左から藤野HACI社長、八郷ホンダ社長(6日の会見)

写真拡大

 ホンダジェットが小型ビジネスジェット機市場で引き渡し世界首位の座に就いたのが2017年。出荷開始からわずか2年の快挙だった。累計86機を引き渡したが、米国、メキシコが8割で、残り2割は欧州。そしていよいよ日本市場に参入する。

 「日本はホンダのホームグラウンド。いよいよホンダジェットを展開できる」。ホンダの八郷隆弘社長は感慨深げに話す。

 ホンダが航空機開発に着手したのが1986年。それから約30年。フォーミュラワン(F1)からの一時撤退を決断させるほどの衝撃を同社に与えた08年のリーマン・ショック後も開発を継続。航空機事業参入という「ホンダ創業当初からの夢」(八郷社長)を結実させた。

 そのホンダジェットを日本でも販売することは、ホンダブランド向上という意味も持つ。同社は17年度に軽自動車「N―BOX」が22万3449台(前年度比16・2%増)の販売を達成し、国内車名別新車販売で年間首位を獲得した。

 成熟化が進む国内自動車市場で健闘をみせるが、さらに「ホンダジェット投入でチャレンジする姿勢をみせる」(同)ことで、古くからのホンダファン、若者の両者にアピールしたい考えだ。

 ただ、ホンダジェット事業自体はまだ赤字。一般的に航空機ビジネスは機体を販売し、その後のアフターサービス・メンテナンスを含めて収益を上げる。今はホンダジェットの販売台数を伸ばす段階にあり、「少し長い目で見ていきたい」(同)とする。

 もっとも「事業の継続性という意味でも収益を期待している」と八郷社長。航空機事業子会社、米ホンダエアクラフトカンパニーの藤野道格社長は、「5年を目安に単年度黒字のラインには乗っている」という。

 国土の広い米国ではビジネスジェット機が身近な存在で、1時間2500ドル程度でホンダジェットを使えるサービスもある。こうしたビジネスジェット機のグローバルスタンダードを持ち込み、日本に「新たな市場を創造する」(藤野社長)ことが最大の狙いだ。

 現在、ホンダジェットは月産4機ペースで量産が進む。19年以降には年80―100機体制に膨らむ見通し。

 ホンダジェット・エリートは最大7人乗り(乗客5人)だが、派生機が開発される公算も大きい。現行機種は「世界でビジネスジェットが使われているトップ10ルートの半分をカバーできることが設計要件」(同)になっており、残り50%への対応をどうするかが焦点になる。