薬物使用は取り返しのつかないことになる

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10代後半で大麻を使い始めた――。覚醒剤取締法違反(所持、使用)容疑で逮捕、起訴された元俳優の高知東生被告(51)は、2016年8月31日に東京地裁で開かれた初公判でこう告白し、周囲を驚かせた。

高知被告が最初に使ったという大麻は、さらに強い麻薬の「入口」になるという指摘がある。

「大麻は最初に手を出しやすい薬物」

裁判での高知被告の証言によると、俳優デビューする前の10代後半で既に大麻を使用し、20代になると覚醒剤に手を染めた。やめていた時期もあったと言うが、2010年頃からは、同じく逮捕された元クラブホステスの五十川敦子被告と一緒に覚醒剤を使うようになった。

「やめようと思ったことはあった」――。これまでに薬物使用で逮捕された芸能人が裁判で口にしてきたセリフと重なる。だが高知被告も自力では薬物の誘惑に勝てず、使い続けた結果仕事を失い、妻だった女優の高島礼子さんとも離婚した。

厚生労働省地方厚生局・麻薬取締部はウェブサイトで、大麻について「ゲートオブドラッグ(薬物乱用の入口)と言われるほど、最初に手を出しやすい薬物」と説明している。初めは大麻を使い、さらに強い刺激を求めて覚醒剤やコカインといった「ハードドラッグ」に手を出すようになるというわけだ。

過去に何度も逮捕、起訴されている芸能人で、このケースに該当する人がいる。歌手・俳優の清水健太郎さんは、1983年、86年と大麻取締法違反で逮捕された。最初は起訴猶予だったが、2度目は執行猶予つきの有罪判決を受けた。ところが94年には大麻と覚醒剤を所持していたとして逮捕となり、実刑判決となった。その後も2度、薬物で服役している。

少年期の大麻が成人後に別の薬物依存に

大麻に関しては「中毒性が低い」「タバコよりも健康への害が少ない」といった主張があり、ベルギーやポルトガル、スペインなどのように一定の条件のもとで吸引や栽培を非犯罪化(合法)している国も少なくない。だが2016年3月16日産経新聞電子版で、近畿大薬学部の川畑篤史教授(病態薬理学)は「脳に作用するメカニズムは覚醒剤とほぼ同じ。過剰摂取で幻覚や幻聴の症状も出るし、大麻は恐ろしい薬物だと認識してほしい」と指摘している。

記事では、民間リハビリ施設「香川ダルク」(高松市)の代表・村上亨さんの例を挙げた。16歳で初めて大麻を吸い、やがてヘロインや覚醒剤に次々と手を出したという。

「和歌山ダルク」(和歌山市)は、2015年12月6日付のブログで、ドイツの週刊誌「Stern」の記事をもとにこう説明している。

「大麻が他の薬物に導く入門の薬物であるかどうかについて意見は分かれる。少年期にマリフアナを使うと、成人してから別の種類の依存を促進することがあると疫学調査は示している」

現在51歳の高知被告の場合、大麻に手を染めたのは10代だったと本人自ら話した。成人前の大麻使用が、その後30年にわたる薬物使用への道に突き進む第一歩となってしまった可能性はあるだろう。