顔だけで一喜一憂するのはやめておこう

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ダイエットを始める最大のモチベーションは、やはり「よりよい見た目になりたい」だろう。

他人が顔を見て「痩せたね」と気がつくにはどの程度痩せればいいのか――そんな研究をカナダ、トロント大学心理学部のニコラス・ルール准教授らの研究チームが心理分野の学術誌「Social Psychological and Personality Science」2016年1月号(vol. 7 no. 1 69-76)で発表している。

男性は4キロ、女性は3.5キロ減

ルール准教授は、20〜40歳の白人種男女の顔をコンピュータで加工し、どの程度変化させると、太ったり痩せたりしたことに他人が気づくか実験した。具体的には、モデルとなる男女の顔をBMI(体重を身長の2乗で割って算出する肥満度)が「30(米基準で肥満)」から「18.5(米基準で低体重)」までの幅で段階的に加工した。その中からランダムに2枚の写真を選んで、約100人の被験者に見せ、「どちらが太って見えるか」と質問した。

「太っている」とされた写真が元の写真からどの程度加工されていたかを分析し、「太っている」と「痩せている」の境目、つまり他人から「痩せた」と思われる体重の減量値を割り出している。

気になるその数値だが、男性の場合平均4キログラム、女性は平均3.5キログラムの減量が、さらに「魅力的になった」と思われるにはその2倍の減量値が必要であることがわかった。

また、本来の顔からわずかに太っただけに見える写真でも、痩せていると判断された顔と比較すると、「不健康そうに見える」と答える被験者が多かったという。

体重の変化は顔だけに表れるわけではないが、この研究結果からは、少なくとも顔の見た目は他人にとって、その人が痩せているか、太っているか、健康か、不健康かといった判断をするうえで、大きな影響を与えていると考えられる。

ダイエットの成果を周りからも認められるために、是非とも「顔痩せ」をしたいところだが、「体重を減らせば顔も痩せる」という単純な話でもない。実際にダイエットをした経験のある人ならわかるかもしれないが、顔の脂肪量とBMIは必ずしも一致していないのだ。見た目と疾患の関係について、多くの知見を持つアンチエイジング医師団の山田秀和医師も、「顔の脂肪量とBMIの関係を示す論文はない」と話す。

また、「体形をシビアにコントロールしているモデルでも、顔がぽっちゃりしたままで悩んでいる人はたくさんいる」と、美容・医療ジャーナリストの海野由利子氏は指摘する。

顔に影響するのは脂肪だけではない

バイアスロンが趣味で、普段から食事内容に気をつかい、週に3〜4日はトレーニングもしているという30代の女性も、

「昔、腹筋が割れそうなくらいにトレーニングをして、BMIが18だったこともありますが、もともと丸顔だったからか、顔に変化はなかったですね。筋肉がついてがっちりしてしまい、むしろ太ったと思われたこともあります......」と話す。

そもそも、顔が太って見えるのは、脂肪がついていることだけが原因とは限らない。骨格や筋肉の状態、むくみ、加齢による皮膚のたるみなども、顔の見た目に大きな影響を与える要因だ。顔が痩せないからと、極端な食事制限に走るような真似は避けたい。

「見た目の問題ですが、ダイエットで顔の脂肪がイメージ通りに落ちるとも限りません。目が落ちくぼんだり、頬骨が出たりして、げっそり痩せて疲れた印象になることもあります」(海野氏)

しかし、どうしても結果が顔に現れない人はどうすればいいのだろうか。

「目元とフェイスライン、頬の下側は腕のいいエステティシャンによってすっきりさせられます。フェイスラインだけなら、脂肪溶解注射を使うという方法もありますね」(海野氏)

体は締まってきたのに痩せたと思われない! という人は、こうした手段を考えてみてもいいかもしれない。[監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]

参考文献
The Relationship Between Just Noticeable Differences in Perceptions of Facial Adiposity and Facial Attractiveness.
DOI: 10.1177/1948550615599829 

(Aging Style)