大飯原発の再稼働を野田首相が宣言したとき「いいかげんなことするんじゃねえ!」という国民の怒りが爆発した、とミサオ・レッドウルフ氏は語った

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野田総理が大飯原発再稼働を表明して以降、国内で爆発的に広がっている脱原発デモ。今回はデモの運営サイドである首都圏反原発連合代表のミサオ・レッドウルフ氏に話を聞いた。

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今振り返ると、私はデモに“とりつかれて”しまったかもしれない。生まれが広島だったからか、もともと放射能や原発に強い関心があった。これまで日本を見捨てて海外でアウトサイダー的な生き方をしてきたけど、運命的に反原発運動に巡り合って―。

2007年の11月に、2000人くらい集めた反原発イベントを日比谷野音でやったんです。もともとその運動に関わっていた知人に誘われて、実行委員会に入って集会の名前を考えたり、ロゴを作ったり。古い人たちとがんがんケンカをしながら、音楽イベントを組み合わせたデモをやって。それが終わり、団体の名前や運営方法がウケたから、誰か継続してやってくれないかと頼まれ、私が引き受けました。そして、3・11が巡ってきて、気づいたら今に至る、みたいな感覚ですね。

私たち、首都圏反原発連合の姿勢としては、急進的な原発廃止を訴えています。長期的には全原発の廃炉を、短期的には大飯原発の再稼働反対を主張してきました。抗議デモが新たな局面を迎えたと実感したのが、この再稼働を野田首相が宣言したタイミング。「いいかげんなことするんじゃねえ!」って怒りが爆発したことによって、参加者がバーンと増えた。同時に、マスコミ報道とこれまでやってきたツイッターやネットの広報活動との相乗効果で、より多くの人がデモに興味を持ってくれた。ただ、規模が拡大するにつれ、現場やネット上で誹謗中傷を含んださまざまな意見があふれていることは否定しません。

よくあるのが参加者の総数について。主催者と警察が発表する数があまりにもかけ離れているんじゃないかと。こちらには参加者を数える係がいて、経験則から人数を発表します。やっぱりデモを可視化して事実として伝えることは重要。ただ、正確な数を把握するのは無理。警察だって同じはずでしょう。おそらく警察は、デモに出発する最初の人数を数えていて、だいたい、警察はいつだって少なく見積もるんです。

警察警備についての意見もよく聞きます。「おまえらは警察の犬か!」と。これまで所轄の麹町署と何度も話し合いを重ねてきて、これは癒着というより社会人として当たり前の対応のはず。そのなかで20時になったら音を止めろとか、デモのルールが徐々にできてきた。現場の警察官との信頼関係があるからこそ、ここまで運動が継続できたはず。

また、運営のやり方で「おまえたちはイベント屋か!」と突っ込まれると、でも確かにそうだよなと思う部分もあります。ボランティアを集め、誘導班や救護班など適切に人員を配置していく。これは5年前からの経験が生きている。だから最近よくいわれる、フェス感覚やノリで参加する人たちにも一定の理解がありますし、巨大化するにはそういった人を取り込むことも必要になる。現場に来たことをきっかけに、なんらかの問題意識を持ってくれたら。それから先はその人次第でしょう。

私たちはこれかれも、一般の人たちが参加できるように、デモという器をシンプルに運営していきたい。さらにデモを巨大化させ、政治の中枢にまで声を届けるために。仮に100万人集まったとしたら、すごい圧力がかけられるはず。うまく言えないけど、今の私はデモにとりつかれてしまった状態。私はこのデモを最後まで見届けたい。もう仕事とか生活じゃなくて運命として。だからこれからも現場に立ち続けます。

■ミサオ・レッドウルフ

首都圏反原発連合/NO NUKES MORE HEARTS代表/イラストレーター

先頭でマイクを握り続ける、一連のデモ運動のキーパーソン。

情報は【http://nonukesmorehearts.org/】