増えすぎた野良猫のせいで住民が困っている。「お腹を空かした子猫にミルクを与えたい」という声がある一方で、「糞尿やゴミ荒らしの被害があっても、飼い主がいないので・・・」と苦情のやり場に困る住民。繁殖期の鳴き声などの騒音問題、糞尿による臭気など衛生面での問題、生ゴミ荒らしなど環境面での問題等々、野良猫によるトラブルを数え上げれば切りがない。

 1年間に平均2回出産する猫は、1度に約5─6匹の子猫を生み、1年で10─12匹増えていくという。都市部のほかの自治体同様、野良猫問題を抱える東京都新宿区は、2001年からこの問題を地域ぐるみで解決しようと、「人と猫との調和のとれたまちづくり(地域猫対策)を!」に取り組んでいる。キーワードは、Trap(トラップ=捕獲)、Neuter(ニューター=不妊手術)とReturn(リターン=ナワバリに戻す)。

 区は野良猫対策費として、06年度に約500万円の予算を計上している。不妊手術費用はメスが2万5000円─3万円、オスが約1万5000円。費用の3割に当たる年間約400万円を区が負担する。施術のために野良猫を捕獲するが、区では捕獲道具やケージを区民やボランティアに貸し出し、使い方などを指導する。

 こうして不妊手術を施された野良猫は、元のナワバリに戻されるが、隠れてエサを与えないよう住民に周知することも重要になる。区では、住民やボランティアを募り、決まった時間に決まった場所で1日1回水と一緒にエサを与え、食べ残しの後片付けとトイレの設置と清掃を依頼している。

 区の保健所衛生課生活衛生係の高木優治さんは、「公園にやって来る野良猫を良く知っている小学生が中心になって、この取り組みを始めた地域もあります」と話す。今では、エサをやる時間になると身体をすり寄せてくる野良猫もいるという。野良猫の寿命は4─5年といわれており、3年過ぎると年々減っていく。高木さんは、「この取り組みには、猫の飼い主にも自分の猫を室内で飼育したり、去勢不妊手術を行うなどの協力が求められます」と強調する。手術費用の一部は区から支給されるという。【了】