聖パウロ学園vs都立雪谷
2本塁打5打点の菅野 岳史君(聖パウロ学園)
初回、都立雪谷は先頭の木本君が中前打して、三塁へ走者を進めながらも得点にならなかった。そして、その裏の聖パウロ学園は一死で二塁に失策の走者を置いて、3番菅野 岳史君が左翼へ痛烈な2ランを放って先制した。さらに2回にも、聖パウロ学園は吉田君が左翼線二塁打すると、7番岩渕君が左翼へ2ラン。これで、聖パウロ学園が主導権を握ることになった。
何とか早い回で反撃したい都立雪谷は3回に亀山君、森本君と下位の連打に木本君も続き無死で1点を返して、バントで送ってなおも一死二三塁。追撃機を作ってクリーンアップを迎えることになった。ところが、ここで聖パウロ学園の町田君が踏ん張って都立雪谷は1点止まり。
そして4回、聖パウロ学園は立ち上がり以来ずっと制球の定まり切らない都立雪谷の森本君、リリーフした木下君から連続四球で無死一二塁とする。ここで、今大会初戦でサイクルヒット(試合レポート)、2回戦では決勝タイムリーを放ち(試合レポート)この試合でも初回2ランの菅野君となる。
今度も菅野君は、迷うことなく振り切って第一打席よりもさらに大きなあたりで左翼へ3ラン。これでこの日5打点目となったが、見事な一発だったが、この一発で都立雪谷を完全に粉砕することになった。
聖パウロ学園はその後も9番浦田君のタイムリーなどでさらに2点を追加した。そして、このリードもあって町田君も余裕を持っての投球となり5、6、7回と走者こそ出したものの、危なげなく切り抜けた。
今年で就任7年目となる聖パウロ学園の勝俣秀仁監督は、「相手の投手は力のあるボールを投げてくるので、コンパクトに振り切っていこうという指示だったんですが、その通りに思い切りよく振っていってくれました」と、打線の爆発を喜んだ。この春には13人の新入部員を迎える予定で、部員も全学年で53人になるという。
7年前にはわずか3人で始まった野球部だったが、徐々にチームとしてのまとまりができてきて、ブロック予選も勝ち上がれるようになり、東京都大会でも二つ三つ勝てるチームとなってきている。そして、今大会の4回戦進出で夏のシード権も獲得することになった。また一つ、ステップアップすることができたといっていいだろう。
応援席で盛り上げる都立雪谷
グラウンドは左翼が75メートル、右翼が90メートルという長方形型の変形で、しかも他部との併用ということで必ずしも条件としては恵まれてはいない。それでも、勝俣監督の情熱が伝わって徐々に成果を上げてきているのだ。
「ウチに入学してくる子の多くが、中学時代はシニアなどでも控えだった子たち。それでも、ここで自分の場所を見つけてくれて、活躍していってくれていることで自信をつけていってもらえればと思っています」と、入部してからの選手たちの成長を喜んでいる。西東京に、また一つフレッシュな新星の登場といっていいであろう。
昨秋のベスト8進出(試合レポート)で、今大会はシード校としての登場だった都立雪谷は、秋の原動力となっていた菅家 優之介君がもう一つ本調子ではなく、投手陣が苦しくなっていたということは否めない。ただ、そういうチーム状態ならば、そういう中での戦い方があるはずだという相原健志監督である。
「こういうチーム事情の中で、ぐちゃぐちゃの打ち合いみたいな試合展開にしていかないと、勝ち目はないですよ。4点取られても、3回には無死で1点返して上位につながって、そんな展開になりかかったのですけれども、そこで終わってしまいましたからね」と、3回の反撃気で追加点を奪い切れなかったことを悔いた。
そして、「練習試合や気分よくやれている時は、どんどん打つのですけれども、こういう劣勢になった時に淡泊になってしまって何もできないというのでは…、やはり気持ちの面の弱さもあるのではないでしょうか。私としても、今日の試合は、もっと期待していたんですけれどもね」と、残念さを露わにするとともに、心技両面でのレベルアップが必要だときっぱり言い切った。
(文=手束 仁)