Jリーグの地盤沈下は薄々感じていたが、ACLの結果がそれをはっきりと証明した。鹿島、G大阪、さらには川崎など、今まで優勝争いを演じてきたクラブが過渡期を迎え、浦和やFC東京など財政的にも恵まれたクラブが長く低迷していることにより、リーダー不在の混戦レースが続いている。

確かに今年は震災の影響もあり、各チームとも故障者増加でコンディションが整わず、思うような助っ人が獲得できない反面日本人選手の海外移籍が続くなど、不可避な停滞要因が重なった。だが数年単位でリーグのリーダー(強豪)が変わり、なかなか序列が確立されず、各クラブの特徴の選別も進まないのは好ましいことではない。

例えばドイツを見れば、国内トップレベルの選手はバイエルンに買われ、一貫して彼らが代表の軸を成している。もし現役ドイツ代表選手がバイエルンから移籍していくとすれば、スペインやイングランドのビッグクラブしかない。ハンブルガーSV、シャルケ04、ドルトムント、シュツッツガルト、ブレーメンなど、いくつかのチームが第2グループを形成しているが、それ以下のクラブは基本的に育てて売る立場に回っている。

ところがJリーグは既に始まって20年近く経つというのに、2部、あるいはJFLまでが目先の順位ばかりに固執する傾向が否めない。下部リーグが若い選手の登竜門の役割を果たさず、J1の上位からJFLまで一律で平均年齢が20歳代後半という状況にある。
昇格し、そこで戦うために、何人かのベテランを補強するのはいいが、そればかりではクラブの未来がない。

今後日本サッカーがさらに発展していくためには、優良輸出国になる必要がある。ブラジルやアルゼンチン、あるいはオランダやフランスのように、若い有望株を育てて海外クラブに売り、それでも国内では次の芽が出てきて活力を保つ。そんな状況が保たれなければ、一流国の仲間入りは出来ない。

そういう意味では、Jリーグでビッグクラブになれる潜在能力を持つ浦和やFC東京などの責任は重い。どちらも集客力を持ち、優れた育成組織を持っているはずなのに、トップチームの成績が上がらない。本来ならこうした規模のクラブが毎年ACLで優勝を争い、そこで活躍した選手を海外に売る。そして潤った資金で、また国内の最高級の選手を集めリーグを牽引するというサイクルが必要なのだ。

ところが頂点の水準が上がらず、低レベルの混戦が続くので、どうしても総体的に戦術も人選も冒険が減る傾向にある。同じように守備組織を整え、攻守に献身的で計算のできる選手を優先するようになるから、必然的に大卒選手が主流を成し平均年齢も上がる。しかし大学を卒業し23歳でプロ初挑戦の選手が海外に進出できる可能性は薄いし、もし売れたとしてもクラブはトレーニング費用も請求出来ない。優秀な輸出国になれる可能性は消えてしまう。

現在Jクラブはすべてアカデミーを持っているが、依然としてスクール色が強く(大半は親が会費を払っている)、育成には大きな投資をしていない。そのせいか、育てて売るという意識が希薄で、せっかく18歳まで育てた選手たちを、他のクラブには売らずに、簡単に大学へと迂回させてしまう。また選手の方も、今のJリーグには将来的展望が描けないから、慎重な選択を希望する。結局日本は、エリートたちの能力を十分に引き出し切れない、言わば歯痒い状況にある。

それを歴史と片づけてしまえばそれまでだが、少なくとも潜在的な上位クラブの構造改革には、まだまだ時間がかかる。だとしたらせめてJ2を育成色の濃い未来に繋がるリーグに変えていくために、新しい規則の導入を検討するなど、早急に改革を進めていく必要があると思う。