第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリーを受賞した映画『ザ・コーヴ』が東京での上映を急きょ中止することになった。シアターN渋谷は、6月26日の公開を控えていたが、電話での抗議が頻繁にあったことや、街宣抗議活動が執拗(しつよう)に行われたため、中止に踏み切った。

 米国の複数のメディアもこの話題を報じている。米ロサンゼルス・タイムズ紙は、多くの日本人は、イルカ肉を食べたことがないにもかかわらず、一部の人々はイルカやクジラを殺すことは日本の伝統文化だとして、海外からの干渉に憤慨していると伝えている。

 また、映画製作の協力者でイルカ保護運動家のオバリー氏のインタビューを紹介。同氏は、映画の上映により、日本人のイルカ漁を止めさせることができればとの意見を述べている。また日本人は、なぜそれほどまでにイルカ漁の真実があらわになることを怖がるのかと疑問を呈し、彼らはイルカ漁の虐殺が、とても残酷で科学的なサポートもできず、弁解の余地がないことを知っているからではないか、との見方を示している。

 また米ニューヨーク・ポスト紙では、映画評論家のキール・スミス氏が、米国にいながら映画で日本文化について知ることは大きな喜びだが、信じがたいことに日本の配給会社が、度重なる抗議による街宣活動にさいなまれ、東京での上映を中止することになったと伝えている。同氏は、映画が上映されることで、米国で論議されたように、日本でもこの問題が論じられることを期待していたと述べている。

 配給会社代表の加藤武史氏は、『ザ・コーヴ』は反日映画ではないと強調し「映画の内容について前向きな議論が必要だ。日本を題材にした映画を映画館で鑑賞する機会が失われることを残念に思う」と語っている。今後の上映は現在協議中だという。(編集担当:田島波留・山口幸治)



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