動物愛護相談センターで愛犬を引き取る飼い主(後方)。(撮影:佐藤学)

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動物愛護相談センター。道に迷って飼い主の元に帰れなくなった迷い犬や捨て猫が毎日のように、東京都世田谷区にあるこのセンターに収容される。飼い主が名乗り出るなどして“身元”が判明しない場合、収容されたペットの7割は1週間で致死処分される。こうした現状を受けて、同センターでは、致死処分からペットを救うため、鑑札の装着や不妊去勢措置を施すなど、飼い主に協力を呼びかけている。

 同センターと多摩支所、城南島出張所が2005年1年間に収容した犬とネコの合計は9022匹で、そのうち、犬は2929匹、ネコは6093匹だった。迷子になったり捨てられたりして同センターが保護したペットが81%、飼えなくなったなどの理由で所有者が持ち込んだペットが13%、交通事故などに遭い動けなくなっているのを保護したのが6%。

 1週間の収容期間内に飼い主から連絡がないか、引き取り先が見つからない場合、ペットはすべて同センター城南島出張所に集められ、そこで炭酸ガス処理・焼却処分される。運良く引き取られるのは、健康で人懐っこい性格の犬やネコで、高齢の場合、救われる道は少ない。

 昨年同出張所で致死処分されたペット数は、都内で収容された犬・猫の7割以上で、生まれたばかりの子ネコが主で約5800匹、犬が約600匹。同出張所の入り口にある慰霊碑では、引き取りが間に合わなかったため処理されたペットの飼い主が焼香・献花する姿が時折見かけられるという。

 都内豊島区の国枝秀一さん・友子さん夫妻の場合は、致死処分前にペットを引き取ることができた“幸運な”ケースといえよう。地元警察から迷子になったシェパード「レモン」が同センターに収容されていることを知らされた。同センターに駆けつけた夫妻を見つけた「レモン」は、収容されていた檻の中を駆け回り、大きな体いっぱいに再会の喜びを表していた。

 狂犬病予防法は、犬の登録と狂犬病予防注射をし、鑑札と注射済票を首輪などに装着することを飼い主に義務付けている(違反者は20万円以下の罰金)。飼い主が法律で決められたとおり、鑑札やマイクロチップなどをペットに装着していれば、これまでに収容された多くの犬が持ち主の元に帰ることができた。また、年に2─3回妊娠するネコの場合は、不妊去勢措置を行うことによって、致死処分される子ネコの数を減らすことも可能だ。

 愛犬の無事な姿を確認した国枝さんは「鑑札と注射済票を家に保管して首輪につけていなかったことをたいへん後悔しています」と反省しきりだった。ペットがいなくなってしまった場合、動物愛護センターか最寄りの保健所、警察署に連絡することで、致死処分を防げる可能性は高い。動物愛護相談センターでは、いなくなったペットを探さないのは「殺すのに等しい行為だ」と警告している。

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 動物愛護センター 03-3302-3507
 多摩支所 042-581-7435
 城南島出張所 03-3790-0861

【了】