戦闘機の「増槽(ぞうそう)」は、ひと言でいえば外付けの燃料タンクです。零戦などはボディの下に吊り下げ、戦闘時には切り離していましたが、昨今の戦闘機ではどのようにしているのでしょうか。

増槽、実は日本生まれ

 航空機を飛ばすには、もちろん燃料が必要となります。通常は、機内に備えられたタンクに燃料を入れ飛行しますが、それだけでは燃料が足りない場合には外部に燃料タンクを取り付け、後続距離を伸ばします。また、場合によっては飛行中に給油機から直接給油を行う空中給油を行います。


主翼下に増槽を装備した航空自衛隊F-15J(2018年、石津祐介撮影)。

 現在の戦闘機は、機内に複数の燃料タンクを備えています。たとえば航空自衛隊の主力戦闘機であるF-15Jには機内に6つの燃料タンクがあり、それぞれ胴体内に4つ、主翼内にふたつを備えています。

 そしてそれらとは別に、機体外部に取り付ける燃料タンクを、「増槽(ぞうそう)」といいます。英語では「ドロップタンク」と呼ばれています。


胴体下と主翼下、それぞれに増槽を装備したF-15J(2016年、石津祐介撮影)。

 実はこの増槽、第二次世界大戦で日本が初めて採用しました。敵に遭遇し戦闘となると、被弾による爆発など二次被害を防ぐため、落下させてから戦闘を行っていました。この増槽を落下させるシーンは映画やアニメなどでも再現されています。

 落下させた増槽は回収して再利用することもありましたが、敵に再利用されないよう、使い捨て用に樹脂で固めた紙や木で作られたものもあったようです。

切り離すのはもう昔の話? 現代の増槽とは

 2018年現在では、増槽はかなり大型化しており、緊急時以外は空中投棄を行わないことになっています。航空自衛隊では、緊急時であっても市街地での投棄は禁止されており、投棄する際には海上で周囲に船舶がいないことを確認した上で投棄することになっています。


主翼の翼端に装備されたチップタンクのT-33。

機体の側面にコンフォーマルタンクを装備しているF-15E。

機体の上部にコンフォーマルタンクを装備したポーランド空軍のF-16。

 増槽は通常、胴体下や主翼の下に取り付けますが、翼端に取り付ける「チップタンク」という増槽もあります。

 また、機体の上部や側面に取り付ける「コンフォーマルタンク」と呼ばれる増槽もあり、これは通常の増槽に比べて空気抵抗が小さくなり、また取り付けにハードポイントを使わないのでより多くの武装を装備する事が可能となっています。そして機体に固定されるため空中投棄はできません。現在ではF-15EやF-16で採用されています。

中身の燃料はどのようなもの?

 ところで、燃料タンクに入れる戦闘機の燃料は、どのような成分なのでしょうか。

 飛行機の燃料すなわち「航空機燃料」には、レシプロエンジンなど向けの航空機用ガソリン、ジェットエンジン用のジェット燃料などがあります。


JP-4を運ぶ航空自衛隊のタンクローリー(2016年、石津祐介撮影)。

 ジェット燃料はおもに灯油と重質ガソリンとの混合物が用いられ、ワイドカット系(ナフサ系)とケロシン系の2種類があります。

 航空自衛隊などでおもに使用されているのは、ワイドカット系(ナフサ系)燃料「JP-4」です。一方、アメリカ海軍と海兵隊で使用されているのは、ケロシン系燃料「JP-5」で、灯油留分から精製された燃料であり、艦上での使用を考慮し引火点が高くなっています。アメリカ空軍は、かつて「JP-4」を使用していましたが、現在ではより安全性の高いケロシン系燃料の「JP-8」が用いられています。

【写真】ブルーインパルス、増槽つけて遠征中


遠征で増槽を装備したブルーインパルスのT-4(2016年、石津祐介撮影)。