新たなロボットビジネスの幕開け「DMM.make ROBOTS」が本格始動
ロボット大国と言われる日本。ホンダのASIMOをはじめとする人型ロボットの研究開発で世界の先陣を切っていることは論を待たないが、では産業としてロボットが立ち上がっているかといえば、大いに疑問だ。
かつてソニーのペットロボットAIBOが発売された時、人と共にロボットが活躍する日本の未来を予想した人は少なくなかったと思う。だが、現実にはペットロボットや工学マニアの趣味からは脱していない。
そんな現状を打破するべく、デジタルコンテンツメーカーのDMM.comが新たな事業をスタートする。それが『DMM.make ROBOTS』だ。
2015年1月27日には同社の事業計画が大々的に発表された。
参画各社から自社ロボットのプレゼンテーションが行われた
パネルディスカッションでは、SNS株式会社ファウンダーの堀江貴文氏が登壇、ロボットの使用目的をはっきりさせることが肝心と指摘
富士ソフトの『Palmi』(パルミー)。販売価格298,000円(税別)。会話が可能なサービスロボット
ユカイ工学の『BOCCO』(ボッコ)。販売価格29,000円(税別)。小学校低学年向けの電話として開発されたロボット。スマートフォンとつながり、会話ができる
プレンプロジェクトの『PLEN.D』。販売価格168,000円(税別)。サッカーゲームやローラースケートができるエンターテイメントロボットだ
ディアゴスティーニ・ジャパンの『Robi 組み立て代行バージョン』。価格未定。通常は同社発行の雑誌の付録を組み立てる必要があるが、完成品を販売する生販一体、革新的なイノベーションを目指す
DMMロボットキャリア事業は2つの柱からなる。ロボットベンダーの製品を販売網に乗せるロボットキャリア事業とロボティックスクラウドだ。
生活用ロボット(サービスロボットと呼ばれている)の立ち上がりが遅いのは、ベンダーにビジネスマインドが不足しているためと各社が技術を囲い込むためと同社。技術者の自己満足に陥りやすく、製品にコンシューマーのニーズが反映されていない。さらに技術のガラパゴス化が進み、規格の標準化や新技術の共有も後手に回っていると分析する。
「ロボットキャリア事業は携帯電話のキャリアと同じ位置づけで、プロモーションやEコマース販売を行います。これにより生販一体となったビジネス戦略を打ち立てることが可能になります。また複数のロボットベンダーがDMM.make ROPBOTSの下に集まり、開発環境の共有化や情報交換を行います。埋もれがちだった各社の要素技術を浮かび上がらせ、革新的なイノベーションにつなげることができると期待しています」(同社ロボット事業部 岡本康広)
ロボティックスクラウドはIoT(Internet of Things)技術を用いて、ロボットが収集するデータをクラウド上に集約し、よりコンシューマーのニーズに合ったサービスを提供する。インターネット経由でソフトウェアのアップグレードやデータ更新を行うことはもとより、ビッグデータにより潜在的なニーズを汲み取り、ロボットに反映させる。
「またDMM.comの課金システムや会員、配送などDMMの資源を利用することで、ビジネス面からサポートします」(岡本)
同社はDMM.make ROPBOTSで扱うロボットを『スマートロボット』と呼び、スマートフォンのようにインターネットを利用して生活を快適にするデバイスとして位置付けている。事業に参加するのは、富士ソフト、ユカイ工学など5社。2015年度の売り上げ目標は30億円。2017年には100億円を達成するという。
自身がロボットエンジニアであり、ディアゴスティーニの組み立てロボット『ROBI』(雑誌はなんと10万部が売れたそうだ)の販売元である株式会社ロボ・ガレージ代表取締役社長・高橋智隆氏は、サービスロボットを音声認識のデバイスとして位置付けている。
「スマートフォンの次のデバイスは何か? スマートフォンがヒットしたのは、直感的に操作ができたからです。次はおそらく音声認識ですが、スマートフォンのように四角い箱に向かってしゃべるというのは、違和感が大きい。人の形をしたロボットは音声認識に向いています。小型のコミュニケーションロボットに話しかけたり、ロボットが話すことに違和感はないでしょう」
経済産業省の予想では、国内サービスロボット市場は右肩上がり。2012年現在、600億円市場のサービスロボットは2035年には5兆円規模になるという。DMM.make ROPBOTSは、その流れを後押しすることができるのか? サービスロボット市場は立ち上がるのか? 注目したい。
(取材・文/川口友万)