DeNAが、ベイスターズにお金をかけてくれる気になったようだ。

 球団は、中日を自由契約になったトニ・ブランコ内野手の獲得を発表したのだ。フロントは、「本塁打王も狙える」と大はしゃぎで、ブランコ獲得を記念してハマスタに遊具のブランコを設置することも検討中だという。年俸は2億円プラス出来高5000万円、2年契約で総額5億円の大盤振る舞いになった。球団はこのほかに、前中日のエンジェルベル・ソト投手の獲得で大筋合意し、同様に前中日のホルヘ・ソーサ投手とも獲得に向けた交渉を行っている。

 さらに、これまた元中日の福留孝介外野手にも、2年5億円の条件を提示して、阪神との争奪戦を繰り広げている。さらに、レッドソックスからFAとなった松坂大輔投手についても、「日本が選択肢に入ってくれば会う」と高田GMがラブコールを送るなど、強い興味を示している。一生懸命戦力を拡充しようとしているのはいいし、予算をかけてくれるのもいい。ただ、私はどうしても違和感をぬぐい去れないのだ。

 確かに短期間でチームを強くしようと思ったら、出来上がっている選手を穫ってくるのが手っ取り早い。特に大砲を獲得すれば、空中戦が挑めるから弱小チームを強くする即効薬になる。

 ただ、本当にベイスターズファンは、そんな試合をみたいのだろうか。少なくとも私がみたいのは、マシンガン打線であり、キャノン砲打線ではないのだ。

 本当に強いチームというのは選手層の厚いチームだ。高額年俸の選手を先発に並べても、いつスランプに陥るか、いつケガをするか分からない。だから、普段から一軍できちんとプレイできる選手を分厚く育てておく必要があるのだ。

 その意味で、球団の経営姿勢に大きな疑問を持たざるを得なかったのが、山口俊投手の契約更改だ。山口は、最初の年俸交渉で500万円ダウンを提示されたというのだ。

 その後、現状維持に戻ったというが、2012年度の山口の成績は、60試合に登板して、1勝2敗22セーブで、防御率は1.74だ。これだけの成績をベイスターズのなかで残せたというのに、それで1億を切る額に年俸減額を提示するということ自体が、選手のやる気を失わせるのだ。

 球団は、もっと地に足の着いた強化策を講じて欲しい、ベイスターズはこれまでも良い選手をたくさん育成してきた、問題は彼らがみなベイスターズを見捨てて出て行ってしまうことなのだ。

森永卓郎「ハマスタから遠吠え」バックナンバー

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
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