3月3日のバーレーン戦に勝利したことで、東アジア選手権終了直後の沈滞ムードを、日本代表はひとまず払拭した。

 とはいえ、ワールドカップ出場国とのテストマッチに勝ったわけでない。負けても何の痛みもない、アジアカップ予選の消化試合である。初代表の選手も含まれていたバーレーンのメンバーは、評価を上積みしても1・5軍といったところだろう。2日前の3月1日午後に中部国際空港に到着した彼らが、ベストコンディションだったとも思えない。勝つのは当然の相手で、後半ロスタイムまで1−0で粘られた試合内容は、決して褒められるものでなかった。本田のヘディングシュートがなければ、そして注目度の高かった本田が決めていなければ、試合後の印象はずいぶんと変わっていたはずである。

 W杯を念頭に置くと、相手に与えた直接FKの多さが気になった。直接FKは、コンタクトプレーでのファウルがほとんどを締める。ディフェンスの時間が長いチームのほうが、反則覚悟のプレーに迫られる場面は増えていくはずだが、相手に与えた直接FKは、バーレーンの14本に対して日本は19本である。日本のほうが多いのだ。ボール支配率で、ほぼ6対4の割合で上回ったにもかかわらず、である。この数字は何を示唆するのか。

 19本の内訳を洗い出すと、敵陣で与えたものが8本で、自陣では11本だった。問題は自陣だ。11本のうち9本が、ゴール前へのクロスかシュートへつながっている。この日は失点につながらなかったものの、W杯の対戦国なら果たしてどうだったか。バーレーンよりさらに高精度のボールを供給してくるのは間違いない。

 失ったボールを取り返そうとする責任感や、1対1で食いつく激しさは、もちろん必要だ。しかし、バーレーンに与えた直接FKを振り返ると、味方選手が近くにいるにもかかわらず、無理にボールを奪おうとするケースが目につく。自陣で与えた11本の直接FKのうち、周囲との連携を意識すれば避けられたもの、声をかけるだけでファウルにならなくて済んだものが、僕の確認では少なくとも五つあった。

 W杯まであと3か月となり、ここからはゲームの細部を詰めていく作業が必要となる。しかし、日本の試合運びはまだまだ甘い(極論すれば、日本人はディフェンスがうまくないということになるのだが)。

 試合後の岡田監督は、ハーフタイムに「無駄なファウルをするな」と指示したことを明かし、「今日は失点につながりませんでしたが、レベルの高いチームが相手になると、セットプレー(を与える)というのはリスクがある」と話した。こればかりはそのとおりである。南アW杯では、ゴール前の制空権争いで劣勢が予想される。不要なファウルの多さは看過できない。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖