャーの舞台でルーキーが、まるでベテランのごときエモーションコントロールをやっている――最終日最終組でプレーして負けた今季2度の経験が大きなモノを言っているのだと思う。

 米ツアーでメジャー初出場の諸見里しのぶは、前日まで「メジャーという感じがしない」と言っていたのだが、夜半から今朝にかけて、かなりの緊張に襲われ、出だし3ホールで2ボギーという発進。ラウンド中、キャディ役として日本から駆けつけた江連忠コーチに何度も怒られ、涙顔、むくれ顔にもなったが、「逆に、怒られると絶対にパーを取ってやるって思えて、前向きになれた」そうで、3バーディ、3ボギーのイーブンパーにまとめた。すべてバーディチャンスにつけた上がり3ホールでわずか1バーディという結果が悔やまれるが、逆に言えば、上がり3ホールですべてバーディチャンスにつけられるほどショットはいいということ。緊張を跳ね除け、度胸が出てくれば、ちょっぴり悩み気味のパットもガツンと入りそうな気配。明日こそは、出だしから実力発揮といきたいところだ。

[写真]宮里藍、ミシェル・ウィー −全米女子プロ選手権