「流星ワゴン」(TBS)もいよいよ最終回。死を目前にした父親(香川照之)と息子(西島秀俊)は最後に何を語り合うのか。

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泣きべそをかきながらも、必死でもがく主人公・一雄(西島秀俊)を描いてきたドラマ「流星ワゴン」(TBS)もいよいよ今夜最終回。親子の、そして夫婦の関係はどうなるのか。最終回に向けて、見どころをおさらいしておこう。

【見どころその1】受験に失敗し、引きこもった息子は救われるのか
背後からのそりと現れ、金切り声をあげながら金属バットを振り回す。ホームドラマというより、ホラー映画のようだった息子・広樹(横山幸汰)。中学受験に失敗したことをきっかけに、引きこもるようになり、暴力をふるう。その背景には同級生からの執拗ないじめがあったことが、ワゴンの旅で明らかにされた。3月22日放送の第9話では、一雄が広樹を連れ出す。向かった先は以前、忠さんと一緒に乗った観覧車(第1話)。忠さんと撮ったように、広樹とも記念撮影サービスの写真を撮る。そして、「つらかったら逃げろ」「逃げていいんだ」と繰り返し伝える。このやり直しの旅のなかで、広樹は泣きながら父親に抱きつき、親子の気持ちは通じ合ったかのように見えた。しかし、現実の世界ではどうなるのか。ドラマの中で忠さんは繰り返し、「逃げるな」と伝え、一雄は「つらかったら逃げてもいい」と言い続けてきた。広樹はつらい現実を乗り切ることができるのか。乗り切れるとしたら、忠さんと一雄どちらの方法が役に立つのか。それとも、逃げるのも逃げないことのひとつだ! という折衷案が飛び出すのか。最終回での行方が気になる。

【見どころその2】ギャンブルにのめりこむ妻の心を取り戻せるのか
「お前が思っとるより、ずーっとあの女は病んでるで」(第4話)という忠さんの言葉通り、競馬やパチンコにのめりこみ、借金を重ねる妻・美代子(井川遙)。第9話では、忠さんに「ぼろくそに罵ってええけえ、どうか、あいつから逃げんといてやってつかあさい」と懇願された美代子が本音を語り始める。妻の希望をかなえるために、少々無理して住宅ローンを組み、夫自ら家計のやりくに励む。一方で、妻の家事の負担を減らすべく、食洗機をプレゼント。テレビの録画やゴミの分別も妻任せにせず、ぜんぶ再チェック。過保護というかなんというか、妻のことが大好きでたまらないベタ甘ダンナ以外の何ものでもないのだが、美代子にすれば「バカにしないで!」ということだったらしい。
本音をぶつけあい、心の距離が縮まる一雄と美代子。しかし、別れのときは迫っている。一雄がもうすぐ死ぬらしいと聞かされて、動揺する美代子。一雄は「大丈夫だよ。今だけだから、君がそうやってつらい思いをするのは。今日聞いたことや、やったことも全部忘れちゃうから」と相変わらず、ズレた優しさを見せる。息子には「お前は覚えていてくれ。今夜の父さんのこと、忘れないでくれ」と懇願していたのに、妻には忘れる前提で話をしているのが興味深い。その押しの弱さが吉と出るか、凶と出るか。交際当時の回想シーンが流れたが、どうやら美代子は男の世話を焼くことでアイデンティティを保ちたいタイプらしい。ということはむしろ、一雄のグズさ加減ことが夫婦の危機を救うカギになるのかもしれない。

【見どころその3】忠さんはなぜ、43歳の姿で一雄の前に現れたのか
いよいよ死が目前に迫り、生き霊として存在できなくなってしまった忠さん。第9話で「わしもあいつと一緒にいると腹がたってしゃあない」と美代子に語ったように、一雄とはワゴンの旅が始まってからずっと親子喧嘩をしどおしだった。でも、それは“五分と五分との朋輩”としての本音のぶつかりあいでもあり、おかげで二人の関係は以前とは比べものにならないぐらい近づいている。でも、まだ一雄は知らなかった忠さんの顔がたくさんある。「頼みます、頼む、頼みます。どげなことでもしますけえ。カズを死なせんといてつかあさい」と、ワゴンの運転手・橋本(吉岡秀隆)に土下座し、困惑させたり、美代子に「今のあいつをできる限り覚えとってつかあさい」と頭を下げたり。その姿は一雄の言う、冷たく身勝手な父親像とはかけ離れている。最終話では、消えてしまった忠さんを追い、一雄は故郷に向かうという。予告動画では「ようやくわかったんじゃ。なぜ、43歳のワシがカズの前に現れたんか!」と忠さんが嬉しそうに叫んでいた。原作では、主人公は38歳。なぜ、5歳年上の設定になっているのか。まさか忠さんてば「黄泉の国から来たからじゃー!」とかいうオヤジギャグだったらどうしてくれよう……いやいや、そんな……! 答え合わせは今夜9時から!
(島影真奈美)